シナジー効果とは?発揮する場面と効果を生み出す方法について解説

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シナジー効果とは、事業の統合により発揮される相乗効果のことです。コスト削減や市場の拡大などさまざまな効果を生み出し、会社の成長を促進します。

本記事では、シナジー効果が生まれる場面や作り出す方法、実際に成功した事例について紹介しましょう。

目次
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シナジー効果の意味とは?

シナジー効果はビジネス用語で、企業同士のM&Aや協業などで得られる相乗効果を示す言葉です。シナジー効果を得るために、さまざまな方法で協働が行われています。

シナジー効果が重要な理由

シナジー効果は、会社の成長のために重要な役割を担います。シナジー効果によりもたらされるものはたくさんありますが、まずあげられるのが組織力の強化です。事業の統合により重複する業務をまとめ、コストが削減できます

また、それぞれのノウハウを共有することで組織力や企業の競争力が向上し、企業価値を高めることもできるでしょう。それに比例し、信用力も高くなります。融資を受けやすくなり、財務基盤がより強くすることも可能です。

アナジー効果との関係

事業の結合が、必ずシナジー効果を生むわけではありません。アナジー効果が生まれる可能性もあります。アナジー効果とはシナジー効果の対義語で、マイナス効果という意味です。アナジー効果が発生してしまっては、事業統合の意味がありません。

アナジー効果が発生する原因は、「想定外のコストがかかった」「経営者同士の意見が対立した」「重要な顧客が離れた」など、さまざまです。このようなアナジー効果を避けるため、シナジー効果を狙った事業統合は十分な計画を立てて進めることが必要です。M&Aに強い公認会計士や税理士など、外部の専門家に相談するのもよいでしょう。

シナジー効果が生み出される4つの場面

シナジー効果は売上やコスト面など、さまざまな場面で生み出されます。それぞれの場面で、どのようなシナジー効果が得られるのか紹介しましょう。

1.売上や収益

事業統合によるシナジー効果を得やすいのが、売上や収益です。統合によって事業の売上が合計されるだけでなく、顧客や販路などを共有して売上の増加が期待できます。また、ブランドの活用でシナジー効果を狙うことも可能です。

例えば、楽天の場合、買収した子会社の多くに「楽天」の名称をつけて社名変更しています。これは、楽天のブランド力でシナジー効果を狙った事例といえるでしょう。

2.生産やコスト

コスト削減も、シナジー効果が発揮されやすい場面です。生産設備の共有や大量仕入れによりコストを削減し、倉庫や物流業務の共同で在庫管理にかかるコストも減らせます。

生産量を増やして、1単位当たりのコストを下げる「スケールメリット」も可能です。経営の効率化や、競合他社に対する優位性を確保できるでしょう。

3.研究開発

研究開発の場面でも、シナジー効果を生み出せます。統合する会社それぞれの得意な分野を融合させ、新たな研究開発を行う戦略です。自社製品の研究開発を行うには莫大な費用とノウハウが必要で、1つの会社だけで新商品を開発するには限界があります。

そこで、事業の統合でこれまでの研究で獲得してきた技術やノウハウを共有すれば、より優れた成果を生み出す可能性があるでしょう。

4.財務

財務のシナジー効果を目的に、統合する場合もあります。資金力はあるものの新規の投資先が見つからない事業が、資金はないが成長性のある事業と統合することで、余剰資金を活用した適切な投資をすることができます。将来有望なベンチャー企業に資本参加するといった方法です。投資した会社が成長することで、大きなシナジー効果が得られるでしょう。

財務の場面では、節税効果を狙うこともできます。買収先に繰越欠損金などの債務がある場合、欠損金を自社に計上すれば利益額を減らせます。課税の対象金額を下げ、節税効果が得られるでしょう。

同業種:異業種でシナジー効果は異なる

シナジー効果は統合する事業が同業種か異業種かで、生み出す効果が変わります。

同業種の場合

同業種の事業統合は、お互いの事業について理解があるため、統合に向けた交渉や作業がスムーズに進みます。統合後の引継ぎや事業計画も協力体制で臨めるでしょう。

同業種は部署や投資先なども重複しているため、整理してコスト削減も可能です。両社のノウハウ・技術を共有し、生産効率を高めるなどシナジー効果を作りやすいのが特徴といえます

また、ブランドを持つ企業同士の統合は話題性で世間の関心を呼び、高いブランディング効果も期待できるでしょう。

異業種の場合

異業種による事業統合は、同業種とは異なる部分でシナジー効果が期待できます。これまでとは異なる事業への参入になり、会社を成長させるチャンスを作り出すでしょう。効率的な経営の多角化戦略が可能で、双方に不足している事業を補完する効果もあります。

事業の変化に会社全体で取り組む姿勢になることも、シナジー効果を生み出す契機になるでしょう。

シナジー効果を生み出す4つの方法

シナジー効果を生み出す事業の統合には、主に4つの方法があります。

1.多角化戦略

多角化戦略とは、主力事業とは別の分野に進出して会社の成長を狙う戦略です。多様化する顧客のニーズに対応し、新たに収益の見込める事業を立ち上げていきます。多角化戦略で新たな事業を一から始めようとする場合、多くの時間とコストが必要です。

しかし、進出しようとする分野の事業と協働することで、高いシナジー効果が得られる場合があります。経営のノウハウを共有することで大幅な時間の短縮になり、コストを削減できるでしょう。新しい事業をゼロから始めるよりもコストがかからないだけでなく、スピーディーな事業展開が期待できます。

2.M&A

M&Aとは、会社の合併や買収の総称です。吸収合併や新設合併など会社同士の「合併」と、株式譲渡や新株引受などの手段を通した会社の「買収」を指します。M&Aは最もシナジー効果を得やすい方法で、市場での支配力向上やシェア拡大による価格交渉力の向上、仕入れのコスト削減などの効果が期待できるでしょう。

3.グループ一体経営

グループ経営では効率的でない事業を行なっている場合も多く、そのようなケースでは一体経営することでシナジー効果を生み出すことができます。グループ内で共通する事業や部門を統合してコストを大幅に削減でき、共通のニーズを持つ顧客へのアプローチを強めることも可能です。

事業や部門の統合で余剰人員が出た場合には他部署に配置するなど、リソースの有効活用もできます。経営の効率化を図れることが、グループ一体経営のメリットといえるでしょう。

4.事業提携

事業提携は、会社が特定の業務に限定して協力関係を結ぶことです。M&Aとは異なり資本の移動はなく、あくまで一時的な協力関係にすぎません。強い結びつきはなくても、シナジー効果は十分にあります。

双方の資金や技術、人材などの経営資源を提供し合うことで、それぞれの企業価値を高め、事業の競争力強化が図れるでしょう。双方の強みを共有・補完することにより、提携する業務の課題も解決しやすくなります。

シナジー効果を用いて成功した具体的な事例

シナジー効果により成功した事例は豊富です。成功例を通して、シナジー効果を得るための対策を考えてみましょう。

多角化戦略の事例:セブン&アイ

セブン&アイ・ホールディングスが展開しているセブン銀行は、多角化戦略の成功例です。セブンイレブンなどの店舗数、消費者数を活用し、銀行という異業種に進出してシナジー効果をあげています。

セブン銀行は、集客力の高い「セブンイレブン」や「イトーヨーカ堂」にATMを設置することで、顧客の利便性を高めました。その結果、集客数の向上や商品売上のアップ、銀行手数料の増加というシナジー効果を得ています。

顧客が求める金融サービスに着目し、幅広い顧客に来店してもらえるように考えられた戦略です。結果として、グループの収益力を向上させるというシナジー効果を獲得しています。

M&Aの事例:日本たばこ産業

日本たばこ産業はM&Aを積極的に行い、会社の規模を拡大して成長しました。同社は喫煙者の割合が低下の一途をたどる状況を打開するため、1999年、アメリカ企業からたばこ事業を買収しています。これにより、たばこの販売本数は約10倍になり、大きく売上が向上しました。

また、2007年にはイギリスのたばこ大手であるギャラハー社を買収し、自社のポジションをさらに強化してシェアの拡大に成功しました。ヨーロッパでの事業基盤も獲得するなど、グローバル企業としての基盤を強化しています。

同社はこれら海外事業の展開により、基盤の強化や事業の効率化など大きなシナジー効果を生み出していました。これにより、2020年現在、同社は世界第4位のシェアという地位に到達しています。

グループ一体経営の事例:LIXIL

住宅設備の製造販売を展開するLIXILは、グループ一体経営でシナジー効果を生み出しています。LIXILグループはトステムとINAXが合併し、その後M&Aを繰り返して5社が統合した巨大グループです。

各社が異なる会計システムを用いていたため、2012年に子会社105社の会計システムの統合を行いました。会計システム統合の狙いは、シナジー効果の最大化です。各社の歴史や文化、言葉、システムなどを1つに統合し、一体とすることでシナジー効果を求めたのです。

その結果、経理の業務プロセスが標準化され、業務を効率化するシェアードサービスが可能になりました。また、各社の業績をリアルタイムで把握できることで、迅速な経営判断が可能になったのです。

事業提携の事例:ビックカメラとユニクロ

事業提携でシナジー効果を生み出した成功例が、ビックカメラとユニクロです。家電業界とファッション業界という異業種同士で提携し、「ビックロ」という新しい名称で事業を展開しました。

同じ場所にテナントとして出店するだけでなく、互いに協業してシナジー効果を狙う試みです。家電とファッションは異なるアイテムながら、客層はほとんど重なります。お互いの店舗の買い物袋を持って来店する顧客が多いというデータから、事業提携が実現しました

ファッションと家電で培ったノウハウを統合した新しいタイプの店舗として、広く話題性を提供したのです。その結果、集客力や収益の向上といったシナジー効果を実現しています。

シナジー効果を生み出す際の注意点

シナジー効果を生み出す際には、あらかじめどのようなシナジー効果を狙うのか検討しなければなりません。マイナスのアナジー効果にならないよう、リスクの検証など注意したい点があります。

リスクを検証する

事業の統合に成功すれば大きなシナジー効果が発揮されますが、財務や法務の側面でリスクが潜んでいます。パートナーとなる企業について、債務や社風、人材などの情報を収集し、リスクがないか検証することが必要です。M&Aに強みを持つ専門家と相談しながら、事前の調査はしっかり行いましょう。

相性の良い企業を見つける

シナジー効果は必ず得られるものではなく、会社同士の相性によっても異なります。相性の良い会社であればシナジー効果も大きく発揮されるため、パートナー企業の選定は慎重に行いましょう。選定だけでなく、統合に向けた交渉も大切です。スムーズに話を進めるためには、仲介会社との連携も視野に入れておきましょう。

有能な人材の流出に注意する

事業統合のあとに、有能な人材が流出してしまう場合もあります。統合先の社風が合わない、統合後の配置転換に不満があるなどを理由に、大量の離職が発生する可能性もあるでしょう。

組織再編は経営危機などの憶測も呼びます。今後の事業運営の担い手である社員が離職することは、スムーズな事業展開の妨げになるでしょう。このような問題も念頭に入れて、慎重に進めていくことが大切です。

最後に

既存の企業との統合によるシナジー効果は、会社を飛躍的に成長させる可能性があります。シナジー効果の内容はさまざまで、どのような効果を得たいのかをしっかり考えなければなりません。パートナーとなる企業との相性も大切です。専門家とも相談しながら、シナジー効果を生み出せる事業統合を行いましょう。

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