企業における人材育成の手法を紹介!成功させるためのポイントとは?

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企業が成長するうえで重要なのは人材育成です。新入社員から取締役に至るまで知識やスキルを絶えず磨き向上させることで、企業の成長を果たすことができます。しかし1990年代初めにバブルが崩壊し「就職氷河期」と呼ばれる時期に新卒学生の入社数を抑えたため、30~40代の主力世代は会社内で人数が少ない状況に陥りました。

2000年代前後には、正社員の代わりに外部から作業を行なう人やサービスを調達する「アウトソーシング」を取り入れたこともあり、技術の継承がなされなくなり、社内で人材を育成する流れも停滞したのです。

しかし、本来必要な人材が不足してしまい業務にも影響が出始め、近年は人材育成が見直されるようになりました。

そこで本コラムでは、企業における人材育成のために必要なことや手法について紹介していきます。

目次
目次

なぜ、いま企業に人材育成が必要か

企業が置かれている状況は、ここ20年の間に大きく変化しています。グローバル化が一層進み、海外の企業との競争に巻き込まれるだけでなく、海外から人材を登用する必要に迫られました。結果として、グローバルな基準に合った企業のあり方が求められるようになっています。

またチャットツールやSNSの登場など、情報通信技術(ICT)の発達はビジネスのあり方を大きく変えました。情報処理技術を活用することで情報の処理が速くなっただけでなく、処理される情報も莫大な量に増えています。

そのため、従来のアナログな方法ではスピード感のある現代のビジネスに追いつけず、情報通信技術に各業務を落とし込む必要があるでしょう。

国内事情も人材育成の必要性を後押ししています。

少子高齢化や先ほど述べた就職氷河期に行った採用抑制の影響から、主力となるべき人材の不足は企業が成長するうえで足かせになりました。また日本の労働生産性は海外と比較して停滞したままで、賃金の上昇にも反映されていません。

結果として、かつてのように定年退職するまで企業に骨をうずめるような働き方ではなく、仕事と生活の両立を図る「ワークライフバランス」を重視したい、あるいは終身雇用にとらわれない働き方をしたいという考えを現代の社会人が強く抱くこととなりました。

こうした企業の置かれている複雑な状況のもとで、人材育成も従来の方法では通用しにくくなっています。

厳しい状況下でも企業や社員が成長できるような新しい人材育成の手法が必要とされているのです。

外注で疎かになった人材育成

企業が人材育成に力を入れるように意識が向き始めた理由のひとつが、外注に力を入れすぎたことへの反省です。先にも述べたように情報通信技術が急速に発達し、ビジネスをするうえで不可欠な存在になりつつあります。

その一方で需要の高い情報通信技術に対応できる人材は不足している状況です。

就職氷河期と時代が重なったこともあり、情報通信技術に対応できる若い世代が不足し、結果として企業はアウトソーシングなど外注によって人材を埋め合わせました。企業が自前で人材を育てるよりも経費がかからないことも、外注で人材を登用する要因のひとつです。

こうした外注による人材の登用に傾倒しすぎたことが、企業に悪循環をもたらしました。就職氷河期による若い世代の不足に加えて人材育成を行なう場が失われてしまったために、上の世代から若い世代へと知識やスキル、ノウハウの引き継ぎがストップしたのです。

また人材を育てる場を企業がもたなくなったために、企業は人材育成のノウハウも失いました。このような外注に傾倒しすぎたことへの反省から、企業は人材育成の必要性を見直すようになったのです。

アンケートで判明した不満

厚生労働省が発表した平成26年度版厚生労働白書によると、企業が競争力を高めるために必要な要件として人材育成をトップに挙げています。こうした人材育成の必要性を企業が強く感じているにも関わらず、新入社員や中堅社員を育てる管理職の人材育成能力が不足していると回答する企業が多いこともアンケートで明らかになりました。


日本経済団体連合会(経団連)の調査によると、企業は人材育成に対して何らかの不満を持っています。先に述べたような企業が置かれている厳しい環境の変化に対して、企業が取り組む人材育成が追いついているのかという質問に対し、「対応できていない部分があり対策に取り組んでいる」と答えたのが全体の52.3%、「対応できていない部分があり見直しが必要」と回答したのが全体の36.5%でした。

つまり、88.8%の企業が現状の人材育成に満足していないのです。

人材育成で解決すべき課題とは

こうした企業が抱える不満を解消するために必要なのが人材育成だといえるでしょう。

グローバル化や社員の就労意識の変化、情報通信技術の進展など企業を取り巻く厳しい環境に対応するためには、人材育成が難しい外部の人材を登用することよりも、企業が自前で人材を育成し企業の競争力を高める必要があります。

新入社員から管理職、取締役に至るまで全社員に対し人材育成が行われなければ、企業が抱える知識やスキル、ノウハウなど技術が次の世代に引き継がれず、結果として企業は先細りするでしょう。このように、人材育成やそれへの投資が企業にますます求められています。

目指すべき人材育成体系の設計について

企業や社員が成長できるような人材育成を行うためには、人材を育成する仕組みを設計することが重要です。人材育成によって社員がどのように成長するのかをイメージし、そのために必要な人材育成の方法を決定します。

例えば、研修によって人材育成することが決定されれば、研修の時間や形態などを設計しましょう。設計にもとづき、人材育成を実際に行う上司や外部からの講師が研修用の教材を開発し、社員の研修を実践します。研修が終われば、実際に人材育成した社員に成果が現れたかなど評価を行うようにしましょう。


つまり「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」というサイクルを繰り返す「PDCAサイクル」のように、フィードバックで人材育成の方法を改善していくということです。

人材育成を始める前準備

人材育成の開始前に重要なのが、先にも述べた企業が置かれている現状を把握することです。

現状を把握する

業務を行なっている現場では、人材育成担当者は「社員が担当する仕事」を把握する必要があるでしょう。この際、労働生産性の低くなっている要因がないかなどを確認します。

また現場を仕切る管理職やリーダー、若手社員からヒアリングし、どんな課題があるのか、人材育成で課題を解決できるかなども検討しましょう。

現在の人員構成をスキルや役職などとともに把握し、将来どんな構成に変化するのかをイメージし、人材育成の方針を立てます。また企業がどんな人材を求めているのかという経営方針と人材育成担当者が思い描いた人材育成の方針との間にズレがないかを確認するために、経営者にヒアリングする必要もあるでしょう。

現状把握に不可欠なスキルマップとは

スキルマップとは社員のスキルを管理するために必要なもので、業務で必要な知識やスキルをすべてあぶり出し、各社員の知識やスキルなど能力を一覧にして表します。例えば、「お客様への接客」というスキル項目があれば、社員ごとに1~5段階で表すのです。

あぶり出した項目すべてに対しスキルレベルを書き記してスキルマップを作成することで、各社員がどの部署で働けば能力を発揮できるか、どの能力が不足しているか、社員が成長するために必要な目標の設定などが明らかにされるでしょう。

スキルマップを作成するメリットとして、企業がもつスキルを見える化できることが挙げられます。

社員のもつ個々の能力が確認できることで、社員ごとのきめ細かな人材育成が可能になるのです。また、どの能力が不足しているかなど社員が自身の能力の現状を把握し、能力を向上させようというモチベーションにも繋がるでしょう。

このようにスキルマップの作成は、社員を成長へと導く人材育成の方針作りに役立ちます。

企業の将来像を描く

人材育成の仕組みを設計するために必要なのは、現状の把握だけではありません。それは企業や社員の将来像を描くことです。人材育成を受ける社員を将来どのような状態に成長させたいのかをはっきり描くことで、そこにたどり着くまでに不足しているスキルが明らかになります。

仮に企業や社員の将来像と現状とがかけ離れすぎているならば、人材育成を受ける社員自身も成長するモチベーションが湧きません。

努力すればたどり着ける範囲の適切な将来像を人材育成担当者が思い描いたうえで、それを叶えるための人材育成の方法を計画することが大切です。

人材育成の7つの手法

近年、企業が人材育成の必要性を感じ始めているとはいえ、人材育成の方法は昔からありました。ここでは、旧来の手法から現代の企業の置かれた環境にもマッチした手法まで、人材育成で代表的な7つの手法を取り上げていきます。


1.メンター制度

メンター制度とは、知識やスキルが豊富な先輩(メンター)が新人社員や後輩(メンティー)に対し、手取り足取り教えていく制度です。

メンターとは、古代ギリシャの叙事詩に登場する老賢人メントール(Mentor)にちなんだ用語。メンターとなるのは他部署に所属する社員が好ましいでしょう。

直属の先輩だと話しづらい悩みでも、メンターと共有することで後輩が抱えている悩みを解決できます。またメンターにとっても後輩を育成するいい経験の場が与えられるでしょう。

後輩が先輩に質問したり、先輩が後輩の現状の課題をすぐに指摘できたりするなど、きめ細かくかつスピーディーな人材育成が可能であることがメリットである反面、先輩と後輩との関係が悪いとメンター制度はうまく機能しないことがデメリットです。

2.ジョブローテーション制度

ジョブローテーション制度とは社員の能力開発を目的とした配置の転換を行う制度で、様々な部署で業務を遂行することで、企業全体の業務を把握することが可能です。

新入社員から若手社員に対し、数ヶ月から数年単位で配置を転換していきます。単なる人事異動とは異なり、人材育成が目的です。日本で従来から採用されてきた人材育成の手法だといえるでしょう。

ジョブローテーション制度のメリットとして、複数の部署を経験することで社員の視野が広くなり、管理職候補の育成にも役立ちます。

3.MBO

MBO(目標管理制度)はManagement by Objectivesの略称で、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱しました。社員やチームがどの程度売上アップを目指すかなど具体的な目標を設定し、その目標に向かってどの程度成果を上げたかを評価する制度です。

MBOは社員のモチベーションを高めることや人事評価を行ないやすいというメリットがありますが、人材育成の手法としても有用でしょう。社員が自らの目標を明確化することで、そのゴールにたどり着くための努力を各自で行ない、結果として社員の成長につながります。

MBOは画期的な経営手法として評価されていますが、社員が個別に目標を設定するため、人材育成担当者が社員全員をサポートするのは難しいのがデメリットだといえるでしょう。

4.OJT

OJTとはOn the Job Trainingの略称で、業務をこなしながら知識やスキルを身に着けていく人材育成手法です。

日本古来の職人の育成にも用いられた人材育成手法で、現代の企業の多くもこの手法を採用しています。教育係が社員を個別に教えるので、きめ細かい人材育成が可能です。

即戦力である社員を育成できるというメリットがある反面、1人の教育係が複数の社員の面倒をみるのは大変というデメリットもあります。また、大企業ではOJTを実施するだけの十分な教育係が用意できるのに対し、中小企業では人材不足のため教育係を用意できず、OJTによる人材育成は困難かもしれません。

OJTのポイントは、教育を受ける後輩が教育係の先輩と人材育成の目標を共有することです。コミュニケーションを通じて後輩のことを深く理解することで、後輩のモチベーションを高められやすくなります。

理想的なOJTは、コミュニケーションを通じてお互いが目標を共有し、そのゴールに向かって積極的に行動することです。後輩が自身の意見を持てるようになるのがゴールなので、先輩は後輩がゴールに到達できるよう教育しなければなりません。

逆に、先輩が一方的に後輩に指示するのは、OJTの失敗例です。教育係となる先輩にも、OJTの目的と意義、ゴールを理解してもらう研修も必要でしょう。

5.OFFJT

OFFJTとはOff the Job Trainingの略称で、OJTと異なり職場の外での訓練を指します。OFFJTの代表例は研修による人材育成です。研修については次の項目で詳しく取り上げます。また、後で述べる自己啓発もOFFJTの一種でしょう。

例えば、実務と離れた場所で研修やセミナーを行い、社内の人材育成担当者や外部からの講師を通じてビジネスマナーを新入社員に教えます。また、資格試験を受験するための対策を行うのもOFFJTの一例です。

OFFJTのメリットは社員が大人数で参加するため、中小企業のような人手不足の状態でも人材育成をしやすいことが挙げられます。その一方で、実務から離れてしまうので業務に支障をきたすことがデメリットとして挙げられるでしょう。

6.自己啓発

社員がモチベーションを高めたり、目標達成に向かって知識やスキルなどを身に付けるための勉強の機会を提供したりする制度が自己啓発です。

OJTやOFFJTと異なり、社員自身が自己を成長させるため知識やスキルを身に付ける機会を探します。こうした社員の努力に対し、企業は受講料の金銭的援助や通信教育などの情報提供、就業時間の配慮などを行う必要があるでしょう。

知識やスキルの例として、資格の取得や英語の学習、ビジネススキルなどが挙げられます。本人が学びたい分野を選べ、専門的な知識やスキルを身に付けられるのが、自己啓発のメリットです。また、自己啓発できるスキルを身に付けた社員は会社の問題点に気づきやすくなり、会社の成長に貢献することも期待できます。

7.eラーニング

eラーニングは、スマートフォンやパソコンで学習する方法です。

インターネットが発達した1990年代後半から登場した人材育成の手法で、OFFJTのような研修に集まる日程や場所を設定することもなく、自宅でも学習が可能です。在宅勤務やサテライトオフィスなど社外勤務といった新しい働き方にも順応した人材育成方法だといえます。

eラーニングのメリットとして、自分のペースで学習できることが挙げられます。また、企業側からみても、集団研修と異なりコストはかかりません。

たとえばウェブ教材など、eラーニングの環境を外部に頼ることも可能です。その一方で、各自がeラーニングに取り組むので、ほかの社員が学習している姿を眺められずモチベーションを保つのが難しいというデメリットもあります。

人材育成で重要な3つの研修とは

先に述べましたように、OFFJTの代表例が複数の社員が集まって教育を受ける研修です。eラーニングのような自宅でも学習可能な人材育成手法がある一方で、研修は人材育成でも重要な地位を占めます。そこで、人材育成で重要な3つの研修スタイルを紹介しましょう。

1.集合研修

集合研修は代表的な研修方法で、受講生が1ヶ所に集まって学習するのが特徴です。本社に出向くインハウス(社内)研修のほかに、教育機関などが提供する公開セミナーや講座を受講する外部研修も集合研修に含まれます。

集合研修のメリットとしては、同じ研修を受けることで一体感が生まれることや、緊張感をもって学習に向かえるためモチベーションを保てることが挙げられます。講師にその場で質問することができ、フィードバックがスムーズに行えることも、集合研修のメリットです。

このほかにも、集合研修によりほかの受講生と知り合え、人間関係を築き上げられるかもしれません。

2.階層別研修

階層別研修は、社内の階層ごとで行う研修のことで、新入社員や若手社員、中堅社員や管理職、取締役など様々な階層で研修が計画されます。階層別研修は、階層内で社員が成長するための機会を与える研修だと位置づけられるでしょう。

階層別研修のメリットとしては、各階層で必要な知識やスキルを効率よく学習できる点が挙げられます。また同じ階層に属する社員と研修の場を共有することで、置かれている階層内での自分の能力を客観的に確認できることもメリットだといえるでしょう。

3.選抜研修

階層別研修に似たかたちの研修として、選抜研修が挙げられます。

階層別研修が階層内で必要な知識やスキルを身に付けさせるのが目的であるのに対し、選抜研修はひとつ上の階層に必要な知識やスキルを身に付けさせるための研修です。

言い換えると、階層別研修は業務を行う上で社員全員が覚えるべき知識やスキルを身に付けることが目的なのに対して、選抜研修は選ばれた人材だけが受けられる研修です。

いずれにせよ、階層別研修も選抜研修もなぜ受講者がその研修を受けているのかという動機づけが必要で、各自がそれを明確に意識することで研修への心構えも変わってくるでしょう。

世代別で効率的な人材育成とは

先に述べた階層別研修や選抜研修は、とくに人材育成において重要な意味をもちます。会社全体としてどのような人材の育成が必要かという理念やビジョンがないと、会社の経営方針とかけ離れた人材育成が行われてしまい、結果として会社が望む人材育成は果たされません。

新入社員から管理職に至るまで長い目で人材育成を捉える必要があり、短期的な成果を求めていては結果を伴うことはできないでしょう。そればかりか、社員のモチベーションは失われ、離職率の高さへ反映されてしまいます。

では、各階層においてどのように育成するのが効率的なのでしょうか。

新入社員の人材育成

新入社員の育成では、会社の経営理念や事業内容など会社で仕事をするうえで基本的な事柄を学習させる必要があります。

さらにビジネスマナーやコミュニケーション能力、基本的な業務なども学習内容に含まれるでしょう。この際に、会社の一員としての意識を新入社員に植えつける必要があります。

新入社員は会社で業務をこなすことに慣れていません。失敗を恐れたり、会社への帰属意識が薄かったりと、まだ会社の一員としての意識が芽生えていない状態だともいえます。仕事や自分の会社に対する意識の違いなど、世代間のギャップもあるでしょう。

そのため、先輩社員が自分たちの考えを押しつけるのではなく、仕事を自発的に振り返させるなど新入社員に意識を向けさせる必要があります。

中堅社員の人材育成

中堅社員は年代や役割が幅広いため、一括りで人材育成をするのが難しい階層です。

そのため、中堅社員の人材育成は軽視されがちで後回しになってしまうことも。しかし、新入社員や若手社員と異なり、仕事に慣れてしまったためにモチベーションを保つのが難しく、また管理職への昇進を諦め現在のポジションで満足している中堅社員もいるのが現状です。

このような社員をそのまま放置することなく、さらにスキルアップさせるべく育成することは、会社の将来を見据えたうえで重要となってくるでしょう。

中堅社員の人材育成として、まず新入社員や若手社員を育てる能力を開発することが考えられます。中堅社員自身が後輩を育成するという経験が乏しいため、育成能力をしっかり身に付けさせることが重要です。こうした自らが育成する立場になることは、将来管理職としての役割を経験できる絶好のチャンスだといえます。

また、リーダーシップを発揮できるように人材育成するのも重要です。中堅社員はいわば、会社のなかで主力だといえます。

リーダーシップを取り、チームのなかでどのように業績を上げられるかを主体的に考え、チームを引っ張っていけるような人材に育成していくことが大切です。

中堅社員の育成は、本人のモチベーション向上に効果があるだけでなく、将来管理職になりうる人材を計画的に育成することにもつながるでしょう。

管理職の人材育成

管理職の役割は自分の部署の業務目標を達成することだけではありません。部下に高いパフォーマンスを発揮させることも重要です。そのため、中堅社員よりもいっそう高いスキルが求められます。

円滑な組織運営が行えるようになるには、勤怠管理や業務管理をしっかり行う必要があるでしょう。また、部下のモチベーションを高めることや部下の育成も重要です。

そのため、管理職は組織運営や業務管理など管理能力を身に付けなければなりません。将来、企業や自分の部署が向かうべき目標を設定し、どういう状態になるのかというビジョンを持ち、そこにたどり着くまでの戦略を練るなど、管理能力を高める研修が必要です。

また業務管理能力を身に付けさせるためには、目標達成までのスケジュール管理や、ハラスメントの予防やメンタルヘルスの管理など労務管理のスキルを身に付ける必要があります。

管理職は人材育成やコミュニケーションスキル、大胆な意思決定だけでなく、部下から信頼されるような人間力も必要です。

昇進したばかりの管理職の社員はマネジメントの経験が乏しいため、管理職になってから育成するのでは時間が足りません。新入社員から中堅社員までの長いスパンを視野に入れ、計画的に管理職の人材育成を手掛ける必要があります。

人材育成に失敗している企業の問題点

近年、企業が置かれる状況は大きく変化しました。グローバル化や情報通信技術の発展、労働力不足や会社への帰属意識の低下など、従来の人材育成では、企業の置かれる厳しい周辺状況に対応しにくくなっています。

では、人材育成に失敗している企業はどんな状況に陥っているのでしょうか。

まずは、人材育成を行う環境を企業が用意していないケースが考えられます。優秀な社員がいたとしてもうまく人材育成に活かせず、結果として昇給や等級に反映されなければ、社員のモチベーションは低下し離職を招くかもしれません。

次に、人材育成の目標を社員に対して詳細に明示していないケースが挙げられます。目標が曖昧だと、企業がどのような人材を求めているのかを社員がイメージしづらいため、人材育成の目標に共感できないでしょう。

社員が人材育成の内容に満足しないケースも考えられます。この場合、社員がモチベーションを保ちながら研修など教育を受けることはできません。人材育成の方法が個々の社員とマッチしていないならば、期待される成長は望めないでしょう。

最後に、人材育成の成果がきちんと評価されないケースが挙げられます。

人材育成には時間がかかるため、人材育成担当者の業務が会社から評価されるのが難しいのです。そのため、若手社員の人材育成に力を入れるよりも、自分自身の仕事に力を入れる人材育成担当者もいるでしょう。このような担当者の姿勢では、若い人材をうまく育成できません。

人材育成を成功させるポイント

では、人材育成に成功するためのポイントは何でしょうか。4つのポイントについて取り上げていきましょう。

まず、中小企業における人材育成の成功ポイントとして、OJTが挙げられます。大企業であれば、人材育成に労力をかけることができる反面、中小企業では人材やコストなどを割り当てることが困難です。そこでOJTのように業務中に社員を人材育成できれば、直接フィードバックを社員が受けられるだけでなく、研修のようにコストや時間などを割り当てる必要もありません。

続いて、人材育成の計画をしっかり立てることです。社員自身に人材育成のなかで何を実践すべきかをしっかり意識させることで、社員の高い成長が期待できます。このため、人材が成長できる人材育成の計画書をきっちり立て、目的やスキルの明示などを行いましょう。

3点目は、人材育成を行う上司と部下との信頼関係を高めることです。信頼できない上司から育成されても、部下は本当に正しい人材育成方法なのか不安になります。信頼関係が高ければ、コミュニケーションによって綿密な指導が可能になるでしょう。

最後に、育成する社員のモチベーションを高めることです。人材育成には時間がかかるため、目に見えての成果をすぐには実感できません。また、本来の業務ではないため、社員のモチベーションも湧きにくいでしょう。人材育成の目的などを明確にし、経営方針との繋がりなどを社員が共有できてこそ、モチベーションを高めることが可能です。

最後に

人材育成は企業が成長するための柱ですが、軽視された時代が一時期続きました。

その結果、上の世代から下の世代への技術の継承も断絶したため、人材育成をどう行うべきかを企業が見失ってしまったともいえるでしょう。グローバル化や情報通信技術の発展など企業の置かれる立場は複雑化し、余計に人材育成が難しいかもしれません。

こうした反省もあり、企業の成長に繋がるような人材育成の方法が数多く開発されてきました。とはいえ、人材育成は短期的な成果を求めるものではなく、長期的なビジョンが必要です。

会社の経営方針とどのように繋がっているかなど、実際に教育を受ける社員が人材育成の目的を共有することで、各社員や企業の成長にもつながるでしょう。

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