節税対策をするとしないでは、残るお金に大きな差が生まれます。特に法人の場合は、行う節税対策によって大幅な違いが生まれることでしょう。しかし、間違った節税対策をしてしまうと脱税行為であるとみなされ、社会的ペナルティを受けることになります。
そこでこの記事では、法人が節税をする際に知っておくべきことに加え、おすすめの節税対策を9つ紹介しますので、効果的な節税対策を実施してできるだけ多くの資産を残しましょう。
節税をするべき理由と必要性
節税は、個人や法人が国の制度にのっとり、納める税を減らすノウハウのようなものです。ただ、国はあくまで制度を提供しているだけであって、納めるべき税金を減らすために、積極的に動いてくれるわけではありません。
つまり、自ら節税を行う意識がないと、手元に残る資金もその分だけ少なくなります。そのため、確定申告を行う法人は、能動的に制度を利用していく必要があるのです。
また、法人によって利用すべき制度や節税方法が異なる場合もありますので、節税対策については、網羅的に把握しておくようにしましょう。
法人の節税で知っておくべき3つのこと
法人が節税する際に知っておきたいことは下記の通りです。
- 利用できる節税控除の種類
- 投資的節税を意識する
- 社内環境改善のための節税を意識する
いずれも節税を行ううえでとても大切なことになりますので、これを機に押さえておきましょう。
利用できる節税控除の種類
まず、自社が利用可能な節税控除がいくつあるかをみてみましょう。前述したとおり、会社により利用できる制度が異なるためです。
自社にあった制度を利用することで、大幅な節税を行うことができます。また、社内で下記の対策を行っておけば、節税対策がよりスムーズに進むでしょう。
- 旅費規程を作成する
- 役員報酬を見直す
- 在庫確認をして無駄なものを処分する
これらを進めつつ、次章で紹介していく節税対策を行っていくことをおすすめします。
投資的節税を意識する
利益を会社に残すための節税対策も大切ですが、投資的節税を意識することも重要です。残すことだけを考えた節税対策を進めてしまうと、会社経営が後手に回ってしまう可能性があります。
投資的節税とは、やっておくことで将来の安定につながったり、将来的な会社の利益につながったりする節税対策です。
たとえば投資的節税には、
- 宣伝広告
- 将来運営したいと考えている事業に対する投資
などが該当するでしょう。これらの節税対策を「先行投資」ともいいます。先行投資については後ほど詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
社内環境改善のための節税を意識する
次に、社内環境改善のための節税を意識することも大切です。社内環境改善に力を入れることで、社員のモチベーションが上向きになるため、結果的に高いコストパフォーマンスを発揮できるでしょう。たとえば、社内環境改善のためには、下記の節税対策を行うとよいです。
- 消耗品の購入
- 福利厚生を増やす
- 社員旅行の実施
これらを行うことで、効果的な節税対策になるだけでなく、社員のモチベーション向上にもつながります。
やっておくべき法人税の節税方法
法人が支払うべき税金で、最も大きな金額になりやすいのが「法人税」です。法人税の節税を考える際は、必ず下記を押さえておきましょう。
- 益金(所得)を減らす
- 損金を増やして所得を減らす
- 国が実施する特別控除を利用する
それぞれの節税方法について詳しく解説していきます。
益金(所得)を減らす
まず、益金(所得)を減らすことを考えていきましょう。
益金とは、会社の利益として得た利益金を指し法人税法では「課税所得の基礎」という概念として紹介されています。そして、益金を減らすということは所得を減らすことを意味し、法人税の節税を行うことにつながるのです。
法人税の算定は下記の式から算出されます。
益金 – 損金=所得
※損金とは、 課税所得を算出するための基礎になる概念です。
したがって、益金を減らすことは所得の低下につながり、納めるべき税が減ることを意味します。
益金を減らすための具体的な方法は、たとえば「仕入れをした際に受けた割引を『棚卸資産』の減額として扱い、仕入割戻しを損金として計上する」などといった方法が一般的です。
損金を増やして所得を減らす
益金と同様の理屈で、損金を増やすことで所得を減らすこともできます。損金を増やす具体的な方法は下記の通りです。
- 固定資産を見直して損金を増やす
- 未払金(もしくは未払費用)の見直しを行う
なお「未払金未払費用の見直し」とは、社内で必要となる資料を購入したり、社員の慰労会を年末に実施するなどした際に発生した未払金を損金として扱うことです。「固定資産の見直し」では、 年間償却費を利用することで大幅な節税を行います。
たとえば、固定資産1,000万円を10年で償却すると節税対象となる年間償却費は100万円になりますが、これを5年で焼却する場合においては、約200万円となり、およそ100万円近くの損金を増やすことが可能です。
国が実施する特別控除を利用する
国が実施する特別控除を利用することで、法人税を減らすこともできます 。法人が利用できる特別控除を3つ見てみましょう。
【雇用促進税制】
雇用している社員の人数を全体の10%以上になるように増加させるなどした事業主が、一定の条件を満たすことで法人税の税額控除が受けられる制度。
【所得拡大促進税制】
雇用している人への給与を一定額増やしたとき、増加した支給額が10%法人税から控除できる制度。
【中小企業投資促進税制】
国が定めた対象となる設備を設置・制作した場合、取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除が受けられる制度。
該当する場合は、詳細を確認し、積極的に制度を利用するようにしてみてください。
法人におすすめの節税対策9選
以下にて、法人におすすめの節税対策を9つ紹介していきます。利用できそうな節税対策をチェックしておきましょう。
1.倒産防止共済の掛け金に投資
倒産防止共済の掛金に投資することで、掛け金分が必要経費となるため、節税対策につながります。倒産防止共済とは、中小機構が運営している制度で「取引先が倒産した際に資金を貸し付けてくれる」という制度です。
月5,000円から最高で月20万円までを掛け金として投資することができます。倒産防止共済には加入条件がありますので、まだ加入していない場合は詳細を確認しましょう。
2.法人保険に加入して無駄なく節税
法人保険に加入することで、無駄なく節税することができます。法人保険に加入するメリットは下記の通りです。
- 期末の直前で契約できる保険もある
- 解約をすることでお金が戻ってくる場合もあるため無駄がない
- 生命保険の中には半分以上を損金扱いできる節税効果の高いものがある
保険会社によっては節税することに特化したプランもあるため、気になる人はまず保険会社に相談してみましょう。
3.家賃を前払いする
法人の場合、家賃の前払いをして節税することも可能です。ただ、家賃の前払いによる節税は下記の条件を満たす必要があります。
- 1年以内の前払いであること
- 支払いを継続的に行っていること
- 継続を理由とした支出であること
上記の条件を満たしていれば「当期の損金」として、費用を計上することができます。ただし、家賃の前払いを損金として計上できるのは、最初の1年だけであることを留意しておいてください。
4.広告宣伝費に投資して大幅節税
広告宣伝費に投資することで、大幅な節税に期待ができます。たとえば、下記のような宣伝費を経費として計上することが可能です。
- 求人広告の作成費用
- ホームページの作成費用
- 社名が入ったボールペンや手帳などの作成費用
- バナー広告やリスティング広告に投資する広告費用
- チラシ、ポスター、ダイレクトメールなどの作成費用や発送費用
また、都内に法人を持つ場合であれば、山手線の中吊り広告を利用するという方法も可能です。その場合には片面で210万円、画面で表示されるワールド広告には420万円の費用がかかります。計上したい金額によって使い分けるとよいでしょう。
5.セミナー講師を呼んで社員で受講する
セミナー講師を呼んだ際の「受講費用」を経費として計上することもできます。ただし、運営している事業に役立つ、もしくは関係のあるセミナーのみ、経費として計上することが可能です。
また、現状の事業に関連していない場合でも、今後展開していきたい事業に関連性のあるセミナーであれば問題ありません。
6.有姿除却で損金を計上する
有姿除却で損金を計上するという方法もあります。有姿除却とは、法人が所有する減価償却資産において、滅失(または廃棄)があった場合に「償却損(回収できなくなった償却資産)の分を損金計上できる」といった制度です。
たとえば、今後の事業で使われることがないと思われる固定資産を有している場合「償却として損金計上をする」などといったことが考えられます。
7.社員旅行を計画する
社員旅行を実施し、福利厚生費として計上する方法もあります。ただし、福利厚生費として計上するためには、下記の条件を満たしておかなければいけません。
- 社員の半数以上が参加すること
- 実施する社員旅行が4泊5日までであること
- およそ1人10万円(あくまで目安)以内の旅費に収まっていること
上記の条件を満たすことで、社員旅行にかかった費用を福利厚生費として計上することができます。
8.福利厚生費を計上する
先ほど、社員旅行を福利厚生費として計上する方法を紹介しましたが、下記も福利厚生費に該当します。
- 社員旅行
- 出張手当
- 人間ドック
- 保養所・別荘
- 資格取得にかかる費用
- 社員が残業した際の食事代
- 交通費(公共交通機関の場合は10万円まで)
- 新宴会・忘年会・親睦会など
- 社員のクラブ・サークル活動
- 社宅(賃料の50〜80%を補助する名目で)
原則、上記は福利厚生費として計上することが可能です。ただし、福利厚生には平等性が求められることに留意しておいてください。
平等性とは、特定の社員だけが優遇されるのではなく、社員の一人ひとりが公平になるように考えられているということです。
限度額については、税法上特に定められていませんが、社会通念上において妥当であるとされる金額を設定するようにしましょう。なお、税法上10万円を超える福利厚生費は課税対象になる場合もあるので注意してください。
9.決算賞与で損金を計上する
決算賞与を損金として計上することもできます。決算賞与とは決算時、社員に対して賞与を支給することで、決算前・決算後どちらであっても損金として計上することが可能です。
一般的に決算賞与は、法人の利益の一定額を従業員に還元するという名目で支給されます。そのため、夏と冬に設けられる賞与とはまた別になると考えて大丈夫です。あくまで税のバランスを取るためだけに支給している企業もあります。
節税は地道に取り組み続けることが重要
節税は、地道に取り組み続けることが重要になります。なぜなら、節税対策は、地道に積み上げることではじめて大きな効果を発揮するからです。
たとえば、
- 役員報酬を適宜見直しする
- 不良在庫を適宜チェックする
- 経費計上できるものを隅々までチェックする
などといったことは、非常に手間のかかる作業です。しかし地道に続けることで大きな節税へとつながるのです。
架空計上したり、帳簿の書き換えをしたりしてしまうと当然ながら違法行為となり、税務署からキツイお叱りを受けることになってしまいます。そういった点からも、地道な節税対策を行うことが重要だといえるでしょう。
「塵も積もれば山となる」という言葉を念頭に置いておくと、法人の将来を見据えた良い節税対策ができます。
最後に
節税対策を行う上で大切になるのは、下記の2点です。
- 投資的節税を意識すること
- 社内環境改善のための節税を意識すること
会社に資産を残そうという名目で節税対策を行うことも大切ですが、上述した2つの意識を持っておくことで、意味のある節税対策ができます。
節税対策に意味を持たせることで、会社全体で節税意識が持てるようになってくるものです。そして、大きな節税効果を得るためにも、明日から地道な対策を行っていきましょう。