フリーランスとは、特定の組織に属さず、個人で仕事を請け負う働き方のことです。小さな案件から頼めて納品が早いなど、仕事を依頼するメリットが多く、利用する企業も増えています。
本記事では、フリーランスの特徴や依頼する方法などについて紹介していきます。
フリーランスとは?
フリーランスは時間や場所にとらわれず自由に働けるため、近年注目を集めている働き方です。フリーランスの人口は年々増加する傾向にあり、2020年には300万人を超えています。
人口が増えた背景にあるのは、インターネット環境の整備やIT技術の進歩で働く場所の制約がなくなったことなど。クラウドソーシングサービスの普及に伴い、依頼する企業も増えています。
フリーランスにはよく似た言葉が多く、その違いがよくわからない方も多いでしょう。ここでは、フリーランスとその他の違いについて紹介します。
参考:内閣府「日本のフリーランスについて」
個人事業主や派遣との違いは?
フリーランスと混同しがちな言葉に、「個人事業主」があります。組織に属さず働いているという点で共通していますが、両者は同義ではありません。フリーランスが働き方を表す言葉であるのに対し、個人事業主は株式会社などの法人と区別するための税制上の区分です。
法人を設立せずに事業を営んでいる場合は個人事業主になりますが、飲食店の経営者や農業・漁業など、個人事業主であってもフリーランスではない事業もたくさんあります。派遣もフリーランスと似ていますが、まったく異なるものです。派遣は派遣先の会社に属していませんが、派遣元の会社と雇用関係を結んでいるためフリーランスではありません。
フリーランスと似た言葉
フリーランスと似た言葉は、他にも多く存在します。意味の違いを確認しておきましょう。
ノマドワーカー
ノマドワーカーとは、オフィスを持たず、カフェなどネット環境がある場所で仕事を行う人のことです。ノマドは「遊牧民」という意味で、移動しながら生活する姿が似ていることから名付けられました。
ノートパソコンとネット環境があればいつどこでも仕事ができるという特徴があり、ノマドワーカーとして働くフリーランスもたくさんいます。しかし、フリーランスのすべてがノマドワーカーとは限りません。また、サラリーマンでも在宅勤務の場合は、カフェなどを巡りノマドワーカーとなって働いている人もいます。
フリーター
フリーターはアルバイトなど、正社員以外の雇用形態で働く人を指す言葉です。会社と雇用契約を結んでいる点で、フリーランスとは明確に異なります。定職につかないという点で自由度が高いものの、どの組織にも属さないフリーランスとは一線を画した働き方です。
SOHO
SOHOは「Small Office Home Office」の頭文字をとった名称で、在宅ワーカーとも呼ばれています。インターネットを使い、自宅や小さな事務所で仕事をする人のことです。SOHOという形態で働く人が利用する小規模事務所などの物件を、SOHOと呼ぶこともあります。
フリーランスは働き方の呼称で、働く場所を特定していません。一方、SOHOは自宅やオフィスで働くことを前提にしており、その点で両者は異なります。
自由業
自由業は会社や組織に雇用されていない人の総称で、フリーランスと同じ意味です。ただし、国税庁では所得の説明で自由業の例に「医師、弁護士、作家、俳優、職業野球選手」といった職業をあげています。
自由業とフリーランスは同じ意味ですが、一般的にフリーランスはシステムエンジニアやWebデザイナー、ライターを指すことが多いです。
フリーランスの特徴4つ
フリーランスに仕事を依頼する場合は、その特徴をよく理解しておく必要があります。主な特徴を4つ紹介しましょう。
1.業務委託契約を結んで働く
フリーランスは受注ごとに、業務委託契約を結んで働きます。雇用契約ではないため、企業の指揮命令権は発生しません。フリーランス自身の裁量で仕事を進めます。業務委託契約は仕事の内容により、請負契約と準委任契約に分けられるのが通常です。
請負契約は仕事の完成を目的としており、結果に対して報酬が支払われます。フリーランス側には依頼された仕事を完成させる義務があり、完成できない場合や依頼された基準を満たさない場合、報酬の請求はできません。例えば、Webサイトの制作を依頼されて納品するのが請負契約です。
一方、準委任契約は仕事を遂行することが目的で、その時間や作業に応じて報酬が支払われます。例えば、企業に出向して作業を行うといった場合です。
2.スキルが必要
フリーランスに依頼される仕事内容は専門性が高いものが多く、受注するには専門的なスキルが必要です。対応できるスキルがない場合は、フリーランスになっても仕事を受けることは難しくなります。そのため、フリーランスは高いスキルを持つという前提がありますが、人によって仕事のクオリティには差があるのが実情です。
3.労働基準法は適用されない
企業と雇用契約を結ばないフリーランスは労働基準法の「労働者」に含まれず、法の適用は受けられません。最低賃金などの保護が受けられないため、不当に低い賃金が提示される可能性もあります。
労働時間や税金などは、すべて自分で管理しなければなりません。休日の設定や有給休暇などもないため、体調に注意しながら稼働時間を管理する必要があります。
4.収入が不安定
会社に雇用されている場合は毎月決まった収入がありますが、フリーランスはコンスタントに仕事があるとは限りません。仕事量には波があり、収入は不安定です。仕事がないとき、どのようにして仕事を探すかがフリーランスの大きな課題といえるでしょう。
フリーランスの代表的な仕事
フリーランスとして特に決められた職種はありませんが、仕事を受注しやすい職種はあります。代表的な仕事を紹介しましょう。
エンジニア
エンジニアは外部に依頼しやすい仕事で、高いスキルを持つフリーランスがたくさんいます。エンジニアには、システム構築に向けた企画や設計、既存のシステムの改善などを行うシステムエンジニア、システムエンジニアが作成した仕様書に基づいてプログラミングを行うプログラマーなどがあります。
デザイナー
Webデザイナーやグラフィックデザイナーも、フリーランスが多い職種です。webデザイナーはクライアントが希望するWebサイトのデザインを作ります。見やすい構成や、アクセス数を増やす工夫なども依頼できるでしょう。
広告や企業ロゴなどをデザインするグラフィックデザイナーも、フリーランスで活躍している仕事です。カタログやグッズなど、販促に関わる紙媒体のデザインなどを依頼できます。
コンサルタント関連
経営戦略やPMOのコンサルタントも、フリーランスに依頼できる仕事です。経営戦略コンサルタントは、企業の経営に関する問題の把握と解決方法を提案します。PMOのコンサルタントはプロジェクトの成功に向けて必要資料の作成や進捗管理など、マネジメント業務を行います。
士業・その他
司法書士、税理士、土地家屋調査士、社会保険労務士など、専門資格を持つ士業の多くはフリーランスとして活躍しています。他にも、イラストレーターやゲームディレクターなどのクリエイター、webライターやブログライターなどもフリーランスに多い職種です。
フリーランスに依頼する3つのメリット
フリーランスは、専門的なスキルが求められる仕事を依頼したいときに役立ちます。企業が依頼する場合、具体的にどのようなメリットがあるのか紹介しましょう。
1.人件費がかからない
会社の業務に必要なスキルが社内に不足する場合に、スキルを持つ人材の雇用や社内での育成はコストがかかります。しかし、業務が必要な場合だけフリーランスを利用すれば、不足しているスキルやノウハウを低コストで補うことが可能です。
固定給や賞与、社会保険料の負担なども必要なく、コスト削減のメリットは大きいといえるでしょう。
2.即戦力が期待できる
高いスキルを持つフリーランスを活用することで、即戦力の仕事が期待できます。人材を採用する場合に比べ、契約から稼働までのスピードが早いのもメリットです。双方の合意があれば、すぐに仕事に取りかかってもらうこともできるでしょう。
3.納品までのスピードが早い
フリーランスは、納品までのスピードが早いのも特徴です。制作会社などに外注する場合は打ち合わせなど手順を踏むため、納品までに時間がかかる傾向があります。一方、フリーランスの場合はすぐ仕事に着手してもらうことも可能で、納期についても多少の無理が通るかもしれません。融通をきかせやすいのが、個人ならではのメリットです。
フリーランスに依頼する3つの方法
仕事を依頼できるフリーランスを探す場合、いくつかの方法があります。代表的な方法を3つ紹介します。
1.クラウドソーシングサービスで探す
フリーランスの依頼におすすめなのが、クラウドソーシングサービスです。受発注されている仕事のカテゴリーは幅広く、ニーズに合ったフリーランスに発注できます。発注するスタイルは主に「プロジェクト形式」「コンペ形式」「タスク形式」の3つです。
- プロジェクト形式:発注者と受注者が1対1で仕事を進める
- コンペ形式:発注者が条件を提示し、寄せられた提案や作品から気に入ったものを選ぶ
- タスク形式:発注者が作業内容や報酬などを提示し、フリーランスが受注を決める
クラウドソーシングサービスは契約から納品、報酬の支払いまで、すべてサイト上で完結するため、スピーディーに業務を進行できるのがメリットです。ただし、クラウドソーシングサービスの場合、登録しているフリーランスの数が膨大なため、求めるスキルを持つ人材を探すのに時間がかかる可能性があります。
確実にスキルの高いフリーランスを見つけたい場合は、フリーランス専門の人材紹介サービスの利用もおすすめです。エンジニアなどのIT系、デザイナーなどのクリエイティブ系だけでなく、広報やマーケティング、人事といった文系総合職種のフリーランスを扱うサービスもあります。
会社を立ち上げたばかりで人材を雇用する余裕がない会社でも、ピンポイントで即戦力の人材を活用できるのが魅力です。
2.SNSやホームページで探す
SNSやホームページで、自身をアピールしているフリーランスもいます。これらのフリーランスを探すため、必要な業務などを検索にかけてみるのも一つの方法です。依頼する場合は、過去の実績などをよく確認しておくとよいでしょう。
3.知人に紹介してもらう
フリーランスを利用した知人から、紹介してもらう方法もあります。実際に依頼した経験をもとに紹介してもらえば、スキルに対する不安はないでしょう。仲介の手数料ンもかからず、理想的な方法です。
フリーランスに依頼するときの注意点
フリーランスへの依頼はメリットだけでなく、希望通りの仕事をしてもらうために注意すべきこともあります。
クオリティに差がある
フリーランスが皆同じようなスキルを持つとは限らず、仕事のクオリティには差があります。クラウドソーシングサービスや人材紹介会社ではフリーランスのスキルや実績を公開しているため、必ず確認しておいてください。
実績だけで判断するのではなく、実際にやり取りをして人柄などを見極めることも大切です。また、どんなにスキルの高いフリーランスでも、依頼の伝え方がうまくなければ思うような成果が得られません。意図した通りの内容がしっかり伝わるよう、発注する側の工夫も必要です。
対人と同じく丁寧な対応が必要
当然のことながら、フリーランスとのネット上のやり取りでも、対面したときと同じく丁寧な対応が必要です。仕事の内容は詳しく説明し、レスポンスもできるだけ早く行いましょう。
報酬の額や支払いも誠実に対応してください。個人のフリーランスだからと、誠意のない対応をするのはやめましょう。仕事のクオリティを下げることにもなり、会社の評判を落とすことにもなりかねません。他の取引先や顧客と変わらない対応が求められます。
最後に
フリーランスへの仕事依頼は、専門性の高い仕事を外注したい場合に便利です。必要なときだけ依頼でき、スキルを持つ人材の雇用や社内育成にかかるコストを削減します。
自社にはないスキルを必要なときだけ補完したいと考える経営者の方は、フリーランスの利用を検討してみるとよいでしょう。