「アントレプレナーシップ」とは、起業家としての精神や起業家に求められる資質の意味で使われる言葉です。また、企業家としての特質も兼ね備えていることも指します。具体的な要素や育成するための教育、日本での現状についても見ていきましょう。
アントレプレナーシップとは何の意味?
「アントレプレナー」とは企業を運営する「企業家」を意味する言葉で、名詞化する「ship」が加わることで「企業家であること」を指します。日本では主に「起業家精神」や「企業家・起業家としての資質」を指すことが一般的です。
アントレプレナーシップが注目される理由
起業家が出現したのは今に始まったことではありません。昔から起業家や企業家は数多くいて、会社や組織をつくり上げてきました。しかし、近年はかつて以上にアントレプレナーシップが注目されており、アントレプレナーシップに着目したセミナーやスクールも少なくありません。
アントレプレナーシップが注目されている理由としては、次の3つが考えられるでしょう。
1.新たなビジネスへのニーズの高まり
人々のニーズが多様化していることで、新たなビジネスへのニーズも高まっています。しかし、新たなビジネスを生み出そうとする起業家がいなければ、人々のニーズに対して応えることはできません。アントレプレナーシップを持つ人が増えることで、各ニーズへの対応ができるようになるのです。
2.年功序列制度の崩壊
かつて日本では年功序列制度が企業に根付いていたため、能力がある人よりも勤続年数が長い人や年齢が高い人が高い役職に就くことが一般的でした。
しかし、能力がある人や実績を生み出している人が評価される仕組みが定着してきたことにより、より一層、独自性やチャレンジ精神、規格推進力が求められるようになってきています。受け身ではなく自発的に仕事に取り組むアントレプレナーシップが評価されるようになってきたともいえるでしょう。
3.グローバル市場での活躍を想定
アントレプレナーシップのある人材なら、国内だけにとどまることなく、グローバルな視点で新たなビジネスを開発し、世界の多様な価値観にも柔軟に対応していくことができます。
インターネットでつながることでより一層狭くなった世界では、国内の企業だけでなく世界中の企業がライバルです。今まで以上に国の違いに捉われない視点でビジネスを行っていくことが求められているため、アントレプレナーシップのある人材へのニーズは高いといえるでしょう。
アントレプレナーシップ教育とは何か?
アントレプレナーシップのある人材を育成する教育が「アントレプレナーシップ教育」です。アントレプレナーシップ教育では、ゼロから新たなビジネスを生み出せる人材、国や価値観の垣根を超えて積極的に挑戦できる人材を養成しています。
日本でもアントレプレナーシップ教育を実践している大学はありますが、欧米や中国と比べると決して多いとは言えないでしょう。また、アントレプレナーシップは社会に出る直前だけでなくもっと幼いときから育てることもできますが、日本では高校生以下を対象としたアントレプレナーシップ教育を実施している教育機関は多くはありません。
今後ますます高まるアントレプレナーシップのニーズとともに、教育機関や企業でアントレプレナーシップ教育が活発になると予想されるでしょう。
アントレプレナーに必要な資質
実際に「アントレプレナー」と呼ばれる人には、どのような資質が備わっているのでしょうか。アントレプレナーに必要な3つの資質について見ていきましょう。
無から有を生み出す想像力
アントレプレナーは、新しい価値観やビジネスを生み出す人材です。すでに敷かれたレールを歩むのではなく、何もない荒野を開拓し、道路をつくり、進んでいきます。無から有を生み出すためには、過去の常識に縛られない豊かな想像力が必要です。
つまり、アントレプレナーには豊かな想像力が不可欠といえるでしょう。過去の常識に縛られないからといって、過去の例を参考にしないわけではありません。過去を踏まえたうえで現在のニーズや将来的に起こるであろうニーズを敏感に察知して新たな商品やサービスの開発につなげていきます。
もちろん、新たなビジネスを生み出すときには、失敗がつきものです。失敗したからといって挑戦を止めてしまうのでは、本当の意味で新たなものを生み出すことはできません。アントレプレナーは、無から有を生み出すときに失敗はつきものということを理解し、何度失敗してもくじけず、前に進む原動力に変えていける人ともいえるでしょう。
チームをまとめるマネジメントスキル
新しいビジネスを生み出すということは、単に新しい考えを思いつくだけでなく、具体的なビジネスとして描き、具現化することです。ビジネスが大規模であればあるほど関わる人も多くなります。
つまり、アントレプレナーには、チームをまとめるマネジメントスキルも求められるといえるでしょう。人材を適した場所に配置し、具体的かつ効率の良い指示を出し、皆がやりがいを持って働けるように配慮するならば、そのアントレプレナーは単に仕事を始める「起業家」ではなく運営も行う「企業家」であると評することができます。
尽きることのない向上心・向学心
一つのサービスを生み出すことがアントレプレナーではありません。アントレプレナーは常に新たな価値観を生み出し、さらに良いアイデアを求めて自分をブラッシュアップさせていきます。より優れた企業人になるためには、現在の状態に満足するのではなく、いつまでも学び続けることが必要です。尽きることがない向上心・向学心を持つこともアントレプレナーに不可欠な要素といえるでしょう。
最後に
アントレプレナーは新たな価値観やビジネスを生み出す起業家精神に満ちた人のことを指す言葉です。アントレプレナーには無から有を生み出す想像力や人々をまとめるマネジメントスキル、そして、現状に満足せずに自分自身をブラッシュアップさせる向上心・向学心といった資質が備わっています。
生まれつきアントレプレナーとしての資質が備わっている人もいますが、アントレプレナーシップ教育を受けることや自分自身で意識することでアントレプレナーとして自分を成長させることは可能です。ぜひご自身の可能性を伸ばすためにも、アントレプレナーとしての資質を身につけていきましょう。