バリューチェーンとは?実例も紹介

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モノを販売あるいは製造することだけが事業ではありません。バリューチェーンとは事業を「価値の連鎖」と捉える考え方で、一つひとつの過程に注目して分析し、事業戦略の構築に応用していきます。バリューチェーンとは何か実例を踏まえて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次
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バリューチェーンとは?わかりやすく解説

バリューチェーンとは価値の連鎖を意味する英語です。例えば優れた商品を販売することだけが、消費者にとって価値になるのではありません。

上質で環境に配慮された原料を選ぶことや、衛生的な工場で商品を製造すること、清潔な売り場で親切な販売員が商品を販売すること、また、返品等のクレームに対しても適切に対応することなどのそれぞれが価値を産み、つながってさらに大きな価値になります。

このように各過程において生じる価値が累積するということに注目すれば、経営戦略や事業戦略を構築する上での指針を立てやすくなるでしょう。商品自体が優れていても、販売体制や製造環境を改善できるかもしれません。また、顧客サービスを向上させることで、商品価値をさらに高められることもあります。

元々は製造業の分析のために考案された手法

バリューチェーンは、元々は製造業における分析手法として提案された考え方です。製造業の活動を購買と製造、物流、販売、サービスの5つに分け、それぞれの過程においてどのような付加価値が生まれたのか分析していきます。

しかし、活動の種類を調整すれば、他の業種でも応用可能です。例えばサービス業ならば、企画と営業、サービスの提供、対価の受け取り、顧客サポートに活動を分けて、それぞれの過程における付加価値を分析することができるでしょう。

サプライチェーンとは何か?違いを解説

サプライチェーンとは、企業活動をモノに注目して分けて分析する手法です。例えば原料から製品になるまでには、原料の仕入れから加工、製造、卸売、小売と様々な場所を通ります。供給されるまでの過程に注目し、それぞれの段階を分析していくことがサプライチェーン、つまり供給連鎖です。

商品やサービスはバリュー(価値)だけでできているのではありません。実際のモノ、あるいはサービスといったサプライ(供給)によってもできているため、バリューチェーンで分析する際には、併せてサプライチェーンによる分析もすることができるでしょう。

バリューチェーン分析の意味と意義

バリューチェーンの考え方を使って分析をすることで、競合他社と比較したときの自社の強みや弱点が分かりやすくなります。例えば、商品としての価値に大差はないけれど、原材料へのこだわりや環境への配慮が競合他社に劣っているということや、顧客サービスの点においては他社の追随を許していないということなどが判明するでしょう。

主活動と支援活動に分けて分析する

バリューチェーン分析では、企業活動をメインとなる主活動と、主活動を支える支援活動に大きく分けてから分析を進めていきます。例えば、製造業では購買と製造、物流、販売、サービスの5つを主活動、調達活動や技術開発、人事管理、全般管理の4つを主活動を支える支援活動に位置づけることができるでしょう。

なお、調達活動には、原材料を調達する活動だけでなく、サービスなどの他社との交渉が必要な活動すべてを含みます。また、人事管理とは、企業活動に必要な人員を採用することや育成すること、報酬制度や福利厚生の整備など、スタッフに関連する活動すべてです。管理全般は人事以外の管理業務、例えば財務や企画、経理などを含みます。

バリューチェーン分析を行うステップ

主活動と支援活動は、業種によって異なります。バリューチェーン分析を行う前に、企業が属する業種の活動を主活動と支援活動に分けて分類しておきましょう。

1.各活動を洗い出す

製造業ならば企業活動全体を5つの主活動と4つの支援活動に分け、さらに各活動を工程ごとに細分化して洗い出していきます。例えば主活動のひとつ「購買」は、原材料の選定工程と原材料を工場に配送する工程に分けることができるでしょう。

なお、主活動と支援活動は業種ごとにほぼ決まっています。そのため、自社と同じ業種のバリューチェーン分析のフレームワークを使うことで、より簡単に企業分析を行っていけるでしょう。

2.各活動のコストを計算する

バリューを正確に把握するためには、各活動のコストを計算しておく必要があります。優れた価値のものであっても、原料が高額過ぎれば付加価値が生まれたとは判断できません。

コストは活動ごとに計算します。活動を分けて分析することで、どの過程で利益が生まれているのか、反対にどの過程の利益率が低いのかを知ることができるでしょう。また、活動がいくつかの場所や工程に分かれている場合には、各場所、各工程のコストを別個に表記します。

例えば製造過程のコストを考える際、商品を製造している工場が3つあるならば、それぞれの工場のコストを別個に表記できるでしょう。また、商品ではなくパッケージを製造する工場が別途ある場合には、そのコストも別個に表記し、利益率を分析していくことができます。

3.強みと弱みを分析する

活動を細分化し、各活動のコストを計算することで、それぞれの活動における強みと弱みが分析しやすくなります。例えば購買活動を原材料の選定工程と工場への配送工程に分けた場合、選定工程では、関わる企業が多く、常に最良の状態の原料を選べるといった強みが見つかるかもしれません。

また、原材料を工場に配送する工程では、調達から配送までの接続が悪く、倉庫に保管している時間が長いなどの弱点が発見できることもあるでしょう。さらに、コストを絡めて分析することで、新たな強みと弱みが発見できることもあります。

例えば物流の過程では、工場Aから倉庫までのスピードは速いが送料が高いという弱みが見つかるかもしれません。一方、工場Bから倉庫までは距離が長く輸送時間がかかるものの、単位量あたりの送料が安いという強みが発見できることがあります。工場Bからの輸送に利用している物流業者を工場Aでも利用することで、利点の増強を図れるかもしれません。

4.VRIO法で優位性を分析する

バリューチェーン分析では、最後にVRIO法を用いて優位性を分析します。VRIO法とはV(経済価値)、R(希少性)、I(模倣可能性)、O(組織)の4つの視点で分析する手法で、企業内にすでにある資源を有効活用しているかを確認することが可能です。

VRIOの順番に沿って、「はい」か「いいえ」で判断していきます。例えば物流の過程で、自社に「倉庫と市場が近く輸送に時間とコストがかからない」という強みが発見できたとしましょう。経済価値の観点ではこれは非常に大きな強みのため、Vは「はい」と判断できます。

また、すべての同業他社が市場の近くに倉庫を有しているわけではないため、希少性の観点でも「はい」と判断できるでしょう。

もし、倉庫の近くに土地が余っているならば、他社も市場近くに倉庫を建設する可能性があるため、他社の模倣可能性は高いと考えられます。なお、模倣可能性に関しては、他社が真似しにくいとき、あるいは他社が同等の条件を獲得するときにかかるコストが大きいときに「はい」を選択するため、模倣可能性が高いときのIは「いいえ」です。倉庫の近くに土地がなく、他社の模倣は難しい場合にはIは「はい」を選択できるでしょう。

組織に関しては、既存の資源を有効活用できる組織になっている場合は「はい」、有効活用できていないならば「いいえ」となります。「はい」が多い活動は競争優位にあると判断できますが、「いいえ」が多い活動は競争劣位にあるため、改善策を講じることが必要となるでしょう。

バリューチェーンを活用した企業事例

バリューチェーン分析を用いて強みと弱みを視覚化すると、事業戦略を立てやすくなります。実際にバリューチェーン分析を活用した企業の例について見ていきましょう。

トヨタ自動車

トヨタ自動車ではすでに確保しているバリューチェーンの拡大を目指しながらも、情報通信技術を用いてマイカー以外による移動、例えばカーシェアリングやサブスクリプションサービスなどを展開することで、新たなバリューを生み出す戦略を立てました。また、自動車販売業だけでなく、メンテナンスや自動車保険といった関連するバリューの確保も目指しています。

ほけんの窓口グループ

保険の窓口グループでは、顧客のニーズに合った保険商品を紹介するといった従来のサービスに加え、保険に関する相談会を開催したり、保険契約をしたカスタマーへのアフターサービスを開催したりすることで、新たなバリューを生み出す戦略を立てました。いずれも新たな顧客と新たな保険契約につながるバリューで、収益性の向上とつながっています。

バリューチェーン分析の注意点

バリューチェーン分析を行う際には、次の3つのポイントに注意する必要があります。

時間をかけすぎないこと

バリューチェーン分析は、分析すること自体が目的ではなく、あくまでも事業戦略を立てるための手法です。そのため、時間をかけすぎて他の業務に支障が出るのでは本末転倒といえるでしょう。また、時間をかけすぎると、現時点での正しいバリューが見えにくくなることもあります。

分析は大人数で実施すること

弱みや強みを発見する作業は、主観が入る可能性があります。分析は大人数で行い、客観性を保つようにしましょう。

定期的に分析を見直すこと

何が付加価値になるかは、日々変化しています。定期的に分析を見直し、革新的な価値を見つけていきましょう。

最後に

バリューチェーンとは、企業活動を細かな過程に分け、過程ごとに強みや弱みを見つけていく手法です。バリューチェーンは一度分析して事業戦略を立てれば終わりではありません。新たな価値や強みを生み出すためにも、定期的に分析を見直していきましょう。

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