WEBサイトやWEB広告を運用する際に、2つのパターンのどちらのほうがよい成果を残せるか比較して検証する手法をABテストと呼びます。ABテストを実施するにあたり、「目的」「メリット」の理解は必須です。
そこでこの記事では、効率よくWEBコンテンツを運用したい人に向け、ABテストの目的とメリットを解説し、さらにABテストが必須となる3つのケースや、誰でもできるABテストの進め方についても紹介します。
ABテストとは?分かりやすく解説
ABテストとは、Webマーケティングで利用される手法の一つです。以下では、ABテストを行う目的とメリットについて解説していきます。
ABテストを行う目的
ABテストを実施するもっとも一般的な理由が、コンバージョン率とクリック率を向上させることです。
コンバージョン率……クリック数に対して成果(商品発注や資料請求)が発生した割合
クリック率……インプレッション(広告出稿の場合は広告を見られた数)に対して数に対してクリックされた割合
AB テストでは自社で出稿する2種類の広告をA、Bとした場合にどちらのクリック率、コンバージョン率)が高かったか検証します。その結果、どちらが良い成果だったのかを記録すれば次の施策の改善に役立つのです。
ABテストを行うメリット
ABテストを行うメリットは、改善や変更を加えた要素の評価を正しく行えることです。
たとえば、改善を加えたAの広告と、改善を加えなかったBの広告があるとしましょう。改善したAの広告が良い結果を残し、改善しなかったBの広告はAの広告に比べてあまり良くなかったとしましょう。このとき、比較対象となるBの広告がなければ、Aの広告が良い結果を残したと一概にはいえなくなります。
つまり、ABテストを行うことで、効率よく検証と改善を重ねていくことが可能になるのです。
ABテストを行うべき3つのパターン
では、AB テストはどのような場合に行うべきなのでしょうか。以下で、ABテストを行うべき3つのパターンを紹介していきます。該当する項目があった場合は、ぜひABテストを実施してみてください。
集客率が低い場合
WEBサイトの集客率が悪いと、せっかく作ったサイトや記事を多くの人に見てもらえていないことになるため、すぐに改善を加えたほうがよいです。
そして、Webサイトの集客率が低い場合は、ABテストの実施が効果的です。特にWebサイトにSEO対策を加える際などは、AB テストが役立ちます。
ひとつ例を挙げると、SEOの重要度が最も高いとされる、タイトルにAB テストを用いることが可能です。変更する前のタイトルをA、変更後のタイトルをBとしましょう。Bのタイトルに設定した後、検索順位が上がったのであれば、SEO対策として正しかったのはBであることが分かります。
離脱率が高い場合
離脱率が高いと、コンバージョン率(クリック数に対して生まれる成果の割合)が下がります。離脱率とは、訪れたページから次のページに移動しなかった(離脱した)ユーザーの割合です。
そして、Webサイトの離脱率が高い場合にも、ABテストの実施は効果的です。たとえば、離脱率に影響しやすい要素である、
- 記事内の画像の有無
- 文と文の間の空白や行間
- ページの読み込み速度
などにAB テストを行うことで、離脱率が下げられる可能性があります。
ファーストビューに要素が集中している場合
ファーストビューに要素が集中していると、情報を見づらいことにユーザーがストレスを感じるため、ページから離れていってしまいます。Webサイトにアクセスした際、最初に画面上に表示されるファーストビューに要素が集中している場合にも、ABテストの実施は効果があるでしょう。
たとえば、WEB広告などでクリックボタンや画像、キャッチコピーなど、複数の要素が合わさっている場合です。様々な要素が集中的に集まっている場合は、組み合わせや各要素の配置変更などで、クリック率やコンバージョン率が変わる可能性があります。つまり、AB テストを実施することで、組み合わせや画像、キャッチコピーなどの配置を最適化できるのです。
ABテストで検証できる項目
以下では、ABテストで検証可能な項目について紹介していきます。具体的な方法についても解説するので、ABテストの実施を検討されている方は参考にしてみてください。
ファーストビュー
ファーストビューコンテンツとは、一番最初に表示される画面で、スクロールされていない状態の画面を指します。
ファーストビューコンテンツは、ユーザーの興味を引くための重要な要素になります。したがって、 ABテストを実施し、ユーザーにとって有用なコンテンツにすることが重要です。
たとえば、「キャッチコピーの配置を上層部分に持ってくるか、それとも下層部に持ってくるか」といった場合には、ABテストを用いるとよいでしょう。
見出しやページのタイトル
Webコンテンツの見出しやページタイトルにも、ABテストが効果的です。
見出しとは、コンテンツの内容を要約するために表示されるテキスト情報で、ページタイトルとはコンテンツを表す名称を指します。見出しとページタイトルは、SEOに大きく影響する要素であるため、積極的にAB テストを利用するとよいでしょう。
画像
コンテンツ内に配置する画像にも、ABテストの実施をおすすめします。適切な場所にユーザーが望む画像を配置することで、ユーザーの満足度が向上するためです。
ABテストの方法としては、
- 異なる2つの画像で検証する
- イメージ画像の中にテキストを挿入する
などといった検証方法が考えられるでしょう。
アクション(CTA)ボタン
CTAとは、「Call to Action」の略で、直訳すると行動喚起を意味します。つまり、アクションボタンとは、ユーザーの行動を誘導するためのボタンです。
たとえば、WEBサイトのお問い合わせフォームや、アフィリエイトサイトへリンクしたボタンなどがこれに該当します。
ABテストの方法としては、
- ボタンの配置場所を変更する
- ボタンに記載するテキストを変える
といった検証方法が考えられます。
アクションボタンはコンバージョン率に直結する要素であるため、積極的に検証を行うとよいでしょう。ただし、クリック率が悪い場合は、先にクリック率から改善を行うのが得策です。サイトの集客が安定し、クリック率が上がり始めたら、アクションボタンの改善を意識しましょう。
クリック率の改善方法について
クリック率を改善する方法は下記の通りです。
- クリックしたくなるようなタイトルを設定する
- 記事の紹介欄(ディスクリプション)で記事を見やすくなるように要約する
などといった方法が考えられます。
ユーザーの視点を立ち、「どうすればクリックされるか」を客観的に考えることが大切です。
離脱導線
離脱導線とは、ページ外へ繋がるリンクのことを指します。コンバージョンのために設定されているアクションボタンなどのリンクは、離脱動線に該当しません。
ユーザーの利便性を考えた場合、コンテンツと関連性の高い外部サイトへのリンクを設置するのはよいことなのですが、ユーザーの離脱を促すこととなり、コンバージョン率の低下を招くリスクがあります。
そのため、離脱率が高い場合は、離脱導線を改善する必要があるのです。具体的な AB テストの方法としては、まず離脱につながっていそうな外部リンクを削除してみるといった方法が考えられます。
基本的なABテストのやり方

以下では、基本的なABテストのやり方を紹介していきます。ABテストを実施し、よりユーザーから愛されるコンテンツ作りを行っていきましょう。
仮説を設定する
まずはABテストを実施する箇所を決め、その上で仮説を設定する必要があります。ABテストを実施する場所を選択する際は、下記の3パターンから選ぶとよいでしょう。
- 作成して時間が経っている部分など改善後の効果が大きく出てきそうな箇所
- 力を入れているメインコンテンツなど他と比べて課題が多くなりそうな箇所
- 目のついたところからしらみつぶしに行う
ABテストを実施したい箇所を決めたら次は仮説を設定します。
たとえば、「このコンテンツを見に来るユーザーは、おそらく○○だと考えているから、この部分のキャッチコピーを少し変更してみよう」「狙いたいユーザー層から考えるに、このメールの誘導文ではコンバージョンに繋がらないから、誘導文を大幅に変更してみよう」といったものです。
ABテストを構成する要素を決める
次に、ABテストを構成する5つの要素を決めていきましょう。ABテストは、
- テスト対象となるユーザー群(テストを実施したいと思っているユーザー層)
⇒ペルソナやターゲティングしているユーザーから選定する
- テストを開始する日
⇒テストを開始する日と終了する日を決める
- 実施するテストの種類
⇒何に対してテストをするのかにより異なる
- でた結果が正しいか判断するための指標
⇒暫定的な結果を先に決めておく
- テスト続行の判断基準
⇒どういう結果が表れたら良いかをあからじめ決めておく
上記5つの要素から構成されます。
なお、テストを行う期間は「セール期間」や「季節のイベント」などは避け、テストの対象から外れるユーザーが少ない期間を選ぶようにしましょう。セール期間や季節のイベントのために訪れるユーザーは、テスト対象ではない可能性があります。
また、ABテストでは、ただ単に結果の良かった方ばかりを採用するだけでは、ユーザーへの理解を深めることが難しい場合もあるでしょう。なぜなら、出た結果が偶然そうなっただけである可能性があるためです。
したがって、ABテストを行う際は、表れた結果の中から、いかに学びを得られるかが重要になります。
たとえば、「Aの方がよかった」という結果だけを見るのではなく、「○○をしたからAの方が良くなった」というようにして学びを得るとよいです。
ツールに設定し結果データの蓄積を待つ
ABテストを構成するそれぞれの要素を確定させた後は、ABテストを行うためのツールに設定していきます。設定を行ったら、次は動作検証を行いましょう。動作検証に関しては下記を参考にしてみてください。
- テストしたい対象に対してテストできているか
- テストパターンがちゃんと確認できるか
- データを追跡できる準備が整っているか
これらの動作検証は極めて重要になります。なぜなら、動作に問題があった場合、テスト期間に投資した費用が全て無駄になるリスクがあるからです。
動作に問題がないことを確認したら、いよいよテストを開始させていきます。
結果データからテストの継続を判断する
最後に結果データを確認し、テストを続けるか否かを決定します。先ほど紹介した、ABテストを構成する1つの要素である「テスト続行の判断基準」をしっかり決めていることができれば、継続の判断を誤ることはありません。
テスト続行の基準は、「目標としていた数値が採取できたか否か」で決めるのが一般的です。とはいえ、判断基準は最初に決めたものですから、迷うこともあります。もし判断に迷った際は、下記の観点から複合的に判断するとよいです。
- まだ他にも良い結果を出しそうなパターンがいくつか考えられる
- 各テストパターンの結果が思ったより集まらなかった
テストを続けるかどうかは、コンテンツ提供者が最も頭を悩ませる部分でもあります。
ですが、考えることを放棄せず、優良なコンテンツづくりのためにしっかりと考え抜くようにしてみてください。しっかり考え抜くというのは、たとえば、ユーザー目線に立ち、客観的な視点を交えながらコンテンツの使いやすさを上げていくことです。
また、後述するツールの中には、テスト結果の信頼度を表してくれるものがあります。ここで言う信頼度とは、「統計的に信用できる数字であるかどうか」「偶然にその差が生じているだけではないか」といった点を、数値評価で可視化してくれるということです。
ABテストを正確で質の高いものにしたいという方は、次章で紹介するAB テストツールをご活用ください。
おすすめのABテストツール5選
正確な AB テストを行いたい場合、基本的にツールがないと結果の管理が難しいでしょう。AB テストツールの中には無料のものもありますので、自社に合ったものを選び活用してみてください。
1.Google オプティマイズ A/B テスト
Google オプティマイズ A/B テストの特徴は、下記の通りです。
- Googleアナリティクスと連動できる
- 無償プランが用意されているため手軽にはじめやすい
- 拡張機能を利用することで利便性が上がる
Google オプティマイズとは、 Google が提供するツールで、テストの作成から結果測定までを一括で行うことができます。また、Google Chrome のブラウザ上で拡張機能を利用すれば、より簡単にテストを作成することも可能です。
AB テストの無料ツールは少ないため、まずは試験的に AB テストを行いたいという方にもオススメできます。また、Googleアナリティクスと連動することで、これまでのデータを反映させながらテストをすることが可能です。
2.KAIZENPLATFORM
KAIZENPLATFORMの特徴は下記の通りです。
- (テスト結果を読み取るための)タグを埋め込むだけでABテスト可能
- ABテストが素早く実施できるため、PDCAサイクルが早く回せる
- 改善案の効果測定もできる
KAIZENPLATFORMを利用することで、改善案の効果測定を効率的に行うことができます。
たとえば、いくつかの改善案を同時に試すと、ユーザーの反応を数値で把握できるため、効果的なアイデアを採用しやすくなるのです。そのため、サイトを良い方向へ早く導いていきたい場合に、非常に役立つツールであるといえるでしょう。
3.Visual Website Optimizer
Visual Website Optimizerの特徴は下記の通りです。
- ヒートマップ解析など、実用的な解析機能が充実している
- ユーザー属性を細かく設定できる(的を絞りやすくなる)
- 無料サポートのついたプランが用意されている
通常、同一のURLでは、ABテストを行うことができません。
しかし、Visual Website Optimizerは、同一 URLでもABテストを行うことができます。ページに既定のタグを挿入するだけで、テストしたいコンテンツを自由自在に分析することが可能です。
Visual Website Optimizerの人気が高い理由の一つとして、使いやすい解析機能が充実しているが挙げられるでしょう。
たとえば、自社のウェブサイトを訪問したユーザーの動線や、マウスの動きなどを把握することができる「ヒートマップ解析」があります。ヒートマップ解析を用いることで、視覚的な改善点を見つけられるため、WEBサイトの構築に慣れていない人でも、簡単に改善策を練ることが可能です。
また、Visual Website Optimizerは、「Googleアナリティクス」「Adobe Analytics」と連動させることもできます。多角的に分析を行うことで、効率よくウェブサイトを改善できるでしょう。
4.Optimizely
Optimizelyの特徴は、下記の通りです。
- 目標をツール上で設定できるためテストを高速化できる
- 会社全体でテストの結果を管理共有できる
- 金額変更やアルゴリズム、パフォーマンス(処理・表示スピード)などのテストが可能
Optimizelyは、世界的にシェア率の高い AB テストツールです。Optimizelyが持つ独自のプログラム管理は、結果の管理共有がしやすくできているため、会社全体で生産性を上げられます。ただし、AB テストツールの中では価格がやや高い点がデメリットです。
5.SiTest
SiTestの特徴は下記の通りです。
- テストの実行条件が豊富
- 1ヶ月の無料トライアル期間がある
- 多変量テストも可能
- ランディングページのテストも可能
SiTestはAB テストの他にも「ヒートマップ機能」「EFO(Entry Form Optimizationを行うための機能」などを持つウェブサイト改善ツールです。「EFO(Entry Form Optimization」とは、エントリーフォーム最適化の略で、「ボタンの大きさ」「ページのレイアウト」などを改善していくことを指します。「土日のみ」「新規ユーザーのみにテスト」など、テストの質を上げるための条件設定を細かく行えるのが強みです。
レポート作成機能には AI が搭載されており、最初の一か月は無料で利用できます。国内外問わず導入数の多いツールです。
最後に
ABテストはコンテンツを作成していくうえで非常に重要な項目の一つです。「ABテストなしに優良なコンテンツは作れない」と言っても過言ではありません。
最初のうちは難しく感じることもありますが、テストを重ねていくうちに必ず慣れてきます。そして、慣れてくる頃には、良質なコンテンツの作り方を感覚的に理解できるようになっているでしょう。
ABテストにまだ慣れていないうちは、ツールを使うことで楽に検証することもできます。まずは無料ツールをダウンロードし、試験的に運用してみてはいかがでしょうか。