子会社とは、親会社から財務的かつ実質的に支配されている会社のことです。本記事では、子会社の基本的な知識から、関係会社や関連会社との違い、また設立するメリットやデメリットまで解説します。子会社設立を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
子会社についてわかりやすく解説
子会社とは、簡単に言うと様々な決定権を親会社に握られている会社のことです。ほかにも混同しやすいものに関係会社や関連会社、連結子会社などがありますが、その違いをきちんと理解している人は少ないでしょう。ここでは、子会社の認定要件や関係会社などとの違いについて解説します。
子会社と認定される3つの要件とは
法令上では、子会社と認定するために3つの要件が定められています。ここでは、2つの会社をA社、B社として説明しましょう。次のいずれかの要件を満たすと、B社はA社の子会社として認定されます。
- A社がB社の議決権を50%超えて持っている
- A社がB社の議決権を40%以上持ち、特定の者の議決権とあわせて50%超であるか又は一定の要件に該当する
- A社がB社の議決権を40%未満しか持っていない場合、特定の者の議決権をあわせて50%超であり、かつ一定の要件に該当する
ここで言う特定の者とは、A社と同じ意思で議決権を行使する人のことを指し、また一定の要件とは次の通りです。
- B社の取締役会の構成員の50%超がA社の役員である
- B社の重要な決定について、A社が支配する旨の契約等がある
- B社の資金調達総額の半分以上をA社が出資している
関係会社と関連会社との違い
関連会社とは20%以上の議決権を持っているか、または経営に大きな影響を及ぼすことができる会社のことです。会計ルールにおいては、議決権が15%未満であっても実質的な影響があれば関連会社とみなされます。
また、子会社や関連会社、親会社をまとめて関係会社と呼びます。ほぼ同じ意味でグループ会社と呼ぶ場合もありますが、法的に正しい呼び方ではありません。ただし、世間的にはグループ会社と呼ぶことも多いため、あわせて覚えておきましょう。
連結子会社との違い
連結子会社とは、連結決算の対象となる会社のことです。連結決算とは、国内や海外の子会社および関連会社を含めた全体の決算のことを言います。親会社は、全体の決算をとりまとめて公表する義務があるのです。
子会社を設立するメリット・デメリット
子会社を設立すると、人材や情報の有効活用や節税対策、責任の所在が明確になるなど、様々なメリットが得られます。一方で、子会社の不祥事による信用低下や税制面でのデメリット、事務負担の増加などの弊害も生じるのです。ここでは、子会社を設立するメリットとデメリットを解説します。
3つのメリット
子会社を設立すると、次の3つのメリットが得られます。
- 人材や情報を有効活用できる
- 免税措置や節税対策ができる
- 利益責任が明確になる
子会社を設立すると、それぞれの子会社は自主的に事業展開を図ります。人材や情報を有効活用でき、関係会社全体としての競争力も高まるでしょう。
また売上が1,000万円以下の事業者は消費税が2年間免税されるため、子会社設立は免税対策にも有効です。ほかにも交際費の経費算入限度額が2倍になったり、法人事業税の軽減税率を利用できたりと様々な節税が可能となるでしょう。
子会社はあくまでも親会社とは異なる会社のため、子会社の社長の責任は大きくなりますが、責任の所在が明確になり経営スピードが上がります。
3つのデメリット
子会社を設立するデメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 不祥事による信用低下
- 税制面でのデメリット
- 事務負担が増える
子会社は親会社とは別会社とはいえ、子会社が不祥事を起こした場合、親会社はその責任を負います。築き上げたブランドイメージが失われたり、信用低下につながったりする恐れも。逆に、親会社の指示により、子会社が不祥事を起こすといったケースも珍しくありません。
先ほど、子会社設立のメリットとして免税措置や節税対策ができると述べましたが、同時に、税制上のデメリットが生じる可能性もあるのです。例えば、親会社と子会社同士では損益通算ができないことや、地方税の負担増などが挙げられます。
また、それまで集約して管理していた部分が別々の会社になることで、事務負担やコスト増は否めないでしょう。
子会社を管理する際に注意すべき3つのこと
親会社は子会社を設立すれば終わりではなく、きちんと管理する必要があります。管理する際に注意すべき点は、子会社から必要な報告を得て予算や実績を確認し、その情報を基に適正に評価することです。会社の規模が大きくなればなるほど、適正な評価は欠かせないでしょう。
1.子会社から必要な報告を受ける
まず、親会社は必要な報告を得るために、それぞれの会社が財務報告を適正に行えるような体制を整えなければなりません。具体的にどのような内容の報告が必要なのか、いつ誰が報告するのかといった基本的なことについて、マニュアルを作りましょう。複数ある会社を公平に評価するためには、同じマニュアルでの報告作成が必須です。
2.子会社の予算や実績を確認する
親会社は得た情報を基に、それぞれの子会社の予算や実績を確認します。報告内容としては、営業に関する売上高や原価、販売費、管理費などです。
また、キャッシュフローもきちんと押さえておくべきでしょう。設備投資における借入金や返済などについては、詳細なチェックが欠かせません。親会社は報告を基に、関係会社全体の実績や予算に対する進捗状況の集計を行い、今後の経営の指標とします。
3.子会社の実績を適正に評価する
親会社は、自社や関係会社全体の進捗状況のみならず、それぞれの子会社の実績を適正に評価することも必要です。子会社自体を評価すると同時に、管理者(子会社の社長)の人事上の評価も行います。ただし、会社自体の実績と管理者の評価は別に捉え、管理者は管理可能な利益を基に評価しましょう。
複数ある子会社は、それぞれがお互いに競争し合うことで、全体としてのパフォーマンスを上げることにつながります。
最後に
子会社とは、親会社から実質的に支配されている会社のことです。子会社と認定されるためには、決められた要件を満たす必要があります。また、関連会社や関係会社とは異なる概念ということも覚えておいてください。
子会社設立を検討する場合は、メリットやデメリットの両方を理解して、慎重に検討する必要があります。設立するとなれば、子会社のパフォーマンスを最大限に発揮できるように、適正に管理することが大切です。