テレワーク・リモートワークにおいては、通信環境の安定と同じくらい、機器の性能に気を配る必要があります。
1対1で話すだけや、友人同士のコミュニケーションであれば、それほど高性能な周辺機器をそろえる必要はないかもしれません。
ですが、重要な業務上の会議で使ったり、営業活動で契約をとったりするような場面では、備え付けの機器では不足を感じることもあるでしょう。
この記事では、リモート会議の質に大きな影響を与える機材のうち、もっとも必要不可欠な存在である「WEB会議用マイク」について取り上げています。
どのような基準で選ぶのが良いか、使い方に適したマイクのタイプは何かなどを、ご紹介していきます。それらに加え、最後に代表的な30種のマイクも特徴とともにご紹介します。
これから外付けの機器を増設するという方や、初めてWEB会議を行うという方は、ぜひ参考にしてみてください。
テレワーク・リモートワークへの備えは、今後も一定の有用性がある
感染症への対策として「出社しない働き方」が広がっています。全社の出社率を下げる方針を維持し続けている企業や、ほとんど完全にテレワーク・リモートワークを継続しているという企業も存在しています。
そして業務内容や部署によっては、効率アップを実感したり社屋の運営費を削減できるなどの効果があり、今後も遠隔作業の継続を表明している企業も出てきています。
特に、エンジニアやWEB制作といった業界や職種で顕著に見られています。
今後ウィルスの流行が完全に収まったとしても、以前の状態に戻ることはないだろうと予測されています。
テレワーク・リモートワーク以外で遠隔業務を行う可能性も
テレワーク・リモートワークは、社会情勢的にやむを得ず行われた施策でした。ですが遠隔業務ができるということが分かったことによって、社会では新たな反応が起こっています。
一つは、営業活動です。飛び込み営業を断るために「対面営業は受け付けない」という企業が出てきました。WEB等を利用したナーチャリングが済んで、いざ担当者をつけて営業……という場面になってから、「WEB会議で営業をしてほしい」と言われたとしたら。応じずに撤退することは難しいのではないでしょうか。
また、すでに関係値が構築できている企業に対しては、移動時間と移動コストを削減するために「遠隔で商談をする」という企業も増えています。
これまでは「移動費を節約したいので」と遠隔会議を持ちかけることは難しかったかもしれませんが、「御社の安全のためにも、ぜひ対面ではなく遠隔でやり取りをさせてください」という提案をしやすい状況になっている、という点が影響していると考えられます。
もう一つは、人材確保についてです。時短社員や育児を行っている社員にとって、フルタイムで働くのは難しかったかもしれません。ですが、就業時間と就業場所を管理することで、時短でも不可能だった人がテレワークで時短業務が可能になったり、時短にしなければならなかった人が、フルタイムで働けるようになったりもしています。「必要であるメンバーを選んで、特別に遠隔で仕事ができるようにする」という施策で、優秀な人材を確保している企業もあります。
または、家庭の事情などでUターンした優秀な社員を、そのまま遠隔業務によって地方人材として雇い続ける、ということもできるようになっています。政府も力を入れている地方創生についてですが、本社は大都市に置いたまま、地方拠点は設けずにテレワーク・リモートワークで地方人材を確保する、という手法が注目されているのです。
テレワーク・リモートワークを導入することは、営業機会を逃さず、かつ新しく生み出し、優秀な人材を確保するという意味でも重要なことになってきています。
遠隔業務を続けたことで、発覚してきた問題
テレワーク・リモートワークに切り替えられた当時は、SNSなどでも「遠隔業務には利点しかない」と言った書き込みが多くありました。ですが、実際に数か月の遠隔業務を行ってきた結果、現実的な問題が発覚し、悩みを吐露する方も生まれてきています。なかには、「早く前のように出社する形態に戻してほしい」という声が上がることもあるほどです。
どのような問題が生まれたのか、分類別に知っておきましょう。
自社内で発生する問題
- チームで仕事を行う場合、連携が取りにくい。
- 業務的な指導がしにくく、意図が伝わりにくい。
- 生産性が低下してしまう社員がいる。
- 部下やチームの生産性低下に上司が気づけない。
- 部下のミスに上司が気づけない。
- 社員のエンゲージメントが下がる恐れがある。
- 就業時間の管理ができず、過剰に残業してしまうメンバーがいる。
- やむを得ず出社するチームと在宅チームの間に軋轢が生まれる。
遠隔会議・営業で発生する問題
- 発言のニュアンスが伝わり切らない。
- 参加者が会議の雰囲気を感じ取れない。
- 一人が話し続ける形式となり、冷たい印象になる。
- 音声の問題で、会話形式でのディスカッションができない。
大きく分けて、問題の原因は二つ見えてきています。
一つが、環境要因によるもの。通信環境や機材の状況が悪く、音声が途切れてしまう、カメラの映像が届かない、といった原因に端を発するものです。これらは「そもそも、まともに会話ができない」という状況になってしまうため、“「遠隔で会議をすることによる問題」以前の問題”です。
もう一つが、言語外の情報が読み取れなくなってしまったこと。実は私たちは、対面して顔と顔を突き合わせ、声を聞き、しぐさを見ることによって、多くの問題を解決していたのです。
顔を合わせないことでこのような問題が起こってしまうことが、数か月のテレワーク・リモートワークの実践を経て分かってきたのです。
これらの問題の多くは、言語外コミュニケーションに起因しています。チャットや文字だけのコミュニケーションには言語外コミュニケーションが介在する余地がありません。そのため、これまでは言語外で(自分自身はそうとは知らず、あるいは意図しつつ)伝えていたことを伝えられず、言語外の情報から読み取っていたことが読み取れない状況になってしまいます。
知らず知らずのうちにコミュニケーションに詰め込まれる情報量が減ってしまったことで、多くの問題が発生しているのです。
専用のマイクにすることで解決できる問題もある
テレワーク・リモートワークで発覚してきた諸問題ですが、大きく分けて「会議環境の問題」と「言語外のコミュニケーションの問題」に分けられることが分かりました。
ノートPC備え付けのマイクで営業活動を行う場合、例えば今後の話を聞いてもらえるか否かが判断される最初の1分間で、先方が「音質が悪いな……」と感じてしまい、話が耳に入っていないとしたら、どう感じるでしょうか。
ギリギリで契約できるかもしれない最後の一押しの場面でノイズが入ってしまい、「決め」のトークスクリプトが不発に終わる可能性もあります。
そのほか、「そもそも、まともに会話ができない」という状況は、テレワーク・リモートワーク云々に関わらず、ビジネス環境として不適切です。
通信状態が悪い・機材の調子が悪いという状況は、まず真っ先に改善しましょう。通信環境に関しては個人の責任にするのではなく、会社から通信速度が速く接続状況が良いwi-fiを貸与する、といった方式で解決している企業もあります。
通信環境の問題が解決できたら、次は音声の問題に取り組みましょう。会議も「会話」である以上、最低限必要なのが「クリアに音声通信ができること」です。
最終的にはカメラ映像も込みでコミュニケーションができるようになるのが理想ですが、遠隔業務の状況によっては必要ないこともあり得ます。
ですが「音声が不要でも業務に支障はない」という状況はほとんど考えにくく、どのような業態であれ、音声環境だけは整えておいたほうが良いのではないでしょうか。
専用マイクを導入することで、最低限、機材の不備による音声関連の聞こえにくいといった問題は解決することが可能です。
それらに加えて、二つ目の課題であった「言語外のコミュニケーションができない」ことにより発生していた問題の大半も克服することができるのです。
- 声の高低や強弱・速さなどから、ニュアンスを伝えられる。
- 声の調子によって、メンバーの体調や精神状態に気づける可能性がある。
- 指示語を多用しても、ある程度はリカバリーしながら意思疎通ができる。
- 生身の音声に近いコミュニケーションができるため、冷たさを軽減できる。
- 「場の雰囲気」を共有できる。
対面コミュニケーションによって解決できていた諸問題は、対面と同じようなコミュニケーションに近づけることで解決できるものがあるのです。
会議用途に合ったマイクを採用して費用対効果を上げる
ノートパソコンに備え付けのマイクやイヤホン一体型の簡易的なマイクでも、用途によっては十分であることもあります。ですが、多数でのやり取りや、クリアな音声が求められる場面ではスペック不足である可能性が高いでしょう。
マイクにはそれぞれ性能や機能、どんな強みをもっているか、何が不得意なのかには差があり、それによって値段も変わってきます。
導入したマイクと自社での使い方が合っていないと、遠隔業務での問題を解決できないばかりか、余計に際立ってしまう可能性すらあるのです。
一方で、マイクの値段はピンキリです。マイク・スピーカーが両方ついて3,000円未満の機種もあれば、高性能である代わりにマイク機能しかなく、それでも何万円もする場合もあります。全社員や部署メンバー全員に貸与するのか、個人で用意するのかでも、使用できる予算感は異なってくるはずです。
高性能で全機能が優れたマイクを用意できれば良いのですが、そうすると予算感を大幅にオーバーしてしまいかねません。
重要なのは、自社での使い方とマッチしたマイクを選ぶということ。メンバーにヒアリングし、現状の課題を洗い出し、それを解決できるような機種を選ぶのが良いでしょう。
個人で用意してもらう場合には、あぶり出された問題を解決するにはどの程度のスペックが必要なのか、基準を設けて共有するのも良いでしょう。
また、あまりにも多面的な問題がある場合は、マイクだけですべてを解決しようとするのではなく、マイクで解決できる問題と会議の進め方や仕組みを改良することで改善できる問題とに分けて対処してみましょう。当初の見通しより値段が二回りも高額なマイクを導入しなければならないような問題があったとしても、仕組みを変えるだけで対処できるなら、検討の余地はあると思います。
さまざまな手法を組み合わせ、ある程度納得できる費用対効果が得られるマイクを探してみましょう。
WEB会議用マイクの特徴を知り、比較検討する
遠隔で行われる会議・ミーティングの内容は、以下のいずれかではないでしょうか。
・数百名~千名規模の全社員が参加する総会
・会議室などの拠点同士をつないだ、10名対10名規模の会議
・小規模の会議室をつないだ、1~5名対1~5名の小会議
・在宅ワークを行っている個人を数十名つないだ部門規模の会議
・在宅ワークを行っている個人を数名つないだ小規模な会議
・1対1で行う1on1
これらに加えて、会議には目的も存在しています。
・決定事項や業績、数値などを周知する
・議論して会議中に何かを決定する
・社員の様子を確認し、困っていることや相談事を聞き出す/解決する
・エンゲージメントを高めるための交流を行う
どのような種類の会議・ミーティングで、その目的は何であるかを想定しましょう。その想定ができたことで初めて、目的に合ったWEB会議用マイクの導入検討を始められます。
以下に、マイク導入にあたって比較検討のヒントになる項目を示しています。ぜひ参考にしてみてください。
・音質
マイクが拾うことができる周波数です。
人の可聴域は、20Hz~20,000Hzと言われています。一方で、人の発声では概ね100Hz~1,000Hzまでです。
人の声だけでやり取りをするなら、それほど周波数帯域は広くなくても大丈夫です。ですが細かい背景音や臨場感などを使える場合や、効果音などの声以外の音もマイク越しに伝えたい場合、周波数帯が広いほうが良い音を届けられるでしょう。
・収音指向、収音範囲
マイクに音を収める際、どの方向からの音を収められるかを収音指向と呼びます。大きく分けて、以下の2種でご紹介しています。
無指向性(全指向性)
どの方向からでも同じ感度で収音できます。そのため、全指向性と呼ばれることもあります。マイクの距離が近いか遠いかでしか感度は変わりません。ただし、ハウリングしやすいという特徴もあります。全指向性という呼び方からもわかるように、収音範囲は全面です。当記事では、無指向性マイクの収音範囲には「無指向性」として示しています。
単一指向性
マイクの、主に前面に収音感度が集中しているタイプです。収音範囲は角度であらわされます。収音範囲外に置いてしまうと、音を拾いにくいという特徴があります。当記事では角度を示しています。
・スピーカー有無・カメラ有無・形状
マイク単体の商品もあれば、マイク・スピーカー一体型の場合もあり、カメラもついているという商品すらも存在しています。
マイク単体は一人用に適しており、スピーカーつきの場合は少人数以上の会議で使うことも可能です。
ただし、付いているスピーカーがイヤホンタイプやヘッドセットタイプである場合は、個人で使用するのが良いでしょう。
これらのマイクの形を表すため、商品写真とあわせて「形状」の項目でも確認してみてください。
・音量調節
マイク本体に、音量調整機能やミュートボタンが付いている場合があります。
マイクを使って手元で簡単に音量調整できたほうが良いですが、「あるとうれしい」という程度の機能である場合、そのために予算をオーバーしてしまっては本末転倒です。一方で、会議での使用などで微妙な音量調整が求められる場合、音量調整機能は必須であることもあります。
また、ミュートボタンの有無ですが、会議に気づかずに後ろで話している機密を拾ってしまうようなセキュリティ事故や、入ってほしくない周囲の音を拾って気まずい雰囲気を作ってしまうことを防げるため、ある程度は求められている機能ではあります。
こちらも、会議などで大人数を相手にする場合は必須、と考える方もいるでしょう。
【2022年最新】WEB会議用マイクのおすすめ30選
ここからは、おすすめのWEB会議用マイクを代表的なものから30種ご紹介します。
各種の特徴も表で示したため、比較したうえで自社の業態や社風に適したシステムを探してみてください。
値段はメーカー希望小売価格があるものは示しているので、機能と値段感の比較もしてみてください。
なお製品の情報・価格は2020年12月20日時点を参考に記載しております。
最後に
テレワーク・リモートワークで成果を求めるとき、真っ先にやり玉にあがるのが音声ではないでしょうか。
遠隔業務で問題に直面した時、遠隔業務を続けるか、やめるかという二択を検討する前に、周辺機器の性能向上を視野に入れることは十分に取りえる選択肢でしょう。
会議の種別や目的を検討したうえで、現在の機器でも十分に対応できるような仕組みを見つけられれば、その場合は余計な費用の出費も抑えつつ業務効率アップを図れるかもしれません。
ですが、何らかのマイクを導入したほうが費用対効果が良い、という結論に至ったのであれば、ぜひ当記事を参考にしてみてください。