最近、「人間力」というワードを耳にすることがあります。
なんとなく人間として優れているイメージを与える言葉ですが、「人間としての力が高い」とは具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか。
人間力が高いと評価される人にはどのような特徴があるのか、また、人間力を養い習得する方法について見ていきましょう。
人間力とは?内閣府による定義について
内閣府によれば、人間力とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」※のことであり、知的能力や社会・対人関係力、自己制御力などからなります。
知的能力とは、総合的あるいは本質的に物事を見る基礎学力や、情報を収集して論理的に分析する論理的思考力などのことです。
事実を単に情報として知るのではなく、得た情報から物事の本質を見抜くミクロ的な視点と、得た情報を応用して全体を類推するマクロ的な視点の両方を養うことも含まれます。
社会・対人関係力とは、人との関わり方や人として社会とどう向き合うかを広く網羅した能力です。
友人や家族とのコミュニケーションだけでなく、文化や世代、立場を超えた人々とのコミュニケーションを円滑に行う能力や、特定のチームのメンバーとしての立場・リーダーとしての立場を理解して行動すること、他者の意見に真摯に耳を傾けて尊重することなどが含まれます。
自己制御力とは、目標のために自分の気持ちや行動をコントロールすることです。
学習意欲を持ち続けることや実際に学ぶこと、社会に参加していきたいという思いを持つことや実際に参加すること、自分の可能性を探り理想とする自分になるために努力をし続けることなどが含まれます。
※出典:内閣府「人間力戦略研究会報告書」
人間力を構成する5つの要素
内閣府では人間力を幅広い能力の集合体として定義していますが、シンプルにまとめれば次の5つの要素に分類できます。
1.コミュニケーションスキル
人間は一人では生きられない生き物だからこそ、周囲の人々と意思を円滑に疎通するコミュニケーションスキルは不可欠な要素です。
会社で仕事をしているときは自分がしている業務内容や進度を同じ仕事をしているチームメンバーやリーダーに適時報告し、仕事が円滑に進むように連絡を取ります。
また、挨拶や雑談を通して楽しく働ける環境を作ることも、仕事、大きく言えば社会生活に欠かせない要素となるでしょう。
在宅勤務が増えていますが、人と直接会わないときでもコミュニケーションスキルは求められています。
同じ作業場にいないからこそ、より一層こまめに作業内容や進捗状況を共有し、チーム全体が気持ちよく働けるような声掛けが必要になるでしょう。
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2.セルフコントロールスキル
楽なほうに流れていては、人間は成長することが困難です。
より良い生き方やより良い社会を実現するためにも、目標を設定し、目標実現を目指して自分をコントロールしていかなくてはいけません。
もちろん限度はありますが、ある程度のセルフコントロールは必要になるでしょう。
「遊びたい」「だらだらと過ごしたい」という気持ちを抑えて、勉強や仕事、社会活動に励むこともでてくるかもしれません。
また、人との関係の中で強い怒りや自己嫌悪を感じた場合でも、ストレートに思いを表現するなら人間関係に亀裂が入ってしまうことがあります。
セルフコントロールスキルを発揮し、なぜトラブルが起こっているのか、あるいはおこてしまったのかを理性的に判断する必要があるでしょう。
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3.インテリジェンス
生きていくうえでインテリジェンス(知性)は不可欠です。
知性とは単に学力や知識の豊富さだけでなく、習得した知識を応用して活かす能力も含みます。
また、習得した知識から導き出したことだけでなく、想像力を働かせて新しい概念や行動を生むこともインテリジェンスのひとつです。
つまり、豊富な知識を持ちつつ、その知識にとらわれない状態が真のインテリジェンスある人間と言えるでしょう。
4.包容力
他人が自分とは異なる意見を述べたときには尊重して取り入れたり、自分の意見を見直したりする包容力も人間力のひとつです。
包容力を発揮するためには自分の意見をあくまでも「ひとつの考え方」として話す謙虚さも必要となるでしょう。
包容力があれば、多くの場面においてフラットな気持ちを保てるようになります。
「自分とは違う意見だから」という理由で相手に対して敵対心を持たないようになり、「相手が間違っていることを悟らせよう」として言い争いになることも減るでしょう。
5.耐える力
生きていくうえで、自分の思い通りにならないことは数えきれないほど起こります。
しかし、その一つひとつに「我慢ならない」と怒りを発揮しているならば、前に向かって進むことが難しくなるでしょう。
思い通りにならないときには耐える力を発揮し、自己鍛錬の機会だとポジティブに捉えることが必要です。
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人間力が高い人の特徴5つ
「人間力が高い人」とは、具体的にどのような特徴を持つ人のことなのでしょうか。人間力が高いと評価される人に共通してみられることがある特徴を5つ紹介します。
1.思いやりがある
人間力が高い人は包容力があり、相手の立場に立って考えることができる人です。
相手の変化に気付いて思いやりのある声掛けをし、相手が予想もしなかったような言葉や反応を見せるときでも、「何か事情があるに違いない」と考えます。
自分自身が困難な状況に置かれている場合でも、他人への思いやりを忘れることがありません。
いついかなるときも、自分だけでなく相手の気持ち、立場を想像することができるのが人間力の高さに結びつきます。
2.優しい
人間力がある人は、特定の相手だけでなく社会や世界に興味を持ち、どうしたらより良い状態になるか、自分には何ができるのかについて考えます。
そのため、人や動物、地球に対して優しい気持ちを自然に抱くようになり、言葉や行動の端々から優しさが溢れ出るでしょう。
反対に、人間力が高いとは言えない人は、自分にしか興味がなく、自分にとって利益となることに対しては全面的に努力をしますが、自分の利益につながらないことに関しては優しさどころか興味も示しません。
3.自己中心的な理由で怒らない
人間力が高い人は、自分とは異なる考え方や行動に対して理解を示し、良い部分に関しては積極的に取り入れようとするため、「自分とは意見が違うから」や「気に入らないから」といった理由で怒ることはありません。
どうしても相手の言動に納得ができないときでも、「何か事情があるのかもしれない」と相手の置かれた状況に思いを巡らします。
人間力が高い人はセルフコントロールスキルに長けている人ですから、基本的には怒りの感情もコントロールして、すぐに怒ることはありません。
しかし、人間力が高い人は絶対に怒らないということではなく、どんなに人間力が高い人でも特定の状況下では怒りを表出させることがあります。
例えば、ある人の独善的な行為が別の人に被害を与えている場合は、人間力が高い人でも怒りを表現するでしょう。
根拠のない悪口を言っている人がいれば、「いい加減な話を本人がいないときに言うのはいけない」と毅然とした態度で叱ります。
また、特定の行為がその人の不利益につながっているときも、怒りを表現することがあるでしょう。
「悪口を言うと、あなた自身の人間性が疑われますよ」と、怒ることで相手の将来を良い方向へ導こうと考えます。
4.教育・スポーツに対して向上心がある
人間力の高い人は、常に自己研鑽を怠りません。
教育やスポーツなどから能力を伸ばしたいと考える分野を選び、自分の定めた目標に到達するまで努力を続けていきます。
目標に到達したのかどうかは、あくまでも自分比で判断するのも人間力の高い人の特徴です。
人はそれぞれ能力やバックグラウンドが異なることを深く理解しているので、勝ち負けや順位に執着することはありません。
5.なりたい自分を明確に持っている
人間力の高い人は、今の自分が未完成であることを知っています。
なりたい自分の姿を明確に思い描き、具体的な目標を定めて、自己鍛錬を続けていることも人間力の高い人の特徴と言えるでしょう。
思うような行動を取れなかったときや人を傷つける発言をしたときは反省し、自分を成長させる糧とします。
人間力を養うために取り組みたい5つのこと
思いやりがあって優しく、自己中心的な理由で怒らない人間力の高い人。
現在の自分と比べて程遠いような印象を受けるかもしれませんが、実は誰でも人間力の高い人になることが可能です。
人間力を養うために今すぐ実践できることを5つ紹介します。
1.相手の立場を想像する
相手に思いやりと優しさを持つためにも、まずは相手の立場を想像してみてください。
相手があなたに辛辣な言葉を投げかけたとしても、もしかしたら悪気はなかったのかもしれません。
また、不運なことが続いたり体調が思わしくなかったりといった理由で、心にもない言葉が出てしまった可能性もあります。
相手の言葉や行動に納得できないときは、相手の立場を想像する習慣を身につけてみましょう。
想像することで「仕方ないな」と思えるケースが増え、相手に優しく接することができるようになるだけでなく、自分の心も平穏に保てるようになります。
2.感謝の気持ちを持つ
相手を思いやっているのは自分だけではないということに気付けば、自然と相手に対して感謝の気持ちを持てるようになります。
例えば、笑顔で挨拶してくれたことや体調を気遣ってくれたことなども、あなたの気持ちを良くする一因になっているのですから、感謝すべき十分な理由になるでしょう。
相手に対して感謝の気持ちを持つと、あなたの言葉や行動も今まで以上に優しさに満ちたものになります。
その優しさが相手にも伝わり、相手の優しさをさらに引き出すことにもなるでしょう。
3.自分に対して課題を出す
人間力の高い人は、自分をより良い状態に変えていくための努力を怠りません。
そのためにも自分に課題を出し、克服すべき問題を明らかにしておきます。
課題は「〇〇の資格を取得する」などの具体的なものだけでなく、「相手を傷つける発言をしない」「笑顔で挨拶する」などの結果が分かりにくいものなどさまざまに定めることができるでしょう。
4.自分を厳しく見つめ反省する
自分を高めていくためには、自己を厳しく見つめ、必要に応じて反省することも必要です。
今日一日、周囲の人を思いやる行動ができたでしょうか。
また、相手の気持ちや事情を察しないで独善的な言葉や態度を取らなかったのか考えてみてください。
反省して終わりではなく、より良い自分になるために次に活かしていきましょう。
5.公共心を持つ
人間力が高い人は、自分のためではなく、相手のためや社会のために考え、行動することができます。
常に相手や社会の利益を考えるので、身勝手なふるまいをすることがありません。
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人間力は就活・面接にも役立つ
人間力はより良い人間になるために必要なだけでなく、就活や面接の場面でも役立ちます。
どのような場面で人間力がプラスとなるのか見ていきましょう。
就職活動に必要な情報を入手できる
指導教官や学生たちとこまめにコミュニケーションを取っているならば、就職活動に必要な情報を入手しやすくなります。
また、先輩や別大学の友人ともコミュニケーションを取ることで、学内だけでは得られないような情報を入手できることもあるでしょう。
面接官を味方につけることができる
人間としての優しさや思いやりは、態度や言葉から容易に伺えます。
あなたの人間力の高さが面接官を引き付けるならば、あなたにとって答えやすい質問や有利な質問を出してくれるかもしれません。
また、集団面接においても、高い人間力を発揮して、他の学生をライバルとみなすのではなく愛すべき仲間としてみなすならば、就活生たちも引き付けることができるでしょう。
あなたを中心に暖かい雰囲気が生まれ、面接の進行にも影響を及ぼします。
最後に
人間力はすべての人間に元々備わっている力ではありません。
「より良い人間になろう」と決意をした人が、目標達成に向かって正しく努力しているときに生まれ、人間力という総合的な魅力となって表れるのです。
人間として生まれたのであれば、より良い存在になるために努力を続け、人間力を身につけることを目指してみてはいかがでしょうか。
あなた自身をより一層輝かせるだけでなく、周囲の人々を味方につけることにもつながるでしょう。