ビジネスなどでは「労使」という言葉をしばしば使います。労使とは、労働者と使用者のこと、つまり働く人と会社・事業主などのことです。
今回は、労使という言葉の意味や関連する労使関係や、労働組合と労働協約、労使協定と36協定について解説します。労使関係の現状やその問題点についても、あわせてチェックしていきましょう。
労使とは
まずは、労使の言葉の意味から解説します。
労働者と使用者のこと
労使とは労働者と使用者のことで、ここでいう使用者とは、労働者が働いている会社の事業主、事業経営の担当者などのことです。そして、その両者の関係を労使関係と呼びます。労使関係は労働者が1人であっても複数であっても人数を問わず、企業との関係を表す場合に使われる言葉です。
労使関係と似た言葉に「雇用関係」という言葉があり、雇用契約をしている労働者との関係のこと指します。労使関係は、業務委託契約であっても含まれるため、雇用関係よりも広い意味合いを持つのです。
また、雇用関係は1人の労働者と会社との関係を指すのに対して、労使関係は1人だけでなく労働組合などとの関係を指す場合もあるという違いがあります。
労使関係の現状とその問題点
終身雇用制や年功序列、企業別の労働組合などが日本における雇用の特徴です。その上で、もしも労使問題が起こった場合には、基本的に労働組合と会社とで対応する仕組みになっています。近年では、労使関係として指すことが多い労働組合との労使紛争は減少傾向に。
しかし、これらは正社員だけが当てはまる特徴です。パート雇用などで働く人々が増えた昨今では、労働者集団とではない個別のトラブルが増えています。
ただし非正規雇用の社員とのトラブルは、労働組合と会社との社内での紛争ではなく、非正規社員が相談できる外部組織である合同労組などとの紛争である場合が多いのです。結果として、非正規社員と会社との歩み寄りがしにくい状況を助長することに繋がります。
不景気による雇用調整や、労働者自身の働き方へのニーズの多様化により、今後も正社員以外の勤務体系をする人は増えるでしょう。労使関係を良好にするには、今までとは違ったアプローチ方法が必要になります。
労使関係の安定のためにできること
労使関係を安定のためには、労働法令に違反しないことが第一。それに加えて、使用者ができることは、労働者の声に耳を傾けることも重要になります。
セクシャルハラスメントなど企業側では気づけないこともあるでしょう。ハラスメント相談などがあった場合は、威圧的な態度を取るのではなく、労働者側の話をしっかりと確認することが大切です。
労使間の円滑なコミュニケーションが、労使関係の安定の秘訣といえるでしょう。
労働組合と労働協約について
労働組合や労働協約についても確認していきましょう。
労働組合の役割とは
労働組合の役割は労働者自身が労働条件の維持や向上を図れるようにすることです。また、労働組合には以下の4つの種類があります。
- 産業別組合
- 企業別組合
- 職種別組合
- 合同労組
「産業別組合」は産業ごとに組織された労働組合のことで企業別組合が集まったものですが、「企業別組合」は企業ごとの労働組合のことです。職種別組合は企業に関係なく同じ職種の人が集まったもの。合同労組はそれらの縛りがなくどんな職種・企業の人でも入れる組合のことで、合同労組は非正規雇用の社員が多く所属しています。
労働協約の締結とは
労働協約の締結も労働組合の役割のひとつ。労働協約とは、労使交渉をした際に合意した内容を書面にしたもののことです。この協約には、企業ごとの就業規則や個別に交わされる労働契約よりもさらに強い効力があります。
労使協定について
労使協定の目的や「36協定」についても確認していきましょう。
労使協定の目的と労働協約との違いとは
労使協定とは社員と企業の間で締結する協定のことです。労使協定の目的は、定めた内容を労働基準法の例外にすること。労使協定の締結により、労働基準法で認められない働き方でも、罰則を受けないようにできます。
一方労働協約とは、前述の通り労使交渉をした際に合意した内容を書面にしたもので、目的は定めた条件に従い労働を行えるようにするためです。
双方とも、労働者の中の代表者と会社とが合意をすると締結される点では同じです。ただし、労使協定は「労働者の過半数が加入する労働組合の代表者」もしくは「過半数以上から選ばれた代表者」と条件があり、労働協約は労働者の過半数以下の労働組合の代表でも締結できるという点が大きな違いといえるでしょう。
代表的な労使協定「36協定」とは
労使協定の中でも代表的なものが36協定です。これは、労働基準法で規定する「1日に8時間、週に40時間まで」という労働時間よりも、多くの時間を働かせたい場合に36協定を締結する必要があります。
ただし、締結した場合でも時間外労働には上限があり、月に45時間以内、年間で360時間以内が原則です。
特別条項付きにした場合には、1年間で6か月以内であれば上限を超えられます。この特別条項は、通常の業務では適用できません。納期が近いなど、急を要する場合やトラブルが起こった場合など、すぐに行わなければならない一時的な業務の際だけ使えます。
最後に
今回は、労使とは労働者と会社を表す言葉であること、労働組合、労働協約、労使協定、36協定についてを紹介しました。これらは似たような言葉でも、それぞれ異なる意味を持つため、注意しましょう。
労働者と使用者との関係である労使関係は、非正規雇用が増えるなどの社会の変化によって、以前とは変わりつつあります。労使紛争に発展することのないよう、労使間のコミュニケーションをしっかりと取り、良好な関係を保てるよう心がけてください。