クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の人に仕事を依頼するWebサービスのことです。活用することで、必要とする業務を低コストかつスピーディに依頼できるというメリットがあります。
本記事では、クラウドソーシングの特徴やメリット、利用する際の注意点などについて紹介しましょう。
クラウドソーシングとは?
まずは、クラウドソーシングとはどのようなものか、具体的に確認しておきましょう。アウトソーシングとの違いについても紹介します。
不特定多数に業務を依頼できる仕組み
クラウドソーシングという言葉は、群衆という意味のクラウド(Crowd)と、業務委託という意味のソーシング(Sourcing)を組み合わせています。インターネットにあるクラウドソーシングサービスのサイトを通し、登録している不特定多数の人に業務を依頼するという仕組みです。
テレワークなど働き方の変化に伴い需要と供給が増え、クラウドソーシングの市場は急成長しています。企業に勤務をしながらスキルや技術を活かして副業を行う例も少なくありません。特にエンジニアやWebデザインなど、リモートワークと相性が良い業務は受注者が増えています。
近年は営業や経理、人事、コンサルティングなどオンラインで馴染みのない分野もクラウドソーシングで請け負う案件が多くなり、それぞれに特化したクラウドソーシングサービスも次々に開設されているのが現状です。
アウトソーシングとの違い
クラウドソーシングと似た言葉に、アウトソーシングがあります。アウトソーシングとは業務を外部の専門業者に委託することです。デザインや商品の発送業務など、クラウドソーシングよりも古くから一般的に利用されています。
業務を外部に依頼するという点では、クラウドソーシングもアウトソーシングと変わりはありません。しかし、クラウドソーシングは不特定多数が対象で相手の顔が見えないのに対し、アウトソーシングは専門業者やフリーランスのデザイナーなどに直接依頼する点で異なります。
また、従来から行われてきたアウトソーシングは特定の対象に業務を委託するという点で、「コストがかかる」「求めているスキルに合わない場合がある」といった課題がありました。これらの問題を解決する新しい仕組みとして、クラウドソーシングが広く普及したという経緯があります。
クラウドソーシングの特徴
手軽に業務を委託できるサービスとして注目されているクラウドソーシング。その主な特徴を紹介しましょう。
すべてウェブ上で完了する
クラウドソーシングは仕事の依頼から報酬の支払いまで、すべてネット上で完結するのが大きな特徴です。クラウドソーシングには一人と契約して案件を進めていくプロジェクト形式や、公募に対して集まった案件の中から採用するコンペ形式、サイト上で簡単な作業やアンケートといった単純作業を行うタスク形式などがあります。
ここでは、プロジェクト形式における一連の流れを見てみましょう。
- クラウドソーシングサイトに登録する
- サイト上に、依頼したい業務を掲載する
- 業務を依頼する人を選んで発注する
- 提出された業務をチェック・修正を行う
- 業務の代金をサイトに預託する
- 納品物を受領・検収する
- 検収完了後、サイトから受注者に支払い
- 受注者を評価する
業務進行中のやり取りはすべてサイト上で行えるため、効率的で迅速な進行が可能です。
幅広い層が登録している
クラウドソーシングへの登録は特別な資格を必要としないため、幅広い層が登録しています。場所や時間にとらわれない働き方への変化に伴い登録会員数は増えており、多種多様なスキルや技術を持つ人材が豊富。必要な業務に見合う知識やスキルの確保が可能です。
クラウドソーシングを利用するメリット2つ
クラウドソーシングには企業にとってメリットがあり、市場は急成長を遂げています。クラウドソーシングの利用は具体的にどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
1.コストを削減できる
人材を雇用する場合、毎月の給与をはじめ福利厚生など多くの費用がかかります。しかし、クラウドソーシングであれば必要なときに必要な業務だけを依頼でき、雇用に比べてコストがかかりません。
イレギュラーに発生する業務や、月末だけ必要になる業務がある場合に役立ちます。わざわざ人を雇うことなくピンポイントにクラウドソーシングを利用することで、コストの削減が可能です。
2.業務の効率がアップする
クラウドソーシングの利用は業務の効率化につながります。コアとなる業務は社員が行い、自社にない専門知識やスキルを活用することで業務がスムーズに進むことに。社員の負担が減り、モチベーションの向上にも繋がるでしょう。
また、人材を雇用する余裕がない設立間もない企業にとっても、クラウドソーシングが便利です。必要な業務だけ依頼することで、事業を円滑にスタートできます。
クラウドソーシングで依頼できる4つの仕事
クラウドソーシングで発注できる仕事は多岐に渡りますが、主流になっているのは次の4つです。
1.プログラミング
プログラミングを使ったシステム開発は、クラウドソーシングで多く活用されている業務のひとつです。今日、自社システムのデジタル化を進めている企業は少なくありません。しかし、自社の社員にスキルがない場合、開発ができるまでに育成するには時間がかかります。専門のスキルを持つ人材を雇用するにも、コスト面での制約があるでしょう。
そこで活躍するのがクラウドソーシングです。クラウドソーシングの活用は、雇用を増やすよりもはるかにコストを抑えることが可能です。クラウドソーシングサイトにはシステム開発の会社で豊富な経験を積んだスキルの高いプログラマーも多く、ツール開発といった小規模なものから予約システムなど大規模な開発まで、幅広い発注ができます。
2.Webデザイン
自社サイトやランディングページ、ロゴなどのWebデザインも、クラウドソーシングで依頼しやすい業務です。サイト制作であれば1ページ5万円からと、制作会社に注文するよりもコストがかからず、少ない予算で優れたWebサイトの制作も可能です。人によりクオリティに差があるという問題はありますが、過去の実績を見てイメージに合うデザインができるかを確認してから契約するとよいでしょう。
3.営業
自社だけでは営業に手が回らない場合にも、クラウドソーシングが便利です。テレアポや商談代行、営業メールの送信などの営業活動が依頼できます。営業に特化したクラウドソーシングサイトであれば、営業戦略策定や営業資料・顧客リスト作成といった企画に関わる業務や、営業研修・営業組織編成などマネジメントに関する業務の依頼が可能です。
営業に課題があり、自社の商品やサービスを思うようにアピールできていない会社や、設立したばかりでスムーズな営業活動ができないという会社に役立つでしょう。
4.ライティング
クラウドソーシングで多く活用されているのが、ライティングの業務です。自社サイトのSEO対策で記事を増やしたい場合や、アフィリエイトサイトの運営などに利用されています。
様々なジャンルの執筆経験があるライターが登録しており、日記のような誰でも書ける内容から専門性の高い記事まで、幅広い発注が可能です。仕事内容も、Web記事や商品紹介、DM、取材記事、リライトなど、多様な形式の依頼ができます。
代表的なクラウドソーシングサイト
クラウドソーシングの急成長に伴い、専門のサイトも増えています。そのなかでも代表的な3つのサイトを紹介しましょう。
Yahoo!クラウドソーシング
ヤフー株式会社が運営するクラウドソーシングサービスです。ユーザーリサーチやデータ整理など、特定の専門性や知識を必要としない簡単なタスクの発注に特化しています。商品データのグルーピングやビッグデータの整理、サイトのユーザビリティの向上など、様々なニーズに応えるサービスです。
数分〜1時間程度で完了するタスクを多くの会員に依頼することで、自社で行うよりも時間とコストの大幅な削減が可能。例えば、自社のECサイト運営では1ヶ月で250時間かかっていた商品カテゴリーのデータ整理が、約3日で完了したという実績があります。
タスクの品質をチェックする機能やブラックリスト機能が設けられ、成果物の精度が確保されているのが特徴。依頼者のチェック作業に要する負担を軽減しています。
クラウドワークス
2011年に設立された、日本最大級のクラウドソーシングサイトです。2014年には東証マザーズに上場を果たし、登録会員数は2020年時点で360万人を超えています。依頼できる仕事のカテゴリーは200種類以上で、Webデザインやライティングをはじめ、幅広い業務の依頼が可能です。
「プロクラウドワーカー」という、実績が豊富な受注者を認定する制度を設けており、よりクオリティの高い受注者を探すのに役立ちます。
依頼形式は「プロジェクト形式」「コンペ形式」「タスク形式」の3種類。プロジェクト形式ではプロジェクト単位で報酬を支払う方法のほか、実際に稼働した時間に応じて報酬が支払われる時間単価制もあります。
また、クラウドワークスでは発注者を支援するサービスを設けているのも他にはない特徴です。発注に関する悩みや質問に答える「発注コンシェルジュ」、クラウドワーカーのリソースを持つ企業へディレクションから発注できる「ディレクションパートナー」といったサービスを設け、クライアントの様々なニーズに応えています。
ランサーズ
2008年に開設された、日本初のクラウドソーシングサービスです。これまでに発注は35万社以上、登録会員数は110万人以上を誇ります。全277ジャンルという多彩な業務があり、システム開発から単純作業まで、様々な業務の依頼が可能です。
依頼内容を掲載すれば一括で多数の見積もりを集めることができ、初めての依頼でも相場を確認してから発注が可能です。
受注者のスキルやクオリティを重視する場合、ポートフォリオから依頼したい人材を選んで直接に依頼できます。より専門性を重視したい場合には、専任アドバイザーが厳選した人材を紹介する「Lancers Pro」というサービスも用意しており、最短即日のマッチングにも対応可能です。
クラウドソーシングを利用する際の注意点
メリットの多いクラウドソーシングですが、利用する際には注意したい点があります。
社員が成長する機会を奪う可能性も
クラウドソーシングでは手軽に外部からスキルや技術を調達できるため、自社の社員が成長する機会を奪ってしまう懸念があります。現在不足するスキルを補うことはできても、長期的に見ると社内にノウハウが蓄積できず、有能な人材が育たないという問題が起こりかねません。
急ぎの案件はクラウドソーシングを活用しながらも、同時並行で社員のスキルアップを図るなど、社内リソースの確保に努めるのがよいでしょう。
わかりやすい指示が必要
期待通りの成果を得るには、受注者のスキルだけでなくわかりやすい指示をしなければなりません。そのためには、発注する側でも依頼内容について十分な理解が必要です。
また、クラウドソーシングでの連絡手段はメールやチャットなど文字でのやり取りを基本とするため、仕事内容によっては伝わりにくい場合があります。ゴールとなるサンプルを提示するなど、認識の相違をなくす工夫が必要になるでしょう。
修正依頼の決め事を作る
受注者が仕事に入る前には、修正依頼の決め事を作ることも大切です。仕事内容の難易度によっては、提出された作品に修正を依頼する場合もあります。1〜2回の修正であれば想定の範囲内ですが、複数回の依頼は受注者に負担をかけ、トラブルの原因にもなりかねません。
このような事態を避けるには、あらかじめ作成のためのマニュアルを作って修正が必要になる状況を減らし、「修正する場合も〇回まで」と取り決めをするのがよいでしょう。
最後に
クラウドソーシングは、自社に不足するスキルや技術を手軽に調達できる方法です。コストを削減して業務を効率化できるなど、多くのメリットがあります。思うような営業活動ができていない場合でも、必要な業務を外注することでスムーズな事業の促進が可能です。ぜひ、自社に合うクラウドソーシングサービスを見つけ、業績アップに役立ててください。