KJ法とは、アイデアをまとめて効率よく情報を整理する手法です。新しいアイデアを生み出し、課題の発見にもつながります。
本記事では、KJ法の内容について詳しく解説し、具体的なやり方やメリット、便利なアプリ・ツールについて紹介しましょう。
KJ法とは?
まずはKJ法がどのような手法なのか、詳しく見ていきましょう。
アイデアをまとめる手法
KJ法は、文化人類学者である川喜田二郎氏が考案した発想法です。KJ法の呼び名は氏名のアルファベット頭文字からつけられています。KJ法の手法は、さまざまな情報をカードに書いて1ヶ所に集め、カードをグルーピングして整理、分析するというものです。
さらに図解化をして文章にするという一連の作業で、アイデアをまとめます。ただ、アイデアをまとめるだけではありません。整理の過程で課題となる点を発見し、アイデア同士の関係が視覚化されることで新しいアイデアの創出も行われます。
KJ法とブレインストーミングの関係
KJ法でたくさんのアイデアを出したいとき、ブレインストーミングが役立ちます。ここでは、ブレインストーミングとはどのようなものか説明し、KJ法との関係について紹介します。
ブレインストーミングとは
ブレインストーミングは会議方式で行われ、参加者が課題について意見を出し合う手法です。出された意見の中から良いものを選び出し、質疑応答しながら問題を解決します。他の参加者の意見を聞くことで、新たな発想を思いつく場合もあるでしょう。
また、出されたアイデア同士を組み合わせることで、新しいアイデアとして採用されるかもしれません。予想していなかった組み合わせによって、斬新なプロジェクトが生まれる可能性もあります。
ブレインストーミングのやり方
ブレインストーミングを行うに際し、まずテーマを決めて参加者に伝えます。各自意見を出し合いますが、自由な発言を促してもなかなか意見が出ない場合があるでしょう。それを避けるため、順番に発言を行うようにします。
発言する意見はいくつあってもかまいませんが、ほかの参加者が出したアイデアや意見を繰り返すのはNGです。発言は3回以上巡回してたくさんのアイデア・意見を出し合い、カードに書き留めていきます。
発言が終わった後に行うのは、出てきたアイデア・意見に対する質疑応答です。質疑応答が進むなかで新しいアイデアが出た場合、反対意見が出た場合はそれらもアイデアとしてカードに残します。
アイデアをKJ法でまとめる
ブレインストーミングで出されたアイデアをまとめるのがKJ法です。カード化されたアイデアをまとめ、論理的に整理します。その作業の中で課題も発見され、ブレインストーミングの成果をより高めることができるでしょう。
KJ法のやり方は4ステップ
KJ法は、大きく4つのステップにわけて進めます。手順を詳しく紹介しましょう。
1.カードを作る
小さめのカードや付箋を用意します。見やすくするため、様々な色のカードを用意するとよいでしょう。カードがすべて同じ色の場合は、ペンの色を変えるのもおすすめです。
1枚のカードには1つのアイデアだけを書き出し、誰が見てもわかるように簡潔な表現で記入します。ブレインストーミングなどで第三者がカードに記録する場合は、発言者が使った言葉をそのまま書き込むことが大切です。
解釈で違う言葉にしたり単純化したりしすぎると、発言者の意図するアイデアと内容が違ってしまう場合もあるので注意しましょう。
2.カードをカテゴリごとに整理する
アイデアを記入したカードは、ホワイトボードや机の上など広いスペースに並べます。順番などは気にせず、ランダムに並べて構いません。カードに書かれたことにざっと目を通し、どのようなことが書かれているか把握しておくとよいでしょう。
次に、カードをカテゴリごとに整理します。似ているカードをグループ化し、タイトルをつけてください。タイトルはアイデアのカードとは別の色で作り、グループごとに貼り付けます。分類できないものは無理に分類せず、独自のアイデアとして残しましょう。
1つのカテゴリが10個以上になった場合はさらに関連性のあるものをまとめ、10個未満になるまでグルーピングを繰り返します。
3.関係性を図解にする
グルーピングが終わったら、カテゴリ同士で関連性のあるものを近づける配置に並べ替えます。次に、カテゴリのカードをすべて広げ、矢印や記号を使ってカテゴリ同士の相関性を図式化してください。因果関係や相互関係、対立関係、影響の強さなどの関係性を図解にしていきます。
4.図解を文章で言語化する
図式化が終わったら、図解を文章に書き起こします。グループのカードに書かれている言葉を可能な限り使い、カテゴリごとに1つの文章につなげましょう。文章化の過程で言葉を補足することがあるかもしれません。
それにより、新しい発見を得る場合もあります。そのため、同じカテゴリを違うチームに分けて文章化を行うのもよいでしょう。異なる視点からの発見が得られる可能性があります。
KJ法のメリットとデメリット
KJ法にはたくさんのメリットがありますが、デメリットもあります。始める前に、それぞれ確認しておきましょう。
3つのメリット
KJ法のメリットは、主に次の3つです。
1.ロジカルシンキングの実践ができる
KJ法により、ロジカルシンキングを実践できます。ロジカルシンキングとは複雑に絡み合った問題を分解して整理し、筋道を立てて結論を導き出す思考です。
ロジカルシンキングは実用性の高いビジネススキルで、問題の解決を容易にします。さらに、アイデアや意見を相手にわかりやすく説明でき、取引先との交渉やプレゼンテーションなど幅広い場面で役立つものです。
KJ法の手順は、このロジカルシンキングの思考方法とよく似ています。KJ法の手順とそれぞれの過程の重要性を理解することで、感覚的なロジカルシンキングの実践ができるでしょう。
2.新たなアイデアを作り出せる
KJ法の図式化や文章化は、新しいアイデアを生み出す可能性があります。図解化では様々な情報の関連性が把握でき、文章化によって問題解決の鍵となる核心部分を明らかになるでしょう。ただ話し合っただけでは得られない、踏み込んだ分析ができます。
3.情報の共有ができる
KJ法はアイデアを可視化して、情報の共有ができます。個々のメンバーが優れたアイデアや問題解決策を持っていても、他と共有できなければゴールにたどり着けません。KJ法を行うことでスムーズに情報が共有され、早い目標達成につながるのです。
また、KJ法では少数意見も多数意見と同じように扱われます。様々な視点から分析ができるため解決策を見つけやすく、速やかな問題解決が可能になるでしょう。
2つのデメリット
多くのメリットを持つKJ法ですが、次のようなデメリットもあります。
1.メンバーの特性に依存する
KJ法はアイデアを整理する手法として優れたものですが、得られる結果は参加するメンバーの特性に依存します。メンバーの考え方に偏りがある場合、集まるアイデアも偏りがちです。同じようなアイデアだけしか集まらなければ、思ったような成果は得られないでしょう。
メンバーに上下関係がある場合、遠慮して自由な意見を出しにくいという問題もあります。
2.参加者を集めるのに手間がかかる
KJ法は、多くの参加者のアイデアを集めてまとめる手法です。参加者が集まらなければ成り立ちません。参加者を集めて趣旨を理解してもらい、自由に意見やアイデアを出してもらうには手間がかかるというデメリットがあります。
KJ法の実践におすすめの無料アプリやツール
KJ法の手法が手軽に実践できるアプリやツールもあります。場所を選ばずKJ法の実践ができ、カードの分類など面倒な作業もありません。おすすめの無料アプリ・ツールを紹介しましょう。
Mindly
日々のメモ書きや、考えの整理に役立つアプリです。パソコン版はMacのみ対応可能。キーワードやイメージを放射状につなげながら描く「マインドマップ」が手軽に作れます。
テーマについて思い付いたことを書き込み、アイデアを広げて全体を把握するのに便利です。無料版と有料版があり、無料版では3つまでのキーワードやメモを表示します。まずは、無料版で試してみるとよいでしょう。
MindMeister
スマホだけでなく、タブレットやパソコンでも利用できるアプリです。思い付いたことをスマホに書き込み、パソコン上で編集することもできます。
チームでも利用でき、友人や同僚とリアルタイムにアイデアを共有しながら作業できるのが特徴です。離れた場所からでも、データに加えられた変更を確認でき、メンバーはチャット機能ですばやくコメントしたり、アイデアについて議論したりできます。
FreeMind
WindowsとMac OS X、Linuxに対応するツールです。グラフィカルなマインドマップが作成でき、PDFやPNG、HTMLなどの形式で保存できます。他の人とも共同編集が可能なWebベースのため、オンライン上でブレインストーミングやKJ法が実践できます。
IdeaFragment2
KJ法を利用できるWindows向けのツールです。思い付きや気になる言葉を画面に並べ、グループ化して関係線でつなぎアイデアをまとめます。
アイデアが思いついたらすぐにカードを追加でき、グループ化やタイトル作りも簡単。カードや付箋を用意する、アイデアを書くなど手間のかかる作業が省け、KJ法を自在に実践できるおすすめのツールです。
最後に
KJ法は、効率よくアイデアをまとめて問題点の発見もできる便利な手法です。会議でなかなかメンバーのアイデアがまとまらないときは、取り入れてみるとよいでしょう。
メンバーが多くカードの用意など作業が大変なときは、ツールの利用もおすすめです。記事も参考に、KJ法で業務の効率化を図りましょう。