マネジメントバイアウト(MBO)とは?目的や具体的事例を紹介

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マネジメントバイアウト(MBO)とは、自社の株式を取得するM&Aの方法です。大企業の上場廃止などで行われ、近年は増加傾向にあります。

今回は、マネジメントバイアウトが増えている理由や行う目的、実施する方法などについて紹介します。

マネジメントバイアウト(MBO)とは、自社株式を買い取り経営権を取得する方法のことで、近年では増加傾向にあります。具体的にどのようなものなのか、MBOが増えている理由について紹介しましょう。

M&Aの手法のひとつ!TOBとの違いとは

マネジメントバイアウト(Management BuyOut)はM&Aの手法のひとつです。同じM&Aの一種でマネジメントバイアウトと混同しやすいものに、株式公開買付のTOB(Take Over Bid)があります。株式を買い取って経営権を取得するという点で似ていますが、買収する主体が異なります。

マネジメントバイアウトは経営陣など内部の人間が自社の株式を買収するのに対し、TOBでは外部から対象企業の株式を買付けるものです。TOBは主に上場会社の買収や経営の実権を握るために行われますが、マネジメントバイアウトには基本的にそのような目的はありません。

また、TOBは敵対的買収の手段としても用いられますが、マネジメントバイアウトはそれに対抗する手段として行われることがあります。

マネジメントバイアウトが増えている理由

マネジメントバイアウトが実施される件数は年々増加傾向にありますが、行うのが大企業(上場企業)中小企業かによって、その理由は異なります。大企業がマネジメントバイアウトを行う目的は、主に次の2つです。

  • 経営を見直す
  • 上場廃止をする

経営の見直しでは、本業とは関連が薄い事業を独立させる目的でマネジメントバイアウトが利用されることがあります。マネジメントバイアウトによって得た資金を本業に投下し、資本の効率を高めて経営を強化するためです。

また、上場廃止を目的にマネジメントバイアウトが行われる場合もあります。上場は資金調達や企業の知名度アップという利点がありますが、最近では資金調達の手段も多様になり、上場によらなくてもマーケティングで知名度を上げることは可能です。

その一方で、上場にはコストがかかる、情報漏洩の危険があるなどの問題があります。デメリットの方が大きいと判断し、上場廃止を決める企業が増えているのが現状です。

これに対し、中小企業の場合、マネジメントバイアウトは事業承継を目的に行われます。近年、後継者の不在に悩む中小企業は多く、2020年の後継者不在率は65.1%という高い数字です。

後継者の不在で廃業になる会社も少なくありません。そのような背景もあり、第三者に事業を承継させるM&Aを選ぶ企業もあります。

しかし、第三者承継は経営理念の引き継ぎが難しいなどの問題をはらみます。そのため、事業に精通している役員に事業承継させるマネジメントバイアウトが利用されるようになってきたのです。

参考:帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査

UREBA
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マネジメントバイアウトを行う4つの目的

マネジメントバイアウトを行う目的は、主に次の4つです。

1.経営権を強化するため

マネジメントバイアウトの大きな目的の1つが、経営権の強化です。経営陣が自社株を取得することで、株式の保有率が上がります。株主の意思決定権が経営陣に集中するため、会社の意思決定がスムーズになるのです。

また、本業と関連性の少ない事業を買収することで本業に経営資源を集中できます。経営を効率化し、業績アップを図るのも目的のひとつです。

2.事業承継をするため

後継者のいない中小企業が、役員など第三者に事業を引き継がせるためにマネジメントバイアウトの手法が使われます。中小企業の場合は経営者がほとんどの株式を保有しているケースも多く、保有する自社株すべてを譲渡して事業承継を行うのです。

後継者問題を解決し、事業内容を熟知している役員に事業承継できる手法としてマネジメントバイアウトが注目されています。これまで経営者を支えてきた役員であれば経営方針への理解も深く、経営者の価値観がそのまま継承できるのがマネジメントバイアウトのメリットといえるでしょう。

3.上場廃止のため

マネジメントバイアウトは、上場廃止自体を目的として行われる場合もあります。上場会社の株式は誰でも買い集めることができるため、敵対的買収によって会社の経営権が奪われるリスクも。マネジメントバイアウトで市場に株式が出回らなくなれば、そのようなリスクを回避できます。

上場後は、年間上場料をはじめとする株式上場の維持費用を支払わなければなりません。マネジメントバイアウトは、そのコストを削減する目的でも行われます。

4.親会社から子会社が分離するため

子会社が親会社から独立する場合する場合にも、マネジメントバイアウトが行われます。親会社から独立して自由に経営を行いたい場合に、子会社の経営陣が子会社の株式を取得して独立するという方法です。

マネジメントバイアウトを行う3つの方法

マネジメントバイアウトを行う具体的な流れについて、一例を紹介しましょう。

1.企業価値を算定する

マネジメントバイアウトは株主から株を買い取ることで成立しますが、株式の価格は企業価値によって算定されます。そのため、企業価値を算定して価格を決めなければなりません。算定方法は、主に次のような3つの方法があります。

  • 純資産をもとに算出する
  • 市場で取引されている価格を参考にして算出する
  • 将来の収益を予測して算出する

どの方法によるかは、買収側と売却する株主との交渉のなかで決定されます。

2.会社を新しく設立する

マネジメントバイアウトでは、買い取る株式の受け皿となる新会社としてSPC(特別目的会社)を設立するのが一般的です。SPCは、経営陣の信用力だけでは必要な資金の調達が難しい場合に、資金調達を目的にして設立します。SPC自体には資金調達の信用力はありませんが、のちにマネジメントバイアウトの対象企業と合併することを前提に、対象企業の信用力をもとに借り入れができるのです。

そのため、経営陣が個人として資金調達できる場合は、特に会社設立の必要はありません。調達した資金で株式を買い取り、マネジメントバイアウトは完了します。

3.資金の調達をする

SPCの株主となった経営陣は、SPCとしてマネジメントバイアウトに必要な資金を調達します。その資金で既存株主から株式を買い取り、対象企業をSPCの子会社にするという流れです。その後、SPCと対象企業を合併し、マネジメントバイアウトが完了します。

マネジメントバイアウトの注意点は5つ

マネジメントバイアウトを行う際には、注意したいポイントが5つあります。

1.買収側にタイミングと価格決定権があること

マネジメントバイアウトのタイミングを決められるのは、買収側の経営陣です。株式の価格は、マネジメントバイアウトを実施する日の株価が基準になります。

そのため、会社の内情を知る経営陣は株価の動きを予測し、有利になる時期にマネジメントバイアウトを実施することもできるのです。株主にとっては不利な条件になる場合があり、問題となる可能性があります。

2.既存株主から反対される可能性があること

経営陣ができるだけ安値で株式を買い取ろうとすると、既存株主との利益が相反して売却に応じてもらえない可能性もあります。既存株主から少しでも反対されると、マネジメントバイアウトは実行できません。そのため、株式の100%取得を目指し、全部取得条項付種類株式や株式併合などの方法が取られることがあります。

3.経営の監視機能が弱まること

上場会社の場合、経営が株主の権利を害さないように行われているか、株主総会で監視する機能があります。マネジメントバイアウトによる上場廃止で株主総会がなくなれば、経営の監視機能が弱まることにもなるでしょう。監視機能が弱まると経営の変革が起こりにくく、環境の変化に対応できずに経営の悪化を招く恐れがあります。

4.利益相反防止対策が必要なこと

上場廃止を目的とするマネジメントバイアウトでは、会社の事情に精通する経営陣と少数株主との間に情報の不均衡が起こり、株主の利益を害さないよう利益相反防止対策が必要になります。第三者委員会や、買収側とは独立して株式価値を算定する機関の設置が求められることもあるでしょう。

5.様々な資金調達の問題があること

上場企業は株主の公開で市場から資金を調達できますが、上場廃止により株式による資金調達の選択肢がなくなります。そのため、資金繰りが難しくなる状況も見据えなければなりません。

中小企業の場合も資金調達の問題が生じます。後継者である役員が株式を取得することになりますが、会社の株式をすべて買い取るには十分な資金が必要です。SPCを立ち上げて資金調達を行うことはできても負債が残り、その後の返済も考えていかなければなりません。

マネジメントバイアウトの具体的事例

マネジメントバイアウトは様々な企業で行われています。その一例を紹介しましょう。

ホリプロ

大手芸能事務所のホリプロは2011年、マネジメントバイアウトにより上場を廃止しています。テレビ視聴率の低下などで企業の広告宣伝費が減少したことが主な要因です。新規事業の立ち上げが必要と判断し、上場維持のコスト削減のため上場廃止を決定しました。

アートコーポレーション

引越し業者のアートコーポレーションは2004年に上場しましたが、業績悪化を打開するためにマネジメントバイアウトを行なっています。2011年、自社株の公開買い付けにより上場を廃止しました。

幻冬舎

幻冬舎は文芸書の出版を事業内容とする会社です。ジャスダックに上場していましたが、投資ファンドからの敵対的買収に対抗するため、2011年にマネジメントバイアウトで上場廃止を行いました。当時、電子書籍の普及に伴う事業の開拓という背景もあり、上場にかかるコストを事業資金にするという目的も含まれています。

最後に

マネジメントバイアウトは、大企業の場合、主に経営の見直しや上場廃止を目的として行われます。中小企業では事業承継の手法として使われていますが、後継者不足が深刻な今日、マネジメントバイアウトを利用する企業は増えているのが実情です。

事業内容をよく知っている役員に事業を承継させることは、経営者の理想ともいえるでしょう。後継者問題に悩む経営者の方は、株式取得の資金調達という問題も見据えながらマネジメントバイアウトを検討してみてください。

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