セールスフォース・ドットコムとはどのような企業なのか
最近、電車の広告やテレビCMでもますます目にする機会が増えている「Salesforce(セールスフォース)」。
・知り合いの会社が導入したらしい
・隣の部署が検討している
・気になるセミナーを開催していた
様々な話を聞きますが、一体どのようなツールなのでしょうか。
今回の記事では、令和のビジネスにおいて避けては通れない、革新的クラウドサービス企業「Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)」にまつわる疑問について解説していきます。
*以下、サービスの情報、価格は2020年9月26日時点を参考に記載しております。
世界の営業活動を変えた「セールスフォース」とは何か?
そもそも「セールスフォース(あるいは、セールスフォースオートメーション)」とは、簡単に説明すると「営業活動を、効率よく自動化しよう」という概念のことを指しています。
かつては、そして今現在も、多くの企業が営業活動による顧客獲得に苦労しています。
無限に続く顧客リストへのテレアポ。オフィスビルの屋上から地上まで、入っているすべてのテナントに飛び込み営業...。
冷たくあしらわれるならまだ良いほうで、電話口で「お待ちください」と言われたきり10分も20分も放っておかれたり、ひどいときには罵声を浴びせられたり、出入り禁止にされることもあるでしょう。
また、電話代や移動費・出張費も毎月必ずかかるとなれば、積みあがった際の影響度はバカになりません。
これは一例ですが、やる気のある新卒社員が入社した次の月、電話代がいつもの2倍かかっていたことがありました。新卒社員が、テレアポをがんばってくれたためです。ですが新卒ゆえ顧客獲得ノウハウがないため、当然ながら成果は2倍にはなっていません。
似たような例で、関連会社への根回しが得意な役員が奔走した月は、出張費と接待費が大変なことになっていた、ということも……。
テレアポ費や出張費ならまだしも、社員の疲弊や心の消耗までも含めると、営業活動にかかるコストは膨大なものです。
旧来の企業は、日本でも海外でも例外なく、このようなコストを「必要経費だ」として顧みてきませんでした。ですが、セールスフォースという仕組みは「本当にそうなのか?」と、疑問を投げかけたのです。
顧客獲得ができるか否か、ある意味では「賭け」であるテレアポや飛び込み営業・ルート営業から脱却する。そして、確実に、効率よく、しかも社員間の成果のバラつきも抑えた、新しい営業活動の仕組みを創る。
セールスフォースという概念は、まさにそれ「以前」と「以後」とで、世界中の営業活動を大きく変えてしまった考え方なのです。
Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)とは
Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)は、マーク・ラッセル・ベニオフ(Marc Russell Benioff)氏が1999年にアメリカはサンフランシスコで創業したインターネットカンパニー。現在ではSaaS(Software as a Service)として知られる、Web上で動く業務管理ツールを提供するパイオニア的な企業です。
当初はBtoBがメインでしたが、業務に関連する自動化・効率化ツールを提供している各社を買収し拡大。
同時に技術力も企業規模も増強していき、現在ではBtoBやBtoCだけでなく、さまざまなサービスプラットフォームを提供しています。
SaaSだけでなくPaaS(Platform as a Service)という考え方も推し進めており、フォーブズ誌が選出している「世界で最も革新的な企業」のランキングでは幾度も1位に選ばれ、世界的にセールスフォースが浸透した現在ですら、上位選出の常連となっています。
まさにSalesforce.comは、プラットフォームを創造し、世界のビジネスに革新を起こした企業といえるでしょう。
Salesforce.comの主な製品について
<代表的な製品リスト>
・Salesforfe CPQ(セールスフォース シーピーキュー)
・Sales Cloud Einstein(セールスクラウド アインシュタイン)
・Einstein Analytics(アインシュタイン アナリティクス)
買収や開発によって、Salesforce.comは数多くのサービス・プラットフォームを提供しています。
代表的なサービスをいくつかご紹介しましょう。
・Sales Cloud(セールスクラウド)
BtoB向けの顧客獲得サービス。
BtoB商材における顧客獲得のデマンドジェネレーションにおいて、各段階を補強するツール。見込み客の発掘や見込み客の成約率アップに効果を発揮する。
・Pardot(パードット)
BtoB向けの顧客管理ツールで、マーケティングオートメーション(MA)ツールの代表格。
・Salesforfe CPQ(セールスフォース シーピーキュー)
見積書や提案書を素早く作成するツール。
・Sales Cloud Einstein(セールスクラウド アインシュタイン)
BtoB向けのデータ分析ツール。インテリジェンス・データ構築のために使われ、AIを活用していることも特徴の一つ。
・Service Cloud(サービスクラウド)
カスタマーサービスの効率化ツール。電話対応や実際の顧客対応までを管理できる。
・Marketing Cloud(マーケティングクラウド)
BtoC向けのCRM構築や継続的なマーケティングを支援するツール。マーケティングオートメーション(MA)ツールの一種で、広告との連携も可能。
・Commerce Cloud(コマースクラウド)
Eコマースの管理ツール。BtoC向け、BtoB向けのどちらにもカスタマイズできる点が魅力。
・Einstein Analytics(アインシュタイン アナリティクス)
主にBtoC向けのCRMにおけるデータ分析ツール。こちらもAIを活用している点が特徴。
SFA(セールスフォースオートメーション)の役割と利用するメリット
既存の営業活動には、いくつも「効率が悪い問題点」がありました。
従来型の営業活動における問題点
・人的コストがかかる
営業社員が自社オフィスに滞在して、何時間もかけて電話をかけて応対したり、テレアポを行わなければならない。契約済の営業先に要件を伺うために出向いたり、飛び込み営業をかけたりするため、実際に先方の企業社屋を訪問しなければならないなどの問題があります。
・費用的コストがかかる
電話代、移動費、場合によっては接待費なども必要となります。
・教育コストがかかる
いわゆる一人前の営業になるまでに、営業先に上司と同伴で訪問して挨拶したり、受付を突破するための営業トークをロールプレイしたりしなければなりません。先輩営業が蓄えてきたノウハウを吸収し、営業社員として戦力になるために時間がかかるのです。
・信頼を失う危険性がある
顧客情報を人が手動で管理する以上、どうしてもミスが生まれてしまいます。同じ訪問先に誤って何度も訪問してしまったり、送る資料を間違えてしまったりも。上手く管理できてないことが顧客へ伝わってしまうと、不信感と不満を生んでしまいます。
上記の問題点はすべて、人間が、人力で行っていることが大きな原因。そのためヒューマンエラーも起こりうるうえ、メンバーの心や体に負担がかかってしまうこともあります。
そこで、「自動化できることは、すべて自動で、機械にやってもらおう」という考え方を、営業活動にも取り入れたSFA(セールスフォースオートメーション)が生まれました。
SFAの役割は、簡単に言うと「機械で代用できることを、人の代わりに間違いなくやってもらうこと」。
そしてその最大のメリットは「あらゆる人的・時間的・費用的コストを、不必要に浪費しない」ということにあります。
課題を解決するべく生まれた営業管理ツールができること
営業管理ツールができること、その最大の特徴は以下の3点。
・膨大な顧客データを管理、分析できる。
・社内で必要な人は誰でもアクセスできるため、データの共有漏れがなくなる。
・顧客ごとに効果的なアプローチを、データに基づいて行える。
「営業管理ツール」と呼ぶとき、広義にはビジネスで使えるオートメーションツール全般を指しますが、狭義にはSFAのみを示すこともあります。
上記3点に加えて、ツールの種類別に定義とできることもご紹介します。
・SFA(セールスフォースオートメーション)ツール
営業メンバーを支援するツール。ツールが目指すゴールは、営業メンバーが顧客と契約を結ぶこと。
見込み顧客に対してどのようなアプローチをしてきたのか、次回アクションはなんなのか、といった情報をデータを元に提示。
さらに、データを元にしたアクションを行った結果として、顧客の反応がどうであったかも加味することで、契約成立への最短距離のノウハウを蓄積していく。
・MA(マーケティングオートメーション)ツール
こちらもBtoBの営業活動を支援するものだが、より個人の活動にフォーカスされたもの。
顧客候補企業の担当者へ宣伝のEメールを送って、その反応がどうだったか。ある企業(のドメイン)は、何度自社のホームページを訪れてくれたので、そろそろ商品提案の電話をしたほうがいいだろう。
そういった、担当単位に絞ってパーソナライズしたマーケティングが可能。
・CCCM(クロスチャネルキャンペーンマネジメント)ツール
こちらは、MAのBtoC版。ある個人へ送った宣伝メールへの反応はどうだったか。この前購入してもらった商品の反応はどうか。そういった情報を蓄積し、より良い宣伝メールを送れるようになるなど、個人にフォーカスしたone-to-oneのパーソナライズマーケティングを行う。
場合によっては、MAと同一に扱っている資料もある。
・CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)ツール
顧客との継続的な関係を築くためのツール。購入後の調子はどうか。新しい商品を購入してくれるか。購入者キャンペーンの案内を送ったが、反応はどうか。次の購入では何を欲しがるだろうか。そういった関係性を維持する、リテンション施策の一つ。
LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)を高めるために導入する。
Q:各種ツールの導入判断はいつ・どのように行えばいいでしょうか?
ところで、こうした各種ツールの導入判断はいつ・どのように行えばいいでしょうか。
営業管理でもマーケティングでも、それなりに費用がかかりますので、創業したてのベンチャーでいきなり導入することはおすすめしません。関数やGAS(Google Apps Script)を組んだスプレッドシートやなどから始めましょう。
社内にエンジニアがいれば、Googleなどが提供している無料ツールなどを各種組み合わせて、費用をかけずに便利な環境構築を行なえるケースもあります。ただし、拡大を望む企業であれば、後のために情報収集をしておくことは有意義と言えるでしょう。
比較的規模の大きい企業であれば導入インパクトは高まりますが、それでも「導入による費用対効果」を算出することは必須です。また、現場導入してワークするかどうかのテストを行った上で検討するべきです。
業界・事業構造ごとにワークフローや改善度合いも大きく違ってきますので、御社と同一条件の企業での改善効果を、各事業者(およびセールスフォース)からヒアリングしましょう。その際には、なるべく細かくKPI構造も共有し、納得感の高い数値を得ることが必須です。
次段では、SFAを導入することのメリットをお伝えします。
メリット①顧客獲得の効率化を図ることができる
SFAは、データに基づいて顧客を段階別に管理できます。
A社は「見込み客」の段階。次のアクションは、資料提供などで自社製品を知ってもらうこと。資料送付か電話での一次商談を行う。
B社は、ほとんど購入に近い。自社の部長クラスが実訪問して説得すれば、購入してくれそう。
C社は、興味なさそうなので、しばらくは放っておく。
と、いった具合に、細かい対応を何百社以上も管理できます。
一斉に訪問したり、営業上級者の“勘”に頼って営業をかける、というようなことがないため、顧客獲得の効率が各段に良くなります。
メリット②入力作業の間違いや手間を削減することができる
メリット①で言及したような、細やかな顧客対応を、本当はどの企業も行いたいはずなのです。2社や3社……50社程度までなら、スプレッドシートやエクセルで管理できるかもしれません。ですが企業規模が大きくなってきたり、新規顧客を多く獲得しなければならなかったりすると、情報が膨大すぎるため、そんな時間もなければ、正確に管理することもできなくなってくるのです。
その点SFAであれば、ツール側が情報を整理してくれるため、膨大な情報でも間違いなく管理できます。情報が増えることによるヒューマンエラーのリスクも、限りなく小さくできるでしょう。少なくとも、営業メンバーが手動でエクセル管理していたときとは、比べるべくもないはずです。
メリット③メンバー間の情報格差を埋めることができる
SFAを使った営業は、旧来の「契約は、足と根性で獲得する!」という営業方法ではありません。営業メンバー全員が、“熟練の営業の勘”と同等か、それ以上の情報(共有された顧客データ)を用いて営業活動ができます。
スタート地点を同じにできるため、個人の能力差を限りなく薄め、メンバー間の“勘”や“言語化できないコツ”のようなものに影響されにくくなります。
できる人は、よりできるように。今までできなかった人も、有用な戦力になる可能性がある、というわけです。
メリット④ツール連携機能によってさらなる効率化も
Salesforce.comが提供しているツールの多くは、相互連携が可能です。
例えば、営業活動を支援するタイプのツールと顧客管理を行うタイプのツールを連携させれば、より細やかに、獲得率が高いリストを作って営業メンバーに提供できるようになるでしょう。
上記は一例に過ぎません。このようなツール間の連携を行うことで、より高い成果を上げることも可能です。
メリット⑤withコロナ以降の「新しい仕事の様式」に合っている
「新しい働き方」が提唱され、図らずも働き方改革が大きく進みました。「リモート出社しか、経験したことがない新卒社員」も、今後は珍しくなくなっていくでしょう。
対面での飛び込み営業や、相手オフィスの電話を目がけて自社オフィスから電話をかける、というような行為が、あまりポジティブに見られなくなっていく可能性が高いです。自社は昔ながらの社屋に出社するスタイルを守っていたとしても、クライアント企業や顧客候補も、ずっとそのままである、とは限りません。
そして日本では、2018年に経済産業省が、世界に遅れながらもDX(デジタルトランスフォーメーション)のガイドラインを発表しました。ますますデジタル化やリモート化が推進され、必要がないなら出社しない、会わない、という風潮が加速していくことでしょう。
オートメーションによる営業活動のデジタル化・効率化は、このような時代の流れを鑑みると、必然といえるかもしれません。
セールスフォースを現場に導入するにあたって起こる課題も
「最強の一手」のようにも思えるSFA。ですがこれらを導入するには、一定のハードルがあります。どのような問題があるのか、簡単に見ていきましょう。
課題①:必ずしも一気に成果が上がる訳ではない
SFAを導入したからといって、すぐに売り上げが劇的にアップするかというと、筆者の経験上、そのようなことはありません。
SFAの導入は、どちらかというと「裏側の整備」に近い感覚です。これまで散らかっていた状態で営業をしていて、個人プレーや力技で契約を獲得していた……。それを整理して、より正しい形に近づける、というようなイメージです。
売り込みに来たSFAの営業さんの話に期待を膨らませすぎて、あまりにも地味な効果にガッカリ……ということから、契約解除してしまう例もあります。
課題②:営業活動自体が「すべて楽」になるわけではない
自動化やオートメーション、というと、「人手が浮いて楽になる」と考えがち。ですが現実は、その逆です。
SFAを導入すると、情報を整理したり仮説を立てたり検証したり、そしてそれを実証したり……やることは、むしろ増えます。大変になってしまうのです。
SFAを導入することで、今までやっていた、契約確度が低い訪問先に手当たり次第に突撃したり、エクセルシートをちまちま更新したり……そういった「やらなくてもいいこと」を、やらなくて良くなるだけ。
営業が本当に行うべきであった「どのような顧客が契約確度が高いのか考察する」だとか「トーク力を磨いて契約確度の高い顧客を、確実に契約に導く」といった活動の比重は、むしろ重くなるのです。
人がやらなくてもいいことを、機械がやってくれる。その代わり、人は「人がやるべきこと=考えなければならない、難しい仕事」をやらなければいけなくなるのです。
課題③:管理画面はそれなりに煩雑
顧客管理のためのパラメータは多岐にわたります。それも当然で、これまで熟練の営業が“勘”で管理していた情報を、新卒1年目の社員でもわかるように、細かく言語化して数値で確認できるわけです。
それが利点でもあるのですが、逆に管理画面が煩雑になりがちで、覚えるのに時間がかかってしまうことがよくあります。
課題④:導入時に用語理解を深めておく必要も
これは特にSalesforce.comのツールで多く見られます。同社は海外の企業のため、ツールは本来、すべて英語です。それを日本語訳しているのですが、少し訳にクセがあるため、用語に慣れる必要があります。
また、英語から日本語への訳のクセだけではなく、Salesforce.comの社内用語のようなモノがあり、これがまたクセモノ。本来の英語の意味を直訳しただけでは意味不明で、実は別の言葉を表す、Salesforce.comが独自に設定した言葉だった、というようなことがあります。
(データエクステンションなど……。実際に触れてみると違和感を抱くと思います。)
覚えれば問題ないのですが、覚えるまでは苦労しました。
課題⑤:導入金額はそれなりに高額である
プランにもよるのですが、Salesforce.comの場合は導入の初期費用に〇,000万円規模で掛かり、毎月のランニングコストもさらに必要、ということもあります。
これはどうしようもない問題ですが、導入コストがネックで諦めたという話もよく耳にします。
課題⑥:社員(特に中堅以上)からの反発があるケースも
何かのやり方を変える際、少なからず社内から反発があるのは当然でしょう。
ですが、「新卒1年目でも、熟練営業と同じような営業活動が可能になる」というような概要だけ聞くと、自分の営業スキルが陳腐化するんじゃないか、という懸念をもった中堅以上の社員が一斉に反発することがあります。
また、部門長が「汗水流して、足で契約をとってこそ一人前だ!」というような古い考えをもっていると、最後の決済でOKがもらえないこともあります。
課題⑦:最初にやるべきToDoを想起しづらい
いざ導入したはいいものの、入力項目は多く、見るべきデータは膨大で、できることもたくさんある。選択肢に押しつぶされ、何から手をつけたらいいか、わからなくなってしまうことがあります。
それもそのはず。かつては、「足で営業先を回る」「電話をかける」くらいしか選択肢がなかったので、迷うことはありませんでした。ですが膨大な選択肢と営業手法を前にすると、何を選択したらいいか、わからなくなってしまうのです。
セールスフォースを現場に導入するにあたって起こる課題の解決方法
さて、前項ではSFA導入に関する問題点を見てきました。さまざまな課題はあるものの、それでもやはり、SFAを導入することは利益のほうが多いと考えています。
以下では、先ほどの課題を解決する方法や考え方をお伝えします。
課題①の解決方法
これは、仕方がありません。ゆっくりと、しかし確実に成果が上がっていくのがSFAの特徴です。傾いてしまった、明日にでも潰れそうな会社を救う最強の一手ではありません。
SFAは、継続的に成長を続けるための最強の一手なのです。
今、コストをかけて導入し、後々成果を回収しつづけるか。
それとも、導入コストを見送って、細かい「人力の根性営業」によるランニングコストをかけつづけるか。
その選択は、企業の戦略次第。
すぐに成果が上がらないが、徐々に回収できるもの、という意識をもつことをオススメします。また、新卒社員などで営業部を増強する際に、改めてSFAの力を実感できるはずです。それまで待ってみて、営業スキルの一般化に成功したか、という点でSFAを評価して継続可否を決めるのも手です。
また、顧客数が少ないうちはあえて導入しない、ということも考えてみてください。SFAは、膨大に膨れ上がった顧客データを間違いなく管理し、データ分析し、成果につなげる、というツール。顧客数が少なければデータ分析の精度も低く、そもそも導入しなくても管理はできているはずです。その状態で導入したなら、どんなに待ってみても成果が上がらないのは当たり前なのですから。
課題②の解決方法
こちらも、仕方がありません。
今までは、簡単だけど効果がなかった、無意味な飛び込みや電話営業を行っていました。それをやる代わりに、効果的だが熟考しなければならない、本当の営業活動を行う必要があります。
それは、心を殺して電話をかけ続けるより、足が痛いのをガマンしてムダに企業訪問を続けるより、はるかに大変です。しかし、契約数は変わってきます。
機械でもできたような仕事を今までやっていたので、これからは人がやるべき仕事をやる、と割り切る必要があるでしょう。
課題③④の解決方法
こちらは、意外と最初だけです。毎日見ていると、慣れます。
日本語化して少しクセがある日本語画面を操作するより、英語版のまま使うこともオススメ。それほど難しい英語ではないので、英語の画面のままでも十分操作できます。
特にマーケティング用語は、普段のビジネス現場でも日本語化されきっていないので、カタカナ語を使うような感覚で英語版を使うことも可能です。
一方で、Salesforce.comが使っている独自用語だけは意識的に慣れていくことが必要です。「自社内で使っている独自用語」がある方もいると思います。部署内で通じるスラングのようなものもあったりするでしょう。それと大して変わらない感覚で覚えられるので、意識的に覚えるしかない、と考えておきましょう。
個人的には、ですが、この独自用語の習得に一番苦労しました。
課題⑤の解決方法
一気に大型プランを導入するのではなく、可能な費用の範囲でスモールスタートするのもいいでしょう。Salesforce.comには、導入に際してだけでなく導入後も伴走して、自社の成果と向き合ってくれるコンサルタントが籍を置いています。
また、ツールにもよりますが大小さまざまなカスタマイズが可能な点もポイント。不要な機能をオミットして安く抑えてもらったり、逆に機能を追加してもらって費用対効果を上げたりといったことができます。小さく導入して成果次第で範囲を広げていくこともできるし、成果が出なければそのまま止めてしまうこともできます。
SFAを導入できないか、と考えた時点で、初期費用とランニングコスト、どちらにどの程度割けるかを概算しておき、相談してみるのが良いでしょう。
課題⑥の解決方法
営業補佐がやるような煩雑なデータ管理から解放され、営業活動に専念したい、というのは多くの営業メンバーの悲願でもあります。特に、先輩社員のデータ管理まで任され、疑似的な営業補佐までも担わされているような新卒1~2年目社員にとっては、願ってもない機会。一般的な営業メンバーの説得は、難しくないはずです。
問題は、自分の営業スキルが陳腐化して、自分の価値が下がってしまうことを恐れる中堅以上の営業メンバーを説得することです。
こちらの説得も、実は簡単。なぜなら、中堅以上の社員の営業スキルはSFA導入後も変わらずに重要なものだからです。
何度か話に出ていますが、SFAなどの自動化・オートメーションツールの導入は、「人がやらなくてもいいことは、機械に任せる。人は、人がやるべき活動に従事する」ためのモノ。
ここで言う「人がやるべき活動」というのは、あの顧客は次の段階に進んだとか、どんなデータをもっている顧客は契約確度が高いかとか、どんな状態の顧客にどのようなアプローチをすれば、契約確度を上げていけるのか、とか。そういった仮説を立て、検証していくことです。
これらの顧客動向は、まさに中堅以上の社員がもっている、重要な経験がものを言います。
中堅以上の社員には、より営業の本質である仕事を任せることになる、と伝えることで説得できることが多いでしょう。
☆課題⑦の解決方法
この問題が起こってしまう最大の原因は、「SFAをなんとなく導入した」こと。
本来、何か解決したい営業課題があるから、SFAを導入するのです。
顧客データが多すぎる。間違って同じ顧客に何度も訪問してしまった。契約してくれそうだと報告を受けていた顧客と契約できなかった。そんなさまざまな問題を解決する手段の一つが、SFAの導入なのです。だから、導入した時点で何かやりたいことがあったはずです。
もし「上司の大号令で、なんとなく導入してしまった」とか「言っていることはわかるけど、実際にどう手を動かしたらいいかわからない」というような場合は、どうすればいいのでしょうか。
そんなときでも、大丈夫。必ず、営業メンバーは潜在的な問題を抱えています。じっくりヒアリングし、閑散期などに少しずつ改善していきましょう。
前にも少しお伝えしましたが、SFAの導入は、売り上げを一気に上げるためのものではありません。SFAは、継続的に成長していくためのツールなのです。
最後に
SFAとは、一時期流行して最近は鳴りを潜めている、ブームが終わった言葉ではありません。社会で一般化したため特別に騒がれなくなった、「一般的な施策の一つ」なのです。
事例を探れば、大企業から中小企業まで数多くの企業が導入しており、社会に浸透してきていることがわかります。
ここで紹介した営業課題に少しでもピンと来た方は、一度調べてみることをオススメします。
Q.各種ツールの導入判断はいつ・どのように行えばいいでしょうか?
A.営業管理でもマーケティングでも、それなりに費用がかかりますので、創業したてのベンチャーでいきなり導入することはおすすめしません。関数やGAS(Google Apps Script)を組んだスプレッドシートやなどから始めましょう。社内にエンジニアがいれば、Googleなどが提供している無料ツールなどを各種組み合わせて、費用をかけずに便利な環境構築を行なえるケースもあります。ただし、拡大を望む企業であれば、後のために情報収集をしておくことは有意義と言えるでしょう。
比較的規模の大きい企業であれば導入インパクトは高まりますが、それでも「導入による費用対効果」を算出することは必須です。また、現場導入してワークするかどうかのテストを行った上で検討するべきです。
業界・事業構造ごとにワークフローや改善度合いも大きく違ってきますので、御社と同一条件の企業での改善効果を、各事業者(およびセールスフォース)からヒアリングしましょう。その際には、なるべく細かくKPI構造も共有し、納得感の高い数値を得ることが必須です。