企業の人材・リソース不足を補う、あるいは人的・金銭的なコスト削減を図るなど、様々な目的で活用される「BPO事業」。うまく活用することで企業の業務効率化や成果の最大化を狙うことが可能な一方、使い方を誤れば大きな損失を被るリスクもあります。
今回は今後も需要の高まりが予想される「BPO事業」について、概要やメリット・デメリット、具体的な活用事例などを紹介しましょう。
BPO事業とは?
BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネスプロセスアウトソーシング)」の略称です。企業が自社に不足している技術や知識を要する業務を、外部事業者に委託することを指します。少子高齢化により人材不足や売り手市場が謳われる昨今、BPOへの注目度やニーズの高まりは今後さらに加速することでしょう。BPO事業の対象となる業務領域
一般的にどのような業務、職種が外部へ委託されるのでしょうか。通常BPOの対象となるのは、コア業務以外で「社内にノウハウがない」「人材が確保できない」領域です。
主な例としては
- 経理
- 総務
- 人事・労務
- マーケティング
- コールセンター
- 情報システム運用
など、直接利益を生み出す部門ではなく間接的にサポートする役割(間接部門)の業務が挙げられます。これらバックオフィス業務を外部へ委託することで、人を雇用するよりも人的コスト・時間コスト等の削減を図ることが可能です。
BPO事業を導入する3つのメリット
BPO事業を戦略的に利用することで、企業の成長や業績拡大を促進することも不可能ではありません。BPOをうまく使いこなすためにも、まずは外部委託による3つのメリットについて確認していきましょう。1.総合的なコスト削減による利益向上
BPO事業を導入する1つ目のメリットは「総合的なコスト削減により利益向上が図れること」です。総合的なコストとは金銭的なコストはもちろん、社内人材の労力コストや業務にかかる時間コストどを指します。
例えば「必要なときだけ外注に依頼したい」業務をBPOで委託することにより、固定費を払って人材を雇うよりも人件費を削減することが可能でしょう。あるいは、自社より圧倒的にノウハウを持った会社へ業務を外注することで、これまでの何倍も効率よく仕事が片付く可能性もあります。BPOの活かし方によって、大幅な費用対効果の向上が期待できるでしょう。
2.社外ノウハウ活用による業務効率化
2つ目は「社外ノウハウの活用による業務の効率化」です。本来会社として力を注ぎたいのは、市場開拓や営業売上の向上、新規の製品開発など直接的に利益へと結びつく仕事でしょう。しかしそれらを支える経理や総務、電話対応などのバックオフィス業務に大幅な時間を割いている企業は少なくありません。
ノンコア業務のルール化や環境改善は後回しになりがちなため、結果的に多くの労働コストを割いてしまいます。また一から人材を育てる、教える手間も必要です。このとき、既にノウハウを持った会社へこれらの業務をBPO化することで、仕事の大幅な効率化が可能。業務時間そのものが短縮される上、人材の教育コストや自社ノウハウを作成する手間などがすべて省けます。
3.コア業務への集中による成果最大化
3つ目は「コア業務への集中による成果の最大化」です。ノンコア業務を担当していた自社社員をコア業務へ当てることで、より会社の利益向上や成長に繋げることが可能。業務成果の最大化を狙うことができます。
また従業員にとってもコア業務を中心に任されることで、責任感やモチベーション、成長意欲の向上など、心理的にプラスの効果が得られる可能性もあるでしょう。
BPO事業を導入する3つのデメリット
良いところばかりに目が行きがちなBPO事業ですが、使い方を誤ることで逆に生産性を下げる、あるいは余計なコストがかかってしまうリスクもあります。導入時に失敗しないためにも、覚えておきたいBPOのデメリット3つを見ていきましょう。1.自社での内製化が難しい
BPO事業を導入する1つ目のデメリットは「一度外注すると、自社での内製化が難しくなる」点です。社内でノウハウを用意する手間や教育コストを削減できると同時に、BPOを利用することで「社内でノウハウが蓄積されない」「その分野の専門家が育たない」といった課題も発生します。
永続的に外注するならば問題ないですが、途中で社内に切り替えたいと思ったとき、想定外のコストや労力が必要となるかもしれません。また業務の移行作業や引き継ぎといった手間がかかることも覚悟しておくべきでしょう。
2.情報漏えいのリスク・対策コストの発生
2つ目のデメリットは「情報漏えいのリスク」と、「漏えい対策のコスト発生」です。業務を外注するにあたり、社員の個人情報や顧客情報をBPO事業者に共有する場面も発生します。この際、外注先のミスで情報が流出した場合でも、外注を依頼した企業側が責任を問われる可能性は十分に考えられるでしょう。
よって依頼元企業は、まず「外注へ委託=情報漏えいのリスクと常に背中合わせ」という事実をしっかりと念頭に置く必要があります。また漏えいを防止するため、社内のセキュリティシステムをどのように設定するか、よく吟味した上で対策を練らなくてはなりません。
3.委託前・解約後のコストが発生
3つ目のデメリットは「業務の委託前・解約後のコストが発生すること」です。まず仕事を委託する際は、BPO事業者に向け社内担当者による丁寧な引き継ぎが必要とされます。規模の大きな業務領域であるほど、引き継ぎに要する労力や時間コストは大きくなるでしょう。
また外注を解約し、内製化に切り替える際も膨大なコストの発生は免れません。引き継ぎをはじめ新部門の設立や人事異動、新たなシステムやルール導入など、関連した様々な仕事が発生するためです。
さらに場合によっては内製化した途端、社内のリソース不足で運営が滞るといった危険性も考えられます。BPO化の際は、依頼前と解約後に必要なコストや発生しうるリスクまで検討し、慎重に判断する必要があるでしょう。
BPO事業の4つの活用事例
実際に多くの企業がBPOに業務の外注化を依頼することで、社員の負担軽減や営業利益のアップなどを実現しています。参考にすべき、BPO事業の活用事例を4つご紹介します。1.イベント企画を外部へ委託
1つ目の活用事例は「自社イベント企画の外部委託」です。ある企業で採用活動と自社PRの一貫としてイベント開催が企画されましたが、主な課題として「イベントのノウハウが蓄積されていない」「イベントの管理に割ける人員が足りない」の2点がありました。
そこで「イベント管理代行」を委託し、自社社員は採用活動などメイン業務へ集中。結果、滞りなくイベントを開催することができ、採用にも大きな成果を残すことができました。
2.人材採用活動時の人事数の補填(RPO)
2つ目の活用事例は「人材採用活動時の人事数の補填(RPO)」。RPOとは採用業務を外部へ委託すること、つまり採用代行サービスを表す言葉です。ある企業は年間の採用目標人数に対し、社内の人事数が全く足りていないことが課題でした。
そこで採用活動の中でも面接者への通知作成やアポ取りなど、定型化された業務を外注化することに。そうすることで自社の人事が面接や採用者の決定など重要な業務だけに時間を割き、採用目標を見事達成できました。
3.社員の給与計算など経理業務を一任
3つ目の活用事例は「社員の給与計算など経理業務の一任」です。ある企業の経理部門における内部統制が進んでおらず、社員の給与計算等に膨大な時間とコストを割いていることが課題でした。
「もっと生産的に経理業務を行いたい」との思いから、経理業務にBPOを導入。その結果、経理業務のスペシャリストが精算業務にあたるため以前の何倍ものスピードで仕事が片付くようになったのです。さらに社内で経費精算にあてていた時間で、営業活動や広報活動など別のコア業務ができるようになりました。
4.必要書類やサイトの翻訳・通訳を委託
4つ目の活用事例は「必要書類やサイトの翻訳・通訳業務の委託」です。ある企業はグローバル化へ対応するために「外国人向けの商品PR」や「外国人人材の採用」を目標としていましたが、社内には対外国人・対多国籍言語のノウハウがまったくありませんでした。
そこで多言語通訳・翻訳をBPOで委託したところ、外国人向けのイベント集客や採用活動が円滑に回るように。また外国語でのチャットやメール、書類のやり取りも、通訳代行の委託によりスムーズに対応ができるよう改善されました。
最後に
今回は「BPO事業とは」というテーマで、今後さらに注目が高まるであろうサービスの概要や活用事例、メリット・デメリットについて説明しました。以前は大~中企業の利用が一般的だったBPO事業ですが、最近では小規模企業やベンチャー企業の導入も珍しくありません。「必要なときだけ必要な能力を借りる」というBPOならではの特徴を活かすことで、労働力や金銭的なコストをうまく削減し成果の最大化を狙うことができるでしょう。