行動特性とは、一定の成果を安定して挙げ続けることができている人材に共通する行動パターンや思考法のことで、コンピテンシーとも呼ばれます。行動特性を把握し、他の社員にも展開することで業績アップを狙えるでしょう。
本記事では、コンピテンシーモデルを自社に導入する方法と活用する際の注意点とポイントなどを紹介するので参考にしてください。
行動特性(コンピテンシー)とは
一定の成果を挙げ続ける優秀な人材に共通する行動パターンや思考法を「行動特性」または「コンピテンシー」と呼びます。ここではそんな行動特性について理解を深めましょう。
行動特性が注目されるようになった背景
これまでは、個人の力を伸ばす能力の開発が業績向上の重要項目だとされていましたが、個人の力を伸ばすだけでは会社全体の業績は効率よく上がりません。行動特性が注目されるようになった背景には、個人の能力を伸ばすよりも、従業員全体の能力を伸ばした方が効率よく業績が伸びるという現実があります。
会社全体で成果を挙げていく組織づくりを行うには成果を挙げている人材に共通する、行動や思考方法を他の社員にも伝えることが必要です。
コンピテンシーが役立つ3つのこと
コンピテンシーが役立つ3つの場面は下記の通りです。
- 人事評価
- 人材育成
- 人材の採用
人事評価では、コンピテンシーにならった行動ができているかどうかの判断に役立ちます。たとえば、「会社の目標を実践できていたかどうか」を評価の基準にしても良いでしょう。また、持続的に成果を出している人材がいれば、新たなコンピテンシーの発見にもつながります。
人材育成では、コンピテンシーを基にした行動をとれるよう目標を設定しましょう。たとえば、「積極的(あるいは自発的)に仕事に取り組む」といった目標が考えられます。そして従業員が設定した目標を達成すれば、おのずと成果が出せる行動を身に付けることが可能です。
人材の採用(面接)では、応募者の経験を深掘りしていくことで、自で成果を上げるためのコンピテンシーとマッチしているかどうかを判断できます。たとえば、「積極的な姿勢で課題に取り組む」というコンピテンシーを自社で設定しているにも関わらず、応募者の過去からそのような傾向が見受けられないのであれば、自社とはマッチしていないということになるでしょう。
コンピテンシーモデルと導入方法
コンピテンシーモデルとは、会社で高い成果を出すために必要な行動モデルのことです。コンピテンシーモデルを設定することは、会社側にさまざまなメリットをもたらします。
以下では、
- コンピテンシーモデルを導入するメリット
- コンピテンシーモデルを作成する3ステップ
を紹介していきます。
コンピテンシーモデル導入のメリット
コンピテンシーモデルは、「高い成果を出すための行動モデル」であるため、導入することで会社の業績UPにつながりやすくなります。加えて、従業員側も「会社が求めている行動や姿勢」を理解しやすくなるでしょう。
また、従業員全体の行動や思考方法を把握することで、適格な人材活用ができるようになるという副次的な効果もあります。
コンピテンシーモデル作成の3ステップ
コンピテンシーモデル作成の3ステップは下記の通りです。
- 目標とする人物を設定する
- 設定した人物の行動特性を把握する
- 行動特性をもとに制度をスタート
以下にて詳しく解説していきます。
1.目標とする人物を設定する
ステップ1では、目標にする人物像を明確にします。企業によって「売上に最も貢献している人」「生産性が高い人」など、目標にするべき人物像が異なるでしょう。目標となる人物像が決まったら、どのようにしてコンピテンシーモデルを作成するか検討します。検討する際は、「実在型モデル」「理想形モデル」「ハイブリット型」の3つの思考ベースから構築しましょう。
「実在型モデル」とは、社内にいるハイパフォーマー(高い成果を出している従業員)の行動特性を分析し、項目を設定していくという考え方です。項目とは、分析の結果によって得られた行動の特徴を指します。たとえば、「営業前に必ずプレゼンを行う」「お礼メールを必ずしている」など、ハイパフォーマーが成果を出すためにやっていることが行動の特徴です。
「理想形モデル」とは、社内にハイパフォーマーがいない場合、理想とするモデルを設定し、そこから項目を設定する考え方のこと。そして「ハイブリッド型モデル」とは、「理想形モデル」「実在型モデル」両方の利点を合わせて作成していく考え方です。
2.設定した人物の行動特性を把握する
ステップ2では、ハイパフォーマーとされる人物に「どのような成果を挙げたのか」「成果を挙げるためにどのようなことをしたのか」といった聞き込みを行い、行動特性を把握していきます。ハイパフォーマーの行動特性をもとに項目を設定しましょう。
これにより、一般的な従業員とハイパフォーマーの違いを明確することが大切です。
3.実際にコンピテンシーモデルを導入する
作成したコンピテンシーモデルは、経営層から管理職に至るまで、目的や内容についてしっかりと理解を得ることが大切です。研修などを設け、十分な理解を得た後はコンピテンシーモデルを導入する目的や重要性を案内します。
行動特性の活用ポイントと注意点
次に、行動特性の活用ポイントと注意点について解説していきます。
活用するポイントは定期的に更新すること
会社で成果を挙げることにおいて、どのような行動が有効なのかは、外部(社会情勢やトレンドなど)からの影響によっても大きく変わります。たとえば、注力しようとしている領域のトレンドをつかみ損ねてしまうと、会社の業績も思うように伸びなくなってしまうでしょう。
そのためコンピテンシーモデルは、「商品・サービスを展開している領域」「自社のビジネスモデル」などの変化に応じて定期的に更新することが大切です。
行動特性の活用時の注意点は最終目的を見失わないこと
ハイパフォーマーの行動特性を他の社員に活用する最終目的は、会社としての業績を向上させることにあります。そのため、コンピテンシーモデル制度を導入したことに満足せず、自社にマッチしたコンピテンシーモデルの項目を追求し続けることが大切です。
ハイパフォーマーが成果を出すためにしている行動を常にチェックし、定期的にトレンドを踏まえた項目の見直しをするとよいでしょう。
最後に
行動特性は、企業の業績を効率的に向上させていく火付け役のような存在でもあります。企業にとって最も有用な形を見つけることができれば、大きな成長へとつながるでしょう。
まだ自社の行動特性を把握していないという場合は、ぜひ本記事で紹介した「導入方法」「活用のポイントと注意点」をご活用ください。