見た目が美しく、バランスが取れているように感じる比が「黄金比」です。歴史的建造物からレイアウトを決める際などのあらゆる場面に使用されています。「黄金比」とは具体的にはどのような数字なのか、また、デザインに活かす方法について見ていきましょう。
黄金比とは?
「黄金比」とは、長方形の長辺と短辺として表現することができます。長方形の中に短辺を一辺とする正方形を描いてみましょう。正方形に含まれない部分に新たな長方形が生まれますが、この長方形が元の長方形と相似であるときは「黄金比」だといえます。
黄金比の比率を計算で求めてみよう
「黄金比」の比率を具体的な数字として求めてみましょう。長方形の短辺をA、長辺をBとします。長方形の中にAを一辺とする正方形を描くと、余白部分に生まれる長方形の短辺は(B-A)、長辺はAと記せるでしょう。
この新たな長方形が元の長方形と相似関係にあるので、以下の等式が成り立ちます。
- A:B=(B-A):A
上記の等式は以下のように変形できます。
- A²=B(B-A)
ところで、最終的には短辺を1とすると長辺がどの程度の数字になるのかを知りたいため、B=PA(Pは正の定数)という形に表現する必要があります。上式にB=PAを代入してみましょう。
- A²=PA(PA-A)=A²(P²-P)
Aは0ではないため、式全体をA²で割ることが可能です。すると、Pに関して以下の等式が成り立ちます。
- P²-P-1=0
上記の式を解くと、P=(1±√5)/2です。Pは正の数なので、P=(1+√5)/2が唯一の解となります。√5=2.236…なのでP=1.618…、つまり「黄金比」とは1:1.618…であることが分かります。
白銀比とは?
バランスの取れた比としては、「黄金比」以外にも「白銀比」を挙げることができるでしょう。1:(1+√5)2と単一の比として示すことができる「黄金比」とは異なり、「白銀比」には以下の2つの比があります。
- 1:√2
- 1:1+√2
なお、日本では1:√2のほうを「白銀比」として用いることが一般です。√2=1.414…なので、「白銀比」とは1:1.414…であると考えることができるでしょう。
身の回りに見られる黄金比
世界の中の多くのものは「黄金比」でできています。身の回りにあるものや世界的に有名なものの中で「黄金比」が使われている例について見ていきましょう。
美術作品(ミロのヴィーナスの足など)
多くの人々が「バランスが良く美しい」と感じる美術作品の中には、「黄金比」が活かされているものが少なくありません。例えばルーブル美術館に所蔵されているギリシャで作成された彫刻・ミロのヴィーナスは、上半身(へそから上)の長さと下半身(へそから下)の長さが1:(1+√5)/2の「黄金比」です。また、下半身の長さを1とすると全身の長さは(1+√5)/2が成り立ち、美しい「黄金比」を保っています。
同じくルーブル美術館に所蔵されているダヴィンチのモナリザについても探ってみましょう。世界中をとりこにするモナリザの顔は横幅を1とすると縦(生え際からあご先まで)が(1+√5)/2となっており、「黄金比」のバランスで描かれていることが分かります。
ヨーロッパの歴史的建造物
ヨーロッパにある歴史的建造物の多くにも、「黄金比」が用いられています。例えばルーブル美術館から西にまっすぐ進み、シャンゼリゼ大通りを過ぎると見える凱旋門は、中央のアーチ部分の高さを1とすると凱旋門自体の高さが(1+√5)/2の「黄金比」です。
スペイン・バルセロナにあるガウディの傑作と言われるカトリック教会、サグラダ・ファミリアにも「黄金比」が使われています。サグラダ・ファミリア全体の横幅を1とすると高さは(1+√5)/2で表すことが可能です。
日本の歴史的建造物は白銀比が多い
ヨーロッパの歴史的建造物には「黄金比」が使われていることが多いのですが、日本の歴史的建造物には「白銀比」が使われていることが多いといわれています。「白銀比」は「大和比(やまとひ)」とも呼ばれて古来親しまれていることからも、日本人にとってバランスが良いと感じる割合でもあるようです。
例えば奈良にある世界最古の木造建築物である法隆寺の五重塔は、もっとも上の屋根の幅を1とすると、もっとも下の屋根の幅が√2になっており、美しい「白銀比」となっています。また、五重塔の横にある法隆寺金堂も、上部の屋根の幅を1とすると下部の屋根の幅は√2です。五重塔と同じく「白銀比」を用いて設計された建築物と考えられるでしょう。
歴史的建造物ではありませんが、新しい東京のシンボルともなっているスカイツリーも、設計に「白銀比」が用いられています。スカイツリーには東京の街を見渡す展望台が2つありますが、そのうちの上部にある展望台(展望回廊 地上450m)までの高さを1とするとスカイツリー全体の高さは√2で「白銀比」のバランスです。
名刺やクレジットカード
さらに身近なところにも、「黄金比」は潜んでいます。例えば毎日何度も目にする名刺やクレジットカードの縦の長さと横の長さを測ってみましょう。厳密には「黄金比」ではありませんが、「黄金比」に近いバランスで縦と横の長さが決められています。
例えば名刺の一般的なサイズは、縦55㎜、横91㎜です。縦と横の比は1:1.654…と「黄金比」の1:1.618…に非常に近い割合であることが分かるでしょう。
一方、クレジットカードの一般的なサイズは、縦53.98㎜、横85.60㎜と国際規格で定められています。縦と横の比は1:1.585…となり、こちらも「黄金比」に非常に近い割合であるといえるでしょう。
企業ロゴ
世界を代表するような有名企業のロゴにも、「黄金比」が潜んでいるケースは少なくありません。例えばGoogleのロゴでは、最初のGは大きな円、L以外の小文字に関しては小さな円が使われています。この直径の比はほぼ1:(1+√5)/2となり、ロゴ全体が「黄金比」で描かれているといえるでしょう。
また、最初のGの横棒(-)の下の部分からGのもっとも下の部分までの高さを1とすると、OやEの小文字全体の高さは(1+√5)/2です。このため、ロゴ全体だけでなく、文字ごとのバランスも「黄金比」になっていることが分かります。
黄金比をデザインに活かす3つの方法
多くの人が「バランスが良い」と感じる「黄金比」を用いることで、見た目にも安定したデザインをつくることができます。「黄金比」をデザインに活かす3つの方法について見ていきましょう。
1.レイアウトや余白に黄金比を用いる
レイアウトや余白を決める際に「黄金比」を用いれば、より印象的で安定感のあるデザインにすることができます。余白が多すぎると物足りない印象を与え、反対に余白が少ないとごちゃごちゃした印象を与えることがあるため、「黄金比」を用いることでちょうど良いと感じるデザインに仕上げていきましょう。
例えば、ホームページや資料を作成するときなどに画面や紙面を2分割することがあります。一方を短辺を使った正方形、残りを元の長方形の相似形にすることで、2つのスペースのバランスが取れて見えるようになるでしょう。
また、余白の部分とデザインの部分を「黄金比」に調整することもできます。余白部分が広くなるようにすればすっきりとした印象に、デザインを書き込む部分が広くなるようにすれば豊富な内容をごちゃごちゃした印象を与えずにまとめられるでしょう。
2.フォーカルポイントに黄金螺旋を重ねる
「黄金比」では短辺を使った正方形の残りの部分は元の長方形の相似形です。このように相似形を何度もつくっていくことで、螺旋階段や巻貝のような美しい螺旋状の線が表れます。
この螺旋状の線を「黄金螺旋」と呼びます。「黄金螺旋」の中心にフォーカルポイントを合わせることで、バランスのとれたデザインがつくりやすくなるでしょう。
3.円や図形を黄金比率で組み合わせる
円や図形をいくつか組み合わせるときは、それぞれの直径や一辺の比が黄金比率になるようにするとバランス良く見えます。例えば紙面の中に写真をいくつか配置する場合、写真のサイズが黄金比率になるようにすれば、異なるサイズの写真を掲載してもバランスが取れて見えるようになるでしょう。
最後に
この世は「黄金比」でできていると言っても過言ではありません。「黄金比」とは何かを知らない場合でも、「黄金比」でできているものを見ると心地良く感じます。「黄金比」をデザインやレイアウトに活かし、調和の取れた印象の資料やサイトをつくっていきましょう。