IT導入補助金とは、中小企業などのITツール導入を支援する補助金です。自社のIT化に向けて、課題やニーズにあったツールの導入をサポートします。
本記事では、IT導入補助金の制度内容や対象事業者、具体的な申請の流れについて紹介していきます。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者を対象に、業務のIT化を支援する制度です。経済産業省と独立行政法人中小企業基盤整備機構が監修しており、「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が事務局として実施しています。その概要を見ていきましょう。
中小企業の生産性向上を支援
IT導入補助金は、中小企業の生産性を向上させることを目的に創設された補助金です。日々のルーティン業務を効率化させるITツール、情報を一元管理するクラウドシステムなどの導入を支援するもの。対象となる業種や規模が決められ、30万円~450万円の範囲内で費用の2分の1が補助されます。
対象事業者は自社の課題に合ったソフトウェアや付帯サービスを選び、「ベンダー」と呼ばれる支援業者が申請手続きをサポートするという流れです。
IT導入補助金で解決できる課題として、次のようなものが挙げられます。
- 定期的な手作業のルーチンワークが負担になっている
- 社内の情報共有がうまくいかず、業務がスムーズに運ばない
- 経理関係が手作業のため、作業に時間と人件費がかかっている
- 顧客にうまくアプローチできていない
これらの課題を抱えている中小企業はIT導入補助金の支援機関に相談し、適切なツールを選びます。支援機関には、国が設置した経営相談所「よろず支援拠点」や商工会、商工会議所などがあり、何度でも無料で相談が可能です。
賃上げ目標の策定が必要
IT導入補助金の申請枠は、従来からある通常枠のA・B類型の他に「低感染リスク型ビジネス枠」と呼ばれるC・D類型の合計4つのパターンが設けられています。C・D類型は、コロナの影響が長引くなかでコロナの収束を待つのではなく、コロナ後の社会を見据えた対策に必要なITツールへの投資を支援することが目的です。
これら申請類型や補助額に応じ、「賃上げ目標の策定」が採否の加点事由もしくは必須項目になっています。「賃上げ目標の策定」とは、次の2つを内容に入れた計画を社員に表明することです。
- 事業計画期間である2025年3月までに給与支給総額を年率平均1.5%以上増加する
- 事業計画期間に、事業所の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
社員への表明を行って補助金が交付されても、水準を満たせなかった場合には補助金の一部返還が求められます。実現に向けて積極的に行動しなければなりません。
IT導入補助金の申請枠
IT導入補助金の申請枠は前述のように4パターンあり、要件に該当する枠で申請を行います。それぞれの内容を紹介しましょう。
通常枠(A・B類型)
通常枠のA・B枠は、補助が決定した以降に契約や支払いを行うITツールの費用が対象です。A類型とB類型は補助額が異なるほか、導入するソフトウェアに必要な業務プロセスに違いがあります。
ソフトウェアに必要な業務プロセスとは、ツールで解決できる業務の内容です。7つの項目が設けられており、改善できる業務プロセス数が多いツールほど補助金の額が大きくなる仕組みになっています。
(ソフトウェアに必要な業務プロセス)
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 会計・財務・資産・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練
- 業種固有
- 汎用・自動化・分析ツール
IT導入補助金の対象になるITツールは、少なくとも業務プロセスのどれか一つに該当しなければなりません。
特別枠(C・D類型)
C・D類型はコロナ禍の対応策として新たに設けられた特別枠です。ソフトウェアだけでなく、ハードウェアのレンタル費用も補助されます。
A・B類型に要求される条件に加え、次のア〜ウのいずれかの条件を満たすITツールでなければなりません。
ア. 会計や債権関連のソフトウェアで、インボイス制度に対応しているもの
イ. 国が推進するソフトウェアの「クラウド化」ができるもの
ウ. 対人接触の機会を減らし、業務の非対面化ができるもの
C・D類型はA・B類型と異なり、補助の決定が出る前に契約や支払いを行ったツールも、遡って適用が可能な場合もあります。
IT導入補助金の対象
IT導入補助金の申請ができる事業者や対象となるITツールは、複数の条件が設けられています。
対象事業者
IT導入補助金を申請できる事業者は、業種ごとに資本金や従業員の人数に上限が設けられています。例えば、「製造業、建設業、運輸業」であれば資本金が3億円以下もしくは常勤の従業員が300人以下であることが必要です。
対象ツール
IT導入補助金の対象となるのは、ソフトウェアに必要な7つの業務プロセスのいずれかを満たすソフトウェアです。また、ソフトウェアの導入に際して必要になる次の2点も補助が行われます。
- オプション:自動化・分析ツール、機能拡張、セキュリティなど
- 付帯サービス:導入コンサルティング、保守サポートなど
申請から補助事業開始までの流れ
ここでは、IT導入補助金の申請から補助決定までの流れを紹介しましょう。
1.ITツールを選定する
対象ツールの条件に適った、自社の課題を解決するITツールを選定します。IT導入補助金の支援機関と相談しながら適切なものを選びましょう。
2.アカウントを取得する
申請に必要なアカウントを取得します。経済産業省が提供するgBizIDプライムという名前で、社会保険手続きの電子申請など様々な行政サービスが利用できるアカウントです。
参考:経済産業省「gBizIDプライム」
3.必要書類を準備する
申請に必要な書類を準備します。下記の2点を用意しましょう。
- 履歴事項全部証明書
- 法人税の納税証明書
履歴事項全部証明書は、交付申請日から3ヶ月以内に発行されたものが必要です。納税証明書は、税務署の窓口で発行されたもので直近分に限ります。電子納税証明書は使用できません。
4.マイページに情報を入力する
gBizIDプライムのアカウントを取得すると、サイトに「申請マイページ」が開設されます。会社側は企業概要や財務状況などの企業情報を入力するとともに、ベンダー側(支援業者)も事業計画やツール情報・申請額を入力しなければなりません。両者が入力後、会社側でSMS認証を行えば申請が完了です。
5.交付が決定し補助事業が始まる
交付の採択決定は通知で行われます。申請の締め切りから約1ヶ月後が目安です。A・B類型は、交付決定通知を受けてから補助事業を開始するという点に注意しておきましょう。
最後に
IT導入補助金はIT化が進まない中小企業の課題を解決し、生産性向上をサポートする制度です。ソフトウェアの導入資金につき、2分の1の補助が受けられます。最大で450万円までの補助が可能。導入にあたっては、支援機関に相談ができます。業務の効率化を考えている経営者の方は、対象条件に合うかなど相談してみるとよいでしょう。