株主名簿とは、会社設立の際に作成すべき書類のひとつで、株主の管理や権利保護を目的としたものです。会社法により記載すべき内容や管理人の管理方法まで細かく定められており、整備していない場合は過料が処されることも。本記事では、株主名簿の記載事項や管理方法について説明します。
株主名簿の基礎知識を解説
株主名簿とは会社設立の際に作成する書類のひとつで、株主についての情報が記載されている帳簿です。誰が株主なのか、いくらくらいの株式数を所有しているのかが一目で分かるようになっています。株主の人数に関わりなく、株主が自分だけという場合でも作成しなければなりません。
株式会社設立のために必要
株主名簿は、株主の人数や株式発行の有無に関係なく会社設立の際に作成するものです。会社法で記載内容は決まっているため、好き勝手にリストを作ればいいという訳ではありません。
この名簿は、法人設立届出書と合わせて税務署に提出します。株主名簿を作成しきちんと保管していないと、100万円以下の過料に処される可能性があるため注意しましょう。
株主名簿は、会社と株主の権利を保護するために作成します。株主は、株主総会の議決権や剰余金の配当請求権など様々な権利を有していますが、株主でなければこういった権利を主張することはできません。
従来のように株券が発行されていれば話は簡単ですが、電子株式となってからは、誰がいくらの株式数を所有しているのか確認するために名簿が必要なのです。名簿に記載されていれば株主であることが分かり、安心して株式の譲受を行えます。
相続や事業譲渡などにより株主に変更があった場合には、名簿の内容も変更しなければなりません。名簿に記載されない限り、譲受人は自分の権利を主張することができないため注意しましょう。
一人株主でも必要
ほとんどの中小企業では、株主は代表一人だけというケースが多いでしょう。例え一人でも作成する必要があります。
株主名簿の記載事項は4項目
株主名簿の記載事項は、次の4項目です。
- 株主の氏名・名称及び住所
- 所有する株式の種類と数
- 株式を取得した日
- 株券の番号
氏名や名称の欄には、個人の氏名や法人の名称を記載します。住所の欄には、それぞれ住所や本社の所在地を記載しましょう。
次に、株式の種類と株式数を記載します。通常は「普通株式」と呼ばれるものですが、様々なオプションがついたものもあり、この場合は種別ごとに記載しましょう。
取得日は、代金を支払った日とするのが通例です。また株券の番号は、そもそも発行していなければ記載する必要はありません。例外的に株券を発行している会社のみで大丈夫です。
株主名簿は原則として本社で管理する
株主名簿は、会社法により原則として本社で管理すると定められています。なお、株主名簿管理人をほかに定めている場合は、その管理人ならびに管理会社の営業所で管理しても構いません。
株主名簿管理人の主な3つの責任とは?
株主名簿を管理するのは株主名簿管理人です。管理人は、株主名簿記載事項証明書の発行、株主名簿書換請求書の発行、株主名簿の閲覧・謄写請求への対応といった3つの責任を果たす義務があります。ここでは、この3つの責任について詳しく解説しましょう。
1. 株主名簿記載事項証明書の発行
株主名簿管理人は、株主から請求があった場合、速やかに株主名簿記載事項証明書を発行しなければなりません。この証明書には、代表取締役の署名や記名押印が必要です。
株式譲渡の際、実物の株券があれば株券の引き渡しが行えますが、株券を発行していない場合は、実際に相手が株式を所有しているのかを確認することができません。譲渡する側が、株式を所有しているのを証明するために名簿が必要なのです。
2. 株主名簿書換請求への対応
株主が第三者へ株式を譲渡した場合、会社に対して株主名簿を書き換えて欲しいと請求することができます。株券を発行していない場合は、株主(譲渡側)と取得者(譲受側)が共同で、株主名簿書換請求書を提出し書き換えを請求します。
勘違いされがちですが、株式の譲渡があるからと勝手に会社が名簿を書き換えることはありません。あくまでも、株主側から会社に対して請求する必要があるのです。名簿に記載がなければ、株主としての権利を主張することができないため注意しましょう。
3. 株主名簿の閲覧・謄写請求への対応
株主と債権者は、請求の理由を明確にした上で、株主名簿の閲覧・謄写の請求を行えます。会社側は、次の拒絶事由に該当しない場合は、この請求を拒むことはできません。
- 請求者が権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
- 株式会社の業務を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
- 閲覧や謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するために行ったとき
- 過去2年以内に、閲覧や謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがある場合
最後に
株主名簿は、会社設立の際に作成するもので、すべての株主についての情報が記載されています。会社法によって記載事項や管理方法まで定められており、きちんと整えられていない場合は過料に処されることもあるため注意が必要です。相続などによって株式を譲受した場合、必ず会社に株主名簿を書き換えてもらうように請求しましょう。