コーチングは会社の目標達成や社員教育として有効な方法です。社員の主体性を高め、可能性を引き出すなどのメリットがあります。
今回、この記事ではコーチングのメリット・デメリットについて解説し、ビジネスで活用する方法について紹介します。
コーチングの定義とは?
コーチングとは、対話によって相手の話を聞き取り、質問や提案などをして自発的な行動を促す手法です。問題解決や目標を達成するために行います。
ティーチングのように教えることで成長させるのではなく、自分自身で考え答えを導き出し、自発的な成長を促すのが特徴です。
相手と同じ目線に立ち、ともに成長するパートナーとしての役割を果たします。
コーチングのメリット
コーチングは会社の目標達成や人材育成など様々な場面で役立ちますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
考える力を育み主体性を高める
コーチングは相手に考える力を与え、主体性を高められる点がメリットの一つです。コーチは安易に答えを与えるのではなく、相手に自分で考えさせるための質問を投げかけます。
相手に対し、何が問題で自分はどうしたいのか、どうすれば解決できるのかを相手に繰り返し考えさせることにより、自発的に行動できるよう導くことがコーチの役割です。コーチングを実施すれば、相手が実際に問題に直面した際、自ら問題を解決できるようになるでしょう。
潜在的な可能性を引き出す
コーチングには、相手の潜在的な力を引き出すというメリットもあります。問題解決や目標達成には、より深い思考や行動力が必要になるときもあるでしょう。
コーチングでは相手に「どうすれば達成できるのか」「自分の潜在的な可能性を引き出すには何をするべきか」という問いかけをし、まだ表面に出ていない相手の可能性を引き出します。そうすることで、必要な場面で潜在的な力を発揮できるようになるでしょう。
積極的に学習する意欲を向上させる
コーチングは相手の自発的な行動を促し、主体性を高めます。そのため、コーチングを行う事で何事にも積極的に取り組めるようになるでしょう。
相手の学習する意欲も向上し、より成長する機会を増やせます。会社の発展に貢献する人材の育成に役立つでしょう。
デメリットも把握しておこう
コーチングには様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。
効果が出るまでには時間がかかる
コーチングは対話により思考や行動のパターンを変えていく手法です。同じプロセスを繰り返していくため、効果が出るまでには時間がかかります。
急いで人材を育成したいという場合には、不向きといえるかもしれません。
多人数での育成が難しい
相手のペースに合わせて少しずつ成長を促すのも、コーチングの手法の一つです。相手ごとに個別の対応が必要になるため、多人数での育成は難しいかもしれません。効率的な育成方法とはいえないのが実状です。
新入社員など多くの人材を育成したい場合には、採用しづらい手法かもしれません。
ビジネスで活用する方法は2つ
コーチングはビジネスの場面で大いに活躍します。活用する方法は主に2つあります。
1.外部に依頼する
コーチングを受けるには、外部のコーチング専門機関に依頼するという方法があります。養成機関で教育を受けたスキルの高いコーチによるサポートで、質の高いコーチングが受けられるでしょう。
ただし、外部機関を利用する場合はコストがかかりますし、コーチングを受けるための時間を取られるというデメリットもあります。
2.社員が実施する
コストと時間を省きたい場合、社員がスキルを取得して実施する方法もあります。コーチングを社内教育の一環として組み込み、永続的に行いたい場合にもおすすめです。
上司の立場にある社員がトレーニングを受けて資格を取得すれば、日常業務の中で部下にコーチングができるでしょう。
コーチングスキルを取得した上司は、部下の話をしっかりと聞くようになります。部下は何を考えているのか、どのような業務がしたいのかに耳を傾けることで、良いコミュニケーションがとれるのもメリットです。
社員がスキルを取得するには、認定機関に通って資格を取得する、外部研修に参加するなどの方法があります。また、コーチングのスキルを持つ人材を採用するのも一つの方法です。
コーチングは国家資格ではなく、様々な民間団体が独自の基準で認定を行っています。それぞれ独自のカリキュラムを用意しているため、会社が行いたい内容に沿ったカリキュラムかどうかを確かめて受講するとよいでしょう。
主な認定機関を紹介します。
- 国際コーチ連盟(ICF):世界最大級のコーチングに関する団体で、認定にはトレーニングのほか、コーチングの経験時間が必要
- 一般財団法人生涯学習開発財団:日本初のコーチ認定制度で、初級者向けの認定コーチの資格は最短6ヶ月で取得可能
- プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ:国際的なコーチングの資格を取得できる。コアコースと上級コースの受講が必要
コーチングに求められる3つのスキル
コーチングのスキルを自社の社員が取得して実施する場合、どのようなスキルが求められるのか知っておきましょう。
1.傾聴する
コーチングは相手の話をよく聞くことから始まります。深部まで耳を傾け、話し方や表情、しぐさなどに注意を払いながら、相手の理解に努めることが必要です。
傾聴では相手のありのままを受け入れる必要があり、途中でアドバイスや意見は挟みません。最後まで話を聞くことに集中します。
相手の話を無表情で聞くのではなく、うなずいたり相づちを打ったりしましょう。相手の話を真剣に聞き、受け入れているのだということを示します。
相づちに加え、話をおうむ返しで繰り返すのも効果的です。繰り返すことで相手は自分の話を受け入れ、共感してもらったと感じ、安心感を覚えます。相手との間に信頼関係が生まれ、心を開いてもらえるでしょう。
2.質問する
相手の内側にある答えを引き出すため、適切な質問を行います。これは相手が自力で答えを見つけるための手法です。自らの成長を促す「気づき」ができるような質問を投げかけます。
質問は、詰問にならないようにしましょう。「なぜ」「どうして」ではなく「何」を使った疑問文で質問します。
例えば「どうして書類を作らなかったの?」であれば、質問ではなく非難が込められてしまうでしょう。叱られたと感じ、萎縮して言い訳だけを考えてしまうかもしれません。
しかし「書類を作らなかった理由は何だろう?」と質問すれば、相手は精神的に安定し、書類を作らなかった理由を冷静に分析できるはずです。
相手が自分の言葉で分析できるような質問をして、気づきの機会を増やしていきましょう。
3.承認する
相手の長所を見つけて評価する「承認」も、コーチングの重要なスキルです。相手の存在を承認することで、安心感を与えます。相手の良い部分を見つけ、言葉や態度に表して評価することが大切です。
評価は、相手にとって今後につながるような内容にします。そのためには、相手が納得できるような客観的な事実をあげ、課題も加えて評価するとよいでしょう。
例えば「今回の企画は斬新で、よくできていましたね。ただ、この部分はもう少し具体的な数字を出してもいいかと思いました」と、評価のあとに課題も伝えます。相手は褒められたことに喜び、次は与えられた課題を何とかしようと行動するでしょう。
最後に
コーチングは自主的に行動できる人材を育てることで、会社の問題解決や目標達成のために役立つ方法です。多人数に指導できないため効率が良くないという側面はありますが、上司などがスキルを身につければ業務の中でのコーチングも可能です。コーチングを上手に取り入れ、会社の発展に役立てましょう。