社外取締役とは?仕事内容と起用する上での3つの注意点を解説

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「社外取締役と社内取締役の違いとは?」「社外取締役の仕事や役割って何?」このような疑問をお持ちではありませんか?この記事では、社外取締役の導入をお考えの方に向け、下記について紹介・解説していきます。

  • 社外取締役と社内取締役の違い
  • 社外取締役の仕事内容と役割
  • 社外取締役を起用するうえでの注意点

社外取締役を起用することで、会社の経営基盤をより強固なものにすることが可能です。ただし、起用するうえで気を付けるべき注意点もありますから、この記事でしっかりと押さえておきましょう。

目次
目次

社外取締役とは?

社外取締役とは、社内から選出された役職者ではなく、資本や内部に全く関係のない社外から迎えられた取締役を指します。社外取締役は、良い意味で内部の事情に精通していません。そのため、利害関係に関係なく、客観的な視点で意見をできる立場にあります。

社外取締役と社内取締役の違いとは?

社外取締役と社内取締役の大きな違いは、意見やアドバイスをする際の視点です。社内取締役は、社内事情や運営している事業の運営状況などを加味し、統括をするかたちで意見をします。一方、社外取締役は、客観的な視点から会社経営に対して意見することが可能です。

兼務可!複数社を掛け持ちする場合も

社外取締役は、兼務することもできます。全く別の企業でサラリーマンをしていてもよいですし 、自分で会社を経営している方でも社外取締役に就くことが可能です。

ただし、勤務する会社が多すぎると、「業務に支障が出るのではないか」という懸念が出てくるため、会社によっては兼務者数を制限する企業もあります。

会社法第2条15号の定義

「社外取締役」という役職は、実は「会社法」にも定められています。
それが「会社法第2条15号」です。
これは、社外取締役に就任可能な要件を述べています。

要約すると、
・現在及び過去10年間において、当該会社及び関連会社等の取締役ではない
・当該会社取締役等の2親等内の親族ではない
というものです。

詳細については下記の通りです。

“社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。”


引用:会社法(社外取締役)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

社外取締役の仕事内容・役割とは?

社外取締役の役割は、大きく分けて下記の3点になります。

  • 取締役会への参加
  • 客観的な視点での意見・アドバイス
  • コーポレートガバナンスの強化

それぞれの仕事内容について詳しくみてみましょう。

取締役会への参加

社外取締役は、取締役会に参加します。取締役会とは、会社の経営方針が取締役たちによって決定される場です。上場企業の場合、3ヶ月に1回程度の頻度で取締役会を行っています。

会社との距離が離れている場合には、SkypeやZoomなどで、テレビ会議および電話会議を行うこともあります。

客観的な視点での意見・アドバイス

社外取締役の最も重要な役割になるのが、経営状況に対しての客観的な意見・アドバイスです。意見やアドバイスは、おもに取締役会ですることになります。

会議に参加する際は、事前に用意された資料をよく理解し、どのようにアドバイスするかを見ておくことが大切です。社外取締役が客観的な意見を述べることで、経営方針のブレを防ぐことができます。

コーポレートガバナンスの強化

社外取締役の仕事として、最も期待されるのは、コーポレートガバナンスの強化にあるといえるでしょう。「コーポレートガバナンス」とは、会社が法令を遵守し、不正行為を未然に防ぐことで企業統治を行うことです。

また、社外取締役は、意見やアドバイスをする立場にもありますが、社内を監視するという重要な役割もあります。昨今、社外取締役の受け入れが進んでいるのは、積極的にコーポレートガバナンスの強化を図る企業が多いからです。

さらに、社外取締役を迎えることで、「企業の透明性をアピールできる」というメリットもあります。

社外取締役の選び方、求められるスキル

経営陣が社外取締役に期待する役割は非常に大きいです。
では、上記で紹介した役割を担う社外取締役をどのように選べば良いのか。
また、具体的にどのようなスキルを持ち合わせた人材を選べば良いのか。
それらについて紹介します。

失敗しない選び方

一概にどのような人材を選べば失敗しないとは言い切れません。
しかし、2020年に経済産業省が発表した「社外取締役の現状について」というレポートは、社外取締役を選ぶ際に参考になるかと思います。

なぜなら、このレポートは「東証第一部及び第二部上場企業の全社外取締役」を対象にアンケート調査を実施したものだからです。
その中で、社外取締役のバックグラウンド(属性)についても紹介されています。
それがこちらです。

社外取締役のバックグラウンド(属性)
・経営経験者(46.0%)
・弁護士(11.8%)
・公認会計士/税理士(11.1%)
・金融機関(10.2%)
・学者(7.6%)
・官公庁(4.9%)
・コンサルティング(2.4%)
・その他(6.0%)


引用:社外取締役の現状について(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/pdf/2_017_04_00.pdf

上記のことから分かるとおり、「経営経験者」が群を抜いています。
当然のことと言えば当然のことかもしれませんが、経営状況について客観的な視点で意見やアドバイスができる「経営経験者」は社外取締役として重宝されているようです。

また、企業法務・反社会的勢力対策・内部統制対策など、それぞれの分野に特化した人材を登用しているケースもあります。

近年では、政府が主導となり女性の活躍推進を進めていることから、女性の社外取締役登用が増加傾向にあるようです。

スキル・マトリックスについて

スキル・マトリックスとは、取締役会に必要なスキルを分野ごとにまとめ、それぞれの取締役がどのような分野に精通しているかを示した表のことです。

どの取締役がどの分野において知見や専門性を持っているのか、そもそも取締役が何人いるのか、そして全体のバランスが一目で分かるものとなっています。

自社のスキル・マトリックスを公表することにより、取締役会のスキルバランスが可視化されます。
これにより、会社経営の透明性を対外にアピールできるのです。

社外取締役の人数や割合について

社外取締役の概要について説明してきましたが、企業には一体どの程度の社外取締役が選任されているのか。
皆さんはご存じでしょうか?
全く検討が付かない人もいるかもしれません。

当然のことながら、それぞれの企業において社外取締役の人数に差はあります。
大企業ほど、その人数も多いと言えるでしょう。
ここでは、社外取締役の人数を具体的な数字で示したいと思います。

会社法の改正(2021年3月1日)による義務化

2021年3月31日に施行された「改正会社法」により、社外取締役の選任が義務付けられています。
これにより、最低でも1名の社外取締役が必要となりました。

ただし、この法律が適用されるのは「上場企業」のみです。
中小企業にあっては対象外となっています。

詳細については下記の通りです。

(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一 公開会社
二 監査役会設置会社
三 監査等委員会設置会社
四 指名委員会等設置会社
2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
3 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
4 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
5 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
6 指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない。
(社外取締役の設置義務)
第三百二十七条の二 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない。


引用:会社法(取締役会等の設置義務等)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086


平均人数は6.5人

東京証券取引所が公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」というレポートがあります。
これによると、全上場会社における「独立社外取締役」と「社外取締役」を合わせた平均人数は「6.5人」となっています。

また、ほぼ全ての上場会社において「2名以上の独立社外取締役」を選任していることが分かります。
全取締役の3分の1以上を「独立社外取締役」が占めている比率にあっても「80%前後」となっています。


引用:東京証券取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000005poi8-att/nlsgeu000005polb.pdf


中小企業の場合は?

先ほど紹介した「取締役会等の設置義務等」にあっては、中小企業は対象外となっています。
そのため、中小企業に社外取締役を選任する義務はありません。

しかし、コーポレートガバナンスの観点からも、中小企業であっても社外取締役を選任するべきだという声が多いです。
なおかつ、それは1人よりも2人以上が好ましいとされています。

また、中小企業庁が作成した「中小企業の経営のあり方」についても同様のことが謳われています。


“中小企業においても、外部株主の 関与や社外からの役員登用といった外部の利害関 係者からの牽制機能が働く経営体制の整備を進め ていくことや、取締役会の開催といった組織的な 意思決定の仕組みを整えること、また、経営計画 の策定や管理会計の整備といった内部体制を意識 的に整えていくことにより、投資活動や人材育 成、業務効率化といった企業行動の活発化につな がると考えられる。”


引用:中小企業庁(中小企業の経営のあり方)https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap4_web.pdf


社外取締役を起用するうえでの注意点

社外取締役を起用するうえでの注意点は下記の通りです。

  • 必ず競業避止義務を守る
  • あくまで第三者であるということの弱みもある
  • リーダーシップを持った経営者を選ぶ

中には法に触れる注意点もありますので、社外取締役の受け入れをお考えの場合は、ぜひ参考にしてみてください。

必ず競業避止義務を守る

社外取締役は、競業避止義務を守る必要があります。競業避止義務とは、「取締役会などで得た情報を別の企業に流したり、得た情報をもとに自分で利益を得たりしてはいけませんよ」という業務上の決まり事です。

裏を返せば、「起用した社外取締役に会社の情報を流されるリスクがある」ということを表しています。したがって、社外取締役に起用する場合は、社会的な地位や経験値だけで起用するのではなく、「人として信頼できるかどうか」という視点を持つことも大切です。

あくまで第三者であるということの弱みもある

社外取締役は、あくまで第三者ですから、それに伴う弱みもあります。たとえば、「会社の内部的な事情についての問題を追求しづらい立場にある」という点。社外取締役として報酬を得ていることから、企業のよくない内部事情に対して、厳しく言及することが難しいという側面があるのです。

リーダーシップを持った経営者を選ぶ

社外取締役を選定する際は、リーダーシップを持った経営者を選ぶようにしましょう。なぜなら、社外取締役は、経営状況に対して意見やアドバイスをするだけでなく、良い方向性へ導くだけのリーダーシップが必要になるからです。

そのため、

  • これまでどの程度の規模で会社経営を行ってきたか
  • 手がけてきた事業の規模はどれくらいで、いくらほどの利益率だったのか

などの視点から、複合的に選出する必要があります。

社外取締役の報酬は?

社外取締役の報酬はどの程度なのか。
皆さんが興味を抱く部分だと思います。
海外や国内の大企業において、社外取締役に莫大な報酬額が支払われていると話題になることもあります。

では実際の具体的な金額はどの程度なのか。
ここでは、東証1部上場企業の平均額などについて紹介します。

平均は約660万円

2018年に朝日新聞と東京商工リサーチが共同で調査を行いました。
対象は、東証1部上場企業の約1,980社における社外取締役の平均報酬額です。
その結果は「663万円」ということでした。

当然この結果は平均報酬額であるため、下は「200万円未満」から上は「2000万円以上」まで振り幅は大きいです。
報酬額はあくまでピンキリと言えるでしょう。

報酬の決め方

日本における社外取締役への報酬は、基本的に「固定報酬」としていることがほとんどです。
では、その報酬額をどのように決めているのか。

1つの指針としては、知見や専門性、スキルに見合った金額が挙げられます。
しかし、経営状況へ的確な意見やアドバイスができる人材というものは、意外と少ないものです。
よって、優秀な人材を確保するためには報酬が高額になることもあります。

社外取締役の報酬は高すぎる?

社外取締役の活動時間は、30時間未満/月のことがほとんどです。
それにも関わらず、先ほど説明した平均報酬額は高すぎるのではないか、という意見もあります。

しかし、海外の先進国と比較すると必ずしもそうとは言い切れません。
例えば米国での相場は、約2,000万円から3,000万円とされています。

また、社外取締役の役割は、適切な経営が行われているかを監督し、助言することです。
この役割に満足に応えられる人材というものは限られています。
会社員の給料と比較すると確かに高額ですが、その立場や重責を考慮すると相応の報酬とも考えられます。
何より、社外取締役の報酬に関してはその会社の株主が判断することであり、それ以外の人間が口を挟めることではないのです。

社外取締役を無報酬で受けている方も

社外取締役を無報酬で受けている方もいます。無報酬で社外取締役を受けるのは、

  • 社外取締役という役職がほしい
  • 経験や自信をつけるため
  • 自社に箔をつけるため

など個人により様々な理由があります。このように、世の中には社外取締役を無報酬で受けたいという方もいるため、 試験的に導入をお考えの場合は、 無報酬で受けてくれる方を選出してみるという方法もあるでしょう。

社外取締役になるまでの流れ

社外取締役になるまでの流れは下記の通りです。

  1. 社外取締役の要件を満たしているかを確認
  2. 社外取締役の任期は平均で1~2年程度
  3. 内定後は株主総会決議と登記申請を行う

上記の流れに沿って、順番に解説していきます。

1.社外取締役の要件を満たしているかを確認

主な要件は下記の通りです。

  • 過去と現在を合わせ10年間、自社の業務に関わっていないこと
  • 自社のグループ会社の業務にも関わっていないこと
  • 自社及びグループ会社の支配人や取締役執行役などといった重要な役職者の親族(または配偶者)でないこと

上記の要件を満たしていれば、基本的にどのような方でも社外取締役として起用できます。とはいえ、要件を満たしているからといって、即時での起用は控えたほうがよいでしょう。なぜなら、企業によって迎え入るべき人物が異なるからです。

たとえば、会社の経営管理を刷新したいということであれば、「公認会計士」「税理士」など、専門性の高い知識を持った人物を起用するのがよいといえます。また、様々なことが多様化される昨今では、女性の有識者が非常に人気です。

女性を社外取締役に迎えることで、男性にはない女性独自の視点を持つことができ、女性ならではの発想を経営方針に活かすことができます。さらに、女性が役員にいるということで外部からの信頼度も上がるでしょう。

2.社外取締役の任期は平均で1~2年程度

社外取締役の任期は、平均で1~2年程度です。ちなみに、法律上では最長10年の任期を設けることが可能になっています。

ですが、長期間にわたって同じ社外取締役を起用すると、「馴れ合いが生まれることで、客観性のある意見が生まれにくくなる」といったデメリットが生じる場合も。したがって、社外取締役が最も高いパフォーマンスを発揮できる任期を考え、設定することをおすすめします。

3.内定後は株主総会決議と登記申請を行う

内定後は、株式総会決議と登記申請を行います。登記申請は、専門的な知識を要しますので、下記いずれかの方法を選ばなければいけません。

  • 司法書士に発注する
  • ネットで調べて自分で申請する
  • オンラインでの支援サービスを活用する

司法書士に発注すると費用が高くつきますので、できれば自分で申請するか、オンラインでの支援サービスを活用した方がよいでしょう。

最後に

社外取締役は、事業を拡大していくうえで非常に重要なポストです。とはいえ、会社の規模が小さいからといって不要であるとも限りません。

規模を大きくしていくうえで、力になってくれる社外取締役もたくさんいるからです。今の経営状況を棚卸し、自社に合った的確な人材を社外取締役として起用しましょう。

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