ビジネスに使用できる思考法にはさまざまな種類がありますが、その中のひとつ「システム思考」とはどのような考え方なのでしょうか。システム思考を例を用いて紹介し、デザイン思考との違いやビジネスに活用する方法について解説します。
システム思考とは?わかりやすく解説
システム思考とは、物事を系統立てて理解する思考方法のことです。例えば、いつもはよく売れていた清涼飲料水が急に売れなくなったとしましょう。「売れない」という結果だけを見るのではなく、物事を系統立てて俯瞰的に見れば別の事実が見えてくるかもしれません。
気候が急に涼しくなったことや、近くに同じ清涼飲料水を扱う小売店がオープンしたこと、また、その清涼飲料水に異物が混入していたなどのニュースが流れたことなどが見えてくるでしょう。このように特定の事象だけに注目するのではなく、その前後にある理由にも注目して分析していくことがシステム思考なのです。
システム思考と氷山モデル
システム思考はしばしば氷山に例えられます。大きな氷山でも、海上から見ると一部分しか見えません。先程の例ならば「急に清涼飲料水が売れなくなった」という事象は海上に見えている氷山の一部です。
その下には、気候の変化やライバル店舗の開業、異物混入事件などのさまざまな事象が隠れているでしょう。
システム思考においては、海上の氷山には「出来事」、海中の氷山には「行動パターン」や「構造」、「意識している前提」、「無意識の前提」などがあると考えます。つまり、出来事だけを見て判断するのではなく、出来事の下にあるパターンや構造、前提などを探って本質を理解しようとする思考法がシステム思考です。
外部よりも内部の責任を見つめ直す考え方
見えている氷山は、本当の氷山のごく一部です。システム思考では見えている外部、つまり結果だけで判断するのではなく、内部に潜んでいる責任にも思いを巡らせます。
清涼飲料水が売れなくなったのは、小売店としての努力が足りなかった可能性もあるでしょう。店内が清潔でないことや店員の愛想が良くないことなどが原因となり、顧客が近隣店舗に移ってしまったのかもしれません。
デザイン思考との違い
デザイナーは「ユーザーのニーズに応えるものか」を考えてデザインを実施します。つまり、デザイナーのようにユーザー目線で物事を考え、試作と検証を繰り返して商品やサービスを完成させていく考え方が「デザイン思考」です。
システム思考は物事のバックフィールドを探りますが、デザイン思考ではユーザー起点で物事を探ることが異なります。
システム思考をビジネスに活用する手法例
システム思考はビジネスに活用できる思考法です。いくつかの例から、システム思考をビジネスに活かす手法を見ていきましょう。
結果におけるパターンを読み解く
特定の結果を観察することで、何らかのパターンが見えてくることがあります。
例えば、ある小売店が曜日ごとの売上を調べたところ、毎週火曜日は売上が高い傾向にあることが分かったとしましょう。「火曜日は売上が高い」というパターンを理解するならば、火曜日はいつもよりも多めに仕入れることで、品切れを回避できるかもしれません。
ユーザーの行動パターンを読み解く
ユーザーの行動にも何らかのパターンが見られるかもしれません。
例えばチョコレート菓子を買う顧客は、併せてペットボトルに入った大容量のブラックコーヒーを買っているということが分かったとします。チョコレート菓子の近くにペットボトルのブラックコーヒーを置くことで、ユーザーが買い物しやすくなるようにサポートできるかもしれません。
また、コーヒーを買うつもりでなかったチョコレート菓子を買ったユーザーも「コーヒーも買おう」と考えるようになり、コーヒーの売上が伸びる可能性もあるでしょう。
パターンを生み出す構造を調べる
結果や行動からパターンを読み解くだけでなく、パターンを生み出した構造を調べることで、他の事象にもパターンが活かせるようになることがあります。
例えば火曜日は売上が高くなる小売店なら、火曜日のアルバイトの愛想が良いことやテキパキと仕事が早いことなどを解明できるかもしれません。火曜日のアルバイトのシフトを増やし、他の曜日の売上も向上させることができるでしょう。
構造を生み出したメンタルを解き明かす
構造を解き明かすだけでなく、構造を生み出したメンタルも解明していきます。例えば、火曜日のアルバイトがユーザーに評価されているならば、ユーザーは「愛想が良いこと」と「仕事が早いこと」でお店を選ぶ傾向にあるという事実を解明できるかもしれません。
火曜日のアルバイトに講師を依頼し、笑顔の作り方や手際よく会計を済ませて商品を袋詰めするコツなどを他のアルバイトに指導してもらうのもひとつの方法です。これにより、他の曜日の売上を伸ばすことにつながるかもしれません。
最後に
システム思考は、物事をシステマティックに探っていく思考法です。事象には無意識的あるいは意識的な理由があり、それらが積み重なって事象となって表れます。ぜひシステム思考を習得し、ビジネスにも活かしていきましょう。