合同会社とは?メリットやデメリット、他の法人との違いを解説

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会社の形態の中でも比較的新しいものに「合同会社」があります。「合同会社」は出資者と経営者が同じという特徴のある会社ですが、どのような特性やメリット、デメリットがあるのでしょうか。また、株式会社などの他の法人形態とはどのような違いがあるのかについても見ていきましょう。

目次
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合同会社とは何?簡単に解説

「合同会社」とは、2006年から施行されている会社法によって新しく定められた会社の形態です。出資者が経営者となり、有限責任を持つ社員にもなります。「合同会社」は、出資者でもある社員すべてが同意することで会社としての意思を決定していく「持分会社」です。なお、「持分会社」には、「合同会社」以外にも出資者が無限責任を負う「合名会社」と有限責任を負う社員と無限責任を負う社員に分かれる「合資会社」があります。

有限会社の代わりに誕生した法人組織

2006年に新しい会社法が施行されるまでは、法人組織としては「株式会社」と「有限会社」「合資会社」「合名会社」の4つの形態がありました。しかし、新会社法施行後は、新しく「有限会社」を設立することはできなくなり、代わりに「合同会社」が誕生しています。

なお、「有限会社」がなくなったとはいえ、会社法施行前に「有限会社」を設立していた場合は「有限会社」の名前をそのまま残すことが可能です。

合同会社と株式会社を7つのポイントで比較

日本の法人のうち、9割以上が「株式会社」の形態を取っています。そのため、会社設立を検討するときは「株式会社」にするかその他の形態にするかを悩むことになるでしょう。「合同会社」と「株式会社」を7つのポイントに分けて比較しますので、ぜひ参考にして「合同会社」への理解を深めてください。

1.設立費用

会社を設立する際には、登録免許税と収入印紙代、定款の認証にかかる費用などが発生します。「株式会社」の設立時には15万円か資本金の0.7%かどちらか高いほうの登録免許税がかかりますが、「合同会社」の登録免許税は6万円です。定款には4万円分の収入印紙を貼りますが、こちらに関しては「株式会社」も「合同会社」も違いはありません。なお、紙の定款ではなく電子定款を選ぶ場合は、どちらも収入印紙代をかけずに提出することができます。

また、「株式会社」では定款を公証人役場で認証することが不可欠なため、認証費用として5万円がかかります。一方、「合同会社」では定款認証の必要がないため、定款認証手数料も不要です。

  • 株式会社:登録免許税(15万円か資本金の0.7%のどちらか高いほう)+収入印紙代(0か4万円)+定款認証手数料(5万円)=20万円以上
  • 合同会社:登録免許税(6万円)+収入印紙代(0か4万円)=6万円以上

設立費用を少しでも抑えたい場合は、「合同会社」を選ぶことができるでしょう。電子定款を選択すれば、さらに設立費用を少なくすることが可能です。

2.官報掲載費

「株式会社」では決算をする度に官報に掲載しなくてはなりません。官報掲載費は6万円のため、会社を存続している限り、毎年6万円がかかります。一方、「合同会社」では決算を官報に掲載する義務がないため、官報掲載費は不要です。1回ごとの費用は高額ではありませんが、長期にわたって会社を運営すると累積額はかなりの負担になると考えられます。

3.出資者の経営権

「株式会社」では経営者は出資者の利益を目指す経営を行いますが、経営者と出資者は分かれている、つまり経営と所有は分離していることが特徴でもあります。なお、経営者が株式を保有して出資者になることは可能です。しかし、経営者だからといって必ずしも出資者になる必要はありません。

「合同会社」において出資者は経営者でもあり社員でもあります。そのため、出資者はすべて経営権を持つといえるでしょう。一方、「株式会社」では出資者は経営権を持たない存在です。出資者を「株主」と呼び、株主総会に参加して採決等に参加することはできますが、経営に直接参加することはありません。

4.利益を分配する方法

「株式会社」では出資金に応じて「配当金」を受け取ることができます。例えば1株あたりの「配当金」が20円の場合なら、10,000株保有している人は「配当金」が支払われる際に20万円を受け取ることになるでしょう。20,000株を保有しているなら「配当金」は40万円と、株数に応じて配当金の金額も増減します。

一方、「合同会社」では、そもそも株式がないため「配当金」の制度もありません。出資者の合意の下であれば利益を自由に分配することができるので、出資金の金額に応じて分配したり、出資金の金額とは無関係に同額を分配したりすることも可能です。

5.意思決定の仕組み

「株式会社」では会社を運営していくうえでの重要事項は株主総会で決議します。また、重要事項以外を決定する際には、監査役や会計参与などの役職やさまざまな組織が関わり、機動力に欠けてしまうことも少なくありません。

一方、「合同会社」では監査役等の役職・組織を置く必要がないため、シンプルに出資者の合意によって意思決定することが可能です。意思決定の速さや機動性に関しては「合同会社」が勝っているといえるでしょう。

6.税制

「株式会社」においても「合同会社」においても、事業による利益に対して法人税がかかるという点に関しては違いはありません。また、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合は、いずれの法人も消費税の支払いが必要になります。

なお、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であっても、前事業年度の開始日から6か月以内に課税売上高が1,000万円を超えるときも、消費税の支払いが必要です。

7.社会的信用度

日本の法人の9割以上が「株式会社」であることからも、法人といえば「株式会社」をイメージする方は少なくありません。そのため、企業の知名度が低くても、「株式会社」というだけで信用できるような印象になることがあります。

一方、「合同会社」は2006年に始まったばかりの法人形態のため、企業数が少ないだけでなく知名度も低く、「合同会社とは何か?」と疑問に思う方も多いでしょう。「合同会社」という名前を知らない方や、「法律に則って設立された法人なのか?」と不安に感じる方がいないとはいえません。

合同会社のメリット

会社を設立するときに「合同会社」を選ぶとどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットを紹介します。

設立費用も維持費も少ない

「合同会社」は最低6万円あれば設立することができます。最低でも20万円かかる「株式会社」と比べると費用をかけずに設立できるといえるでしょう。会社設立時にはオフィスを借りるための敷金や不動産仲介手数料、家具やパソコンなどの多額の初期費用がかかるので、会社設立の費用はできるだけ低く抑える必要があります。「株式会社」という名前にこだわらないのなら「合同会社」を選び、設立費用のコストダウンを目指すことができるでしょう。

また、官報掲載費がかからないため、毎年の維持費も「株式会社」より少ないです。会社を始めたは良いものの、すぐに利益が上がるとは限りません。初期費用として金融機関等から多額の融資を受けている場合は、毎月の維持費に加えて返済額も発生します。維持費を少しでも抑えたい場合も、「合同会社」を選ぶほうが良いかもしれません。

売上が大きいと個人事業主より税負担が少ない

「合同会社」などの法人では課税売上高に対して法人税が、個人事業主は課税所得に対して所得税がかかります。資本金1億円超の普通法人の法人税率は23.2%、資本金1億円以下の普通法人の法人税は課税売上高のうち800万円以下の部分に関しては15%か19%、800万円超の部分に関しては23.2%の法人税率です。

一方、所得税は課税所得が増えると税率が増える仕組みになっています。課税所得金額が1,949,000円までならば所得税率は5%と低率です。しかし、課税所得金額が4,000万円以上のときは最大税率である45%が適用されることになります。

このため、課税売上高が高いときは、個人事業主のほうが法人よりも高い税率が適用され、税負担も大きくなってしまうでしょう。事業が軌道に乗り、コンスタントに利益を得られるようになったときは、「合同会社」などを設立して法人化することができます。

しかし、売上高が低いときは個人事業主のほうが高い税率が適用される可能性があるため、あわてて法人化する必要はないでしょう。事業がある程度軌道に乗るまでは、個人事業主として運営していくことも検討できます。

利益配分を自由に設定できる

「合同会社」では出資額に応じて利益を配分する必要がないため、出資額に関わらず自由に利益配分を行うことができます。出資者全員の同意は必要となりますが、出資者一律10万円ずつ利益を配分したり、出資のタイミングによって分配額に傾斜をつけたりすることもできるでしょう。

合同会社のデメリット

設立費用や維持費用が低く、なおかつ自由度の高い経営ができる「合同会社」ですが、デメリットも少なくありません。特に注意したいデメリット2つについて見ていきましょう。

信用を得にくいことがある

「合同会社」は「株式会社」と比べると知名度も低く、会社数自体も少ないです。そのため、どうしても「株式会社」と比べて信用を得にくくなることがあります。社会的信用が得られないと、金融機関における融資審査や法人クレジットカードの審査、オフィスなどを借りる際の審査が不利になることもあるでしょう。


とはいえ、「合同会社」だからといって審査に通らないとは限りません。長期間運営することで経営実績を積んだり、資本金を増やしたりすることで信用力を高めることは可能です。

代表取締役社長がいない

「株式会社」では会社を代表する役員は「代表取締役社長」の肩書きをつけることが一般的です。しかし、「合同会社」では「代表取締役社長」の肩書きを使用することができず、会社を代表する人は「代表役員」を名乗ることになります。

「合同会社」の知名度や認知度が低いため、「代表役員」の知名度・認知度も低いです。名刺に「代表役員」と記しても、「代表取締役社長」ほどにはインパクトを与えることができず、社会的信用度も得にくいことがあるでしょう。

上場により資金調達ができない

「株式会社」は株式市場に上場することができます。非上場のときは設立者などの関係者だけから出資を募ることになるため、調達できる資金の上限額は多くはありません。しかし、株式市場はすべての人に開かれた市場のため、上場すれば世界中の投資家から資金を調達することが可能です。将来性の高い事業をしていることが評価されるなら、数百億円、数千億円単位の資金調達も夢ではありません。

一方、「合同会社」はそもそも株式がないため、上場することは不可能です。そのため、資金調達手段はあくまでも出資者を募るか、事業で利益を出すかしかないため、「株式会社」と比べると事業規模を急速に拡大させていくことは難しいでしょう。

合同会社が向いている業種

「合同会社」は設立費用も維持費も低いため、少しでもコストを軽減したい方には適した企業形態です。すでに潤沢な資金があり、当面の間、金融機関から融資を受ける必要がないのならば「合同会社」が適しているケースも多いでしょう。

また、企業としての知名度がすでに高い場合や、知名度の高い企業の関連会社として設立する場合も、社会的信用度を気にする必要がないため、「合同会社」が適していると考えられます。その他にも、介護事業などの公共性が高く信用を得やすい業界や、特定の取引先を定めずに運営するインターネット関連の仕事、企業名ではなく屋号で業務を行う美容院やカフェなども「合同会社」向きといえるでしょう。

会社の形態を迷ったときは?

「株式会社」か「合同会社」、それとも個人事業主として運営するか迷ったときは、何を重視したいかで形態を決めることができます。社会的信用度を得る必要があるならば「株式会社」、設立費用などのコストを抑えたい場合は「合同会社」、見込まれる課税所得が少ない場合は個人事業主を検討してみましょう。

被害を最小化したいときは合同会社

事業がうまくいくとは限りません。初期費用や維持費が低いならば、万が一事業がうまくいかなくても被害を最少化することができるでしょう。事業が軌道に乗ってから「株式会社」に変更することもできるので、最初は「合同会社」から起業するのもひとつの方法です。

最後に

「合同会社」はコストをかけずに起業したいときに利用できる法人の形態です。事業が軌道に乗るかどうか不安なときや、より自由度の高い経営をしたいときなどに選択できます。どの企業形態にしようか迷ったときも、万が一の被害を抑える企業として「合同会社」を検討できるでしょう。

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