スタートアップ企業は独自のアイデアと共に創設した、急激に成長する組織のことです。どのような企業なのか、日本での具体例を紹介しながら解説します。また、スタートアップ企業で働くメリットとデメリットなどについても見ていきましょう。
スタートアップ企業とはどんな企業なのか
スタートアップ企業とは、独自のアイデアと共に急速に短い期間で成長する可能性のある創業したばかりの新しい企業のことです。スタートアップが「新しい会社」の意味で使われることもあります。
言葉の発祥はアメリカ
もともとアメリカのシリコンバレーで、スタートアップ企業は誕生しました。シリコンバレーはIT企業激戦区で、GoogleやFacebookなど世界的にも有名な企業の多くもシリコンバレーで誕生しています。近年では、Uber、Slack、ZOOMなどもシリコンバレー発のスタートアップ企業として誕生し、急成長を遂げました。
スタートアップ企業の特徴とは
スタートアップ企業の大きな特徴としては、一般企業と違い爆発的に急成長することが挙げられます。これまでにない新しいビジネスモデルや商品、サービスなどを売りに、イノベーションを起こす可能性があるといえるでしょう。
さらに社員がこの人の下で働きたいと思える、カリスマ性のある創設者がいることも多いため、やる気のある優秀な人材が集まり、また、社外からも高い評価を受けて資金調達しやすいという特徴があります。そのため、短期間での上場や大企業とのM&Aが実現し、投資家にとっても魅力的です。
スタートアップ企業の特徴
- 新しいビジネスモデル
- 創業したばかりの新しい会社
- 短い期間で急成長
- 短期間で上場や大企業とのM&Aが実現することが多い
- カリスマ性のある創設者がいることが多い
日本のスタートアップ企業の例
数多くあるスタートアップ企業の中でも、日本で成功している企業例を紹介します。
- メルカリ(フリマアプリ)
2013年創設のフリマアプリの会社で、創業からわずか5年で上場。上場した当日の終値ベースでの時価総額は、7,000億円を超えました。
- スマートニュース(情報アプリ)
2012年創設のスマートフォン向けニュースアプリの会社で、2019年時点での推計企業価値は1128億円。世界で5,000万以上ダウンロードされています。
- freee(クラウド会計ソフトウェア)
2012年創設の自動のクラウド会計ソフトウェアの会社で、2019年時点での推計企業価値は679億円。2019年12月17日に上場し、初日の株式時価総額は1,259億円を記録しました。
- ビズリーチ(人材サービス)
2007年創設の会員制転職サイトの運営会社で、2019年時点での推計企業価値は357億円。ビズリーチをグループ会社としているビジョナルは2022年4月22日に上場予定です。
スタートアップ企業とベンチャー企業の違いとは
スタートアップ企業とベンチャー企業は似ている部分も多く、混同されがちです。また、ベンチャー企業の中でも創設から3年以内の企業をスタートアップ企業と呼ぶこともあるので、新設企業に関してはスタートアップ企業=ベンチャー企業としても間違ってはいません。しかし、厳密には異なる概念です。スタートアップ企業とベンチャー企業の主な違いについて見ていきましょう。
定義の違い
スタートアップ企業とは、「独自のアイデアと共に急速に短い期間で成長する可能性のある創業したばかりの新しい企業」のことです。一方、ベンチャー企業は「既存ビジネスを元に展開して中長期的に安定した収益と課題解決を目指す中小企業」を指します。
「スタートアップ企業」はアメリカ生まれの言葉ですが、「ベンチャー企業」は英語のventureが元に作られた日本生まれの和製英語です。
ビジネスモデルの違い
スタートアップ企業は新しいビジネスモデルを作る企業です。日本のスタートアップ企業の例として、これまでにないビジネスモデルでEコマースを一般的にした楽天があります。
一方、ベンチャー企業は、ある程度の成功実績がある既存ビジネスをベースにスケールの拡大や収益アップを目指す企業です。日本のベンチャーの例として、既存のソフト流通や通信事業を全国的に拡大させたソフトバンクがあります。
目標設定の違い
比較的短い期間での上場や事業売却などのイグジット(投資回収)を目指すことがスタートアップ企業の特徴です。早期に投資回収することで、創業者や出資者へ早期に利益を還元します。また、投資回収が目的となっている分、資金を回収した後、創業者は企業運営から離れることも少なくありません。
一方、ベンチャー企業は早期イグジットを目指すこともありますが、中期から長期の目標でゆっくりと安定した収益を目指すことも多いです。また、投資回収ではなく事業継続に重きを置いていることが多いため、資金回収後も創業者はそのまま企業運営に関わり続ける傾向にあります。
スタートアップ企業のメリットとは
近年急成長を遂げてきたスタートアップ企業。成長の裏にはスタートアップ企業ならではのメリットがあります。主なメリットについて見ていきましょう。
仕事にやりがいを感じられる
スタートアップ企業は少人数での組織編成がほとんどなので、1人が任される仕事の範囲が広めです。一般的な企業のように役職や部署が細かく分けられていて、担当する業務が限られているわけではありません。組織が小規模だからこそ社員は幅広い業務を担当することになり、自分が会社と深くかかわっていることを実感できるため、やりがいを感じやすいでしょう。
会社や上司との距離が近い
大企業では、一般社員と上層部には距離感があり、特に新入社員ほど接点を持つことはあまりないでしょう。一方、スタートアップ企業では入社時から、社長や幹部などの上層部と距離が近いことが多く、意見交換などコミュニケーションを取る機会も多い傾向です。一般社員や新入社員の意見やアイデアが採用される機会もあるため、モチベーションが上がり、やりがいを感じられます。
自分の成長に繋がる
スタートアップ企業では社員一人ひとりに任される業務が幅広いため、新しい経験が増えて自分の成長に繋がります。慣れない業務については自己学習が必要となり、必然的に学びの機会も増えるでしょう。また、小規模な組織であればあるほど、会社全体の動きも把握しやすくなり、会社を俯瞰的に見る能力も身につきます。
スタートアップ企業のデメリットとは
ここからは、スタートアップ企業で働くことのデメリットを解説します。
安定していない
創業したばかりのスタートアップ企業は、社員一人にかかる業務量が大きくなることがあり、労働時間が長くなる可能性があります。また、社員に対する制度が完成されていないときには、福利厚生が整っていないこともあるでしょう。企業としての利益も安定していないので、場合によっては給料面に影響が出ることもあるかもしれません。
しかし、起業直後の環境で働くことには多くの気付きや、そのときにしか得られない経験もあります。歴史のある企業では得られない経験も「学びの機会」と捉えることができる方にとっては、スタートアップ企業は良い環境と言えるでしょう。
キャリアアップが難しい
スタートアップ企業では新しいビジネスモデルを特徴としているため、既存のビジネスに役立つスキルが身につかない可能性があり、他企業への転職が難しいこともあります。転職してキャリアップを狙っている人にとって、スタートアップを足掛けにするのはおすすめはできないでしょう。
しかし、起業したい方にとってはノウハウを学べる優れた環境です。将来的に独立を考えている方は、スタートアップ企業で働くことがプラスになるでしょう。
最後に
新しいビジネスモデルに基づいて仕事を行うスタートアップ企業は、成長のスピードが速く、社員一人ひとりにも幅広い業務と自己学習が求められることが多い環境です。その分、社員も成長しやすく、また、起業のノウハウを学べるというメリットもあります。就職先や転職先の候補としても検討してみてください。