「ユニコーン企業」とは、創業してから年数が多く経っていないのに企業評価額が高い企業のことです。ユニコーン企業はアメリカや中国では多く見られていますが、日本では数えるほどしかありません。なぜ日本ではユニコーン企業が少ないのか、また、世界的にはどのような企業がユニコーン企業なのかについても解説します。
ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは、簡単に言えば「空想上の動物であるユニコーンのように希少価値のある企業」のことです。ユニコーン自体は神話などに登場する架空の動物ですが、そんな架空の存在を探すほどに見つけることが困難な企業とも言えます。
ユニコーン企業の定義
ユニコーン企業は、次の3つの条件を満たす企業のことです。特に企業の種類は決まってはいませんが、テクノロジー企業が多い傾向にあります。
創業10年以内
まず創業10年以内であることがユニコーン企業の条件です。なお、創業10年以内の企業はベンチャー企業ともいうため、ユニコーン企業はベンチャー企業のひとつといえるでしょう。
10億ドル以上の企業評価額
企業評価額が10億ドル以上であることも、ユニコーン企業である条件のひとつです。1米ドル=100円として、日本円に換算すると1,000億円以上の価値があるということになります。
未上場企業
ユニコーン企業はの最後の条件は、未上場企業ということ。上場すると神話の世界から現実世界に下りてくるため、ユニコーン企業ではなくなるのです。
世界では増えているが、日本には少ない
かつては上場して資金を集めるという手法が一般的でした。しかし、近年ではベンチャーキャピタルやクラウドファンディングなどの多彩な方法で資金調達が可能なため、創業してすぐの企業であっても将来性が評価されると資金が集まり、急激に成長することが可能になりました。
世界的には、アメリカと中国が特に経済力が強く注目も資金も集まりやすいため、ユニコーン企業が増えているのです。一方、日本ではアメリカや中国と比べるとベンチャー企業への投資は活発ではなく、ユニコーン企業が誕生しにくいという背景があります。
世界でユニコーン企業が増えている理由
資金調達の方法が多い以外にも、世界でユニコーン企業が増えている理由はいくつかあります。例えば、新たなビジネスモデルを掲げるスタートアップ企業に投資する企業が多いことや、ベンチャー企業に投資を行うベンチャーキャピタルが増えていることなども、ユニコーン企業増加の後押しになっているといえるでしょう。
これからの日本でユニコーン企業を育てるには
日本でユニコーン企業を誕生させるには、創業したばかりの実績が少ない企業でも、ビジネスモデルが優れていたり将来性が高かったりする場合には、資金調達ができる土壌を作る必要があります。そのためには起業する精神を評価する姿勢も大切といえるでしょう。
日本にユニコーン企業が少ない3つの理由
政府は「未来投資戦略2018」という名の、具体的な目標掲げました。2023年までに、企業価値が10億ドル以上のユニコーン企業や上場ベンチャー企業を20社以上生み出すというもの。また、ベンチャー企業を支援する「J-Startup」という施策もスタートさせ、世界で戦える企業作りにも注力し始めています。
しかし、依然として日本にユニコーン企業が少ないという状況は、なかなか改善されません。その理由として、次の3つを確認していきましょう。
1.ベンチャー企業への投資が活発でない
アメリカや中国と比較すると、日本ではベンチャー企業への投資が活発とは言えません。また、ベンチャー企業に投資をするベンチャーキャピタルも、アメリカや中国と比べると少ないため、ユニコーン企業が誕生しにくいのが現状です。
2.独立系企業が少ない
ユニコーン企業になるためには、そもそも企業として独立している必要があります。しかし、日本では大企業の社内事業の一端として、ベンチャー企業が誕生していることも多く、完全な意味での独立系企業が少ないのです。そのため、短期間で急成長を遂げたとしても、ユニコーン企業にはなり得ません。
3.そもそも起業家が少ない
ベネッセが実施した「2020年 小学生がなりたい職業」のランキング調査によれば、男子の1位はゲームクリエーター、プログラマーで、女子の1位は芸能人でした。男女ともに10位以内に社長や創業者がなかったことからも、大きくなって会社を作りたいと考えている小学生は少ないことがわかります。
もちろん大人になって「起業したい」と考える可能性はありますが、安定志向の国民性ということもあり、日本ではそもそも起業家が誕生しにくいというのが現状です。
世界のユニコーン企業事情について
次は世界に目を向けてみましょう。ユニコーン企業はアメリカと中国に多く、実際に約半分がアメリカの企業、約1/4が中国の企業と言われています。
アメリカ、中国に多い
アメリカではAIや医療などに特化したユニコーン企業が多数あります。例えばロケット開発のSpaceXや民泊ブームを巻き起こしたAirbnbなどは、アメリカを代表するユニコーン企業のひとつです。
中国では、サービス系や流通系のユニコーン企業が多い傾向にあります。例えばアリババ・グループの金融関連を受け持つアント・フィナンシャルは、モバイル決済事業を行うユニコーン企業です。なお、アント・フィナンシャルはユニコーン企業の中でも最大規模と言われています。
世界的に知名度が高いユニコーン企業10社
上場していなくても、ユニコーン企業はその名を世界にとどろかせている大企業です。とりわけ知名度の高いユニコーン企業10社を紹介します。
<アメリカ>
- instacart(インスタカート):宅配代行サービス
- Fanatics(ファナティクス):スポーツグッズ系ECサイト
- goPuff(ゴーパフ):日用品宅配サービス
<中国>
- SHEIN(シーイン):アパレル系ECサイト
- Guazi(グヮツィ):中古車販売サイト
- Xingsheng selected(シンシェン):生鮮食品ECサイト
<その他>
- AUTO1(オートアイン):ドイツの中古車取引サイト
- bukalapak(ブカラパク):インドネシアの総合ECサイト
- coupang(クーパン):韓国の総合ECサイト
- tokopedia(トコペディア):インドネシアの総合ECサイト
日本のユニコーン企業3社
日本でもいくつかユニコーン企業が誕生してきました。その中でも上場時の予想時価総額が大きな3社を紹介します。
- Preferred Networks(ディープラーニング等の実用化)
- クリーンプラネット(新水素エネルギーの実用化)
- TBM(新素材LIMEXの実用化)
ユニコーン企業のIPOは投資価値あり?
企業が飛躍するためには、さらなる資金調達が欠かせません。資金調達方法として株式市場への上場を行うことがありますが、この際に公開される株式を「新規公開株(IPO)」と呼びます。IPOは未上場で価格が確定していないため、市場価格よりもかなり低い価格に販売価格が設定されることが多く、購入すれば短期間で大きな値上がりを期待できるため、個人投資家からも人気です。
ユニコーン企業はすでに企業規模が大きく、他の新興企業よりも安心感が高いため、通常以上にIPOの人気が高まると予想されます。ぜひユニコーン企業に注目し、上場決定のニュースを見逃さないようにしましょう。
最後に
日本政府の後押しもあり、国内でもユニコーン企業が増えてきました。ユニコーン企業の傾向を見れば、世界経済がどのような流れになっているのか、どのような分野が成長しているのかも理解することができるでしょう。
また、国ごとの経済の動きを把握する際にも役立ちます。投資価値も高いので、ぜひ注目していきましょう。