事業戦略とは?策定方法やフレームワーク、企業の事例を紹介

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事業戦略とは、事業ごとに目標を設定して方向性を検討する方策です。フレームワークを活用しながら現状を分析し、競合他社との差別化を図ります。

本記事では、事業戦略の内容や具体的な方法について説明し、役立つフレームワーク、成功するコツなどを紹介しましょう。

目次
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事業戦略とは?

事業戦略とはどのようなものか、その意味について考察します。経営戦略など、よく似た言葉との違いについても見ていきましょう。

各事業ごとに立てる戦略

事業戦略とは、各事業ごとに戦略を立てることです。外部環境や内部環境を分析し、事業を推し進めるための戦略を策定します。

外部環境では、市場の状況や競合他社、顧客の動向、ニーズなどを把握し、事業の目標や方向性を決定。内部環境では人材や能力、設備、資金などを考慮し、戦略を実行できる体制づくりやマネジメントを行います。

事業戦略は、目標達成のために重要な施策です。自社ではコントロールできない外部要因の予測や、内部環境の強み・弱みの分析を行わずに事業を進めても、会社の成長は期待できません。事業戦略の策定によって、確実に成功が見込める道筋を作ることが必要になります

経営戦略・機能別戦略との違い 

事業戦略は、経営戦略や機能別戦略とは異なります。経営戦略とは長期的な会社全体の戦略であり、複数の事業を持つ組織が体制を設定し、経営資源を目的に応じて配分する方針や計画です。事業戦略の上位に位置する施策ということができます。

一方、機能別戦略とは事業戦略をさらに細分化したもので、開発から生産、販売、アフターサービス、マーケティング、営業、人事といった機能の個別的な方針や計画です。事業を具体的に展開するために、現場レベルで施策を決定します。事業戦略の目標を達成するためには、各機能の戦略策定が欠かせません。

事業戦略の立て方5つ

事業戦略を成功させるには、次に紹介する5つの策定方法を順番に行います。それぞれ見ていきましょう。

1.目的と定量目標を設定する

まず、目的と定量目標を設定します。定量目標が曖昧な内容にならないよう、事業戦略を策定する目的は明確にしなければなりません

何を達成したいのか、どのような業績を目標にするかを具体的に定めます。数値や数量で表す目標は事業のゴールとなり、戦略策定の重要な旗印となるものです。

2.現状を分析する

目的と定量目標を設定したあとは、現状を分析します。事業を行う市場の分析や業界での位置付け、顧客の動向、競合他社との比較を行い、自社の強みや弱みを分析します

このステップは事業の方向性を決定するために最も重要になるため、フレームワークを用いながら精査しなければなりません。

3.方向性を検討する

現状分析が終わったら、戦略の方向性を検討します。方向性は一つに絞らず、代替的に複数を準備しなければなりません。戦略として行き詰まり、実現が不可能になる可能性もあるからです。

複数の方向性について妥当性や効果などを見極めながら、最良な戦略を選択していきます。

4.実現可能性を調査する

複数選んだ方向性につき、実現可能性があるか調査します。戦略の推進に必要な費用やリスクを検討し、シミュレーションを行いながらそれぞれの戦略を客観的に分析しましょう。

戦略が企業理念に沿っているかも重要な要素です。企業理念は事業の最終目的であり、社員の行動指針になるものです。企業理念に合わない方向性は、事業を順調に推し進めることができません。

5.施策に落とし込んで実行する

方向性が定まったら、施策に落とし込んで実行します。実行するためには、具体的な内容を定めなければなりません。施策の重要度に鑑み、優先順位を決めてスケジュールを組みます。

実行する際は、経営戦略との関係も考慮しなければなりません。経営戦略は会社のあるべき姿を実現するための全社的な組織方針です。事業戦略はあくまで経営戦略を事業レベルで実現するためなので、両者の整合性を意識する必要があります。

他の事業とのバランスも考慮しましょう。事業戦略を推し進めても、他事業とのバランスが悪ければ相乗効果を発揮できない可能性があるからです。

事業戦略を実行する過程では、想定とは異なる事態が発生する場合もあります。定期的な認識のすり合わせなど、事業部と上層部との連携も必要です

実際に実行する人材の能力を最大限に引き出すことも心がけましょう。事業戦略の重要性や意図を正確に浸透させ、最適な人材配置を行うなど組織マネジメントもしっかり行います。

事業戦略に役立つ4つのフレームワーク

事業戦略の策定には、フレームワークの活用が効果的です。役立つフレームワークを4つ紹介しましょう。

1.PEST分析

PEST分析は自社を取り巻く外部環境を分析するフレームワークです。政治(Politics)経済(Economy)社会(Society)技術(Technology)の4つを分析します。

分析する4つの要因は、具体的に次の通りです。

  • 政治的要因:法律、規制緩和、税制変化、政権交代など
  • 経済的要因:景気動向、物価変動、雇用情勢など
  • 社会的要因:少子高齢化、流行、文化、ライフスタイル、社会問題など
  • 技術的要因:技術革新、イノベーション、ITインフラ整備、特許など

これらを分析し、顧客のニーズや市場の変化、自社に対する影響などを見極めます。

2.3C分析

3C分析とは、内部環境と外部環境を分析する方法です。顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つを分析します。

  • 顧客:流行や市場のニーズなどを調査する
  • 競合:競合他社の動きを調査する
  • 自社:顧客と競合の分析から強みを見極める

3つの要素から自社の強みや弱み、顧客のニーズを明らかにし、成功要因を発見して方向性を定めます。

3.ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、業界における競争要因を分析し、事業を取り巻く外部環境について分析を行うフレームワークです。

ここでは、次の5つの競争要因について分析します。

  • 新規参入企業の登場
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 代替品の存在
  • 既存の競合との関係

ファイブフォース分析では現在の競合他社との関係だけでなく、新規参入企業や代替品など将来的な脅威についても分析します。それにより、長期的な視野での戦略策定が可能です。

さらに、原材料の仕入先などの売り手、顧客などの買い手についても洗い出し、影響力について考察します。競合他社との差別化だけでなく供給面での自社の強みも分析できるため、業界における収益性の構図が把握できるでしょう。事業戦略の優位性や課題の発見に役立ちます。

4.SWOT分析

SWOT分析とは企業の内部環境である強み(Strength)・弱み(Weakness)と、外部環境である機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの要素を分析する方法です。外部環境と内部環境をプラス面、マイナス面に分けて分析することで、自社内外の競争要因を把握するのに役立ちます。

SWOT分析は、3c分析で集めた情報を整理して分析するのに便利です。3c分析で集めた3つの要素をSWOT分析の4つの要素に分類し、それぞれを組み合わせて内容を分析します。

次のような4種類の組み合わせができるので、それぞれを検討していきましょう。

  • 強み×機会:自社の強みを活かしながら、ビジネスの機会にどう参入するか
  • 強み×脅威:外部の脅威に対して、自社の強みでどう乗り切るか
  • 弱み×機会:弱みを把握して、外部の機会をどのように活かすか
  • 弱み×脅威:外部の脅威に対して、自社の弱みで対処できるか

SWOT分析では同じ事実情報から複数の解釈を引き出せるため、様々な見方でいろいろな可能性を洗い出し、事業戦略を絞り込むことができます。

事業戦略に成功するポイント

事業戦略の策定に成功するには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。次の2点を意識してみてください。

1.他社と差別化する

事業戦略の策定には、他社との差別化を行い優位性を生み出すことが必要です。顧客のニーズや他社の商品・サービスを分析しながら、自社が持つ価値を探求します。自社の能力で、他社より優れた商品やサービスを提供できるかを考えなければなりません

さらに、商品やサービスの認知を獲得するためのマーケティングも大切です。外部環境を分析して市場に参入できる機会を見つけ、攻略する区分を特定します。そこでの顧客ニーズを深掘りし、自社の商品やサービスの位置付けを決定するという作業を行いましょう。

2.経営資源を把握して組織体制を作る

事業戦略を成功させるには、自社の経営資源を把握して、戦略をスムーズに実行できる組織作りも大切です。他社と差別化できる商品やサービスを企画できても、会社内部に経営資源や開発するための人材が不足していては展開が難しくなります。

事業戦略を推進できるだけのリソースがあるかを確認しなければなりません。事業戦略の計画に沿った資源の配分をすることがポイントです。

自社の経営資源や人材が足りているかを判断するには、生産管理における「QCD」という考え方が有効です。QCDでは、品質(Quality)・費用(Cost)・納期(Delivery)の3つの要素を判断します。

「商品やサービスが目標とする品質を満たしているか」「費用は許容できる範囲内か」「実現可能な納期か」という3つの観点から自社の経営資源を検討してみてください。これらが問題ないと判断できれば、事業戦略の成功が期待できるでしょう。

企業が行った事業戦略の事例

多くの企業で事業戦略が策定されていますが、ここでは実際に成功している事例を紹介します。

任天堂

ゲームメーカーの大手企業である任天堂は、「ブルーオーシャン戦略」を展開しています。競争者のいない未開拓の市場で、顧客に高い価値を低コストで提供するという戦略です。

任天堂は「ファミリーコンピュータ」の開発から「Wii」まで、常に新たな市場を開拓してきてました。ブルーオーシャン戦略に基づいて最初に手がけた「ニンテンドーDS」は、タッチパネル、音声認識などユニークな機能を搭載して他社と差別化し、大成功を収めています。

競争者のいない新たな市場に進出するためには、商品の価値を高めながらコストを下げるバリューイノベーションが欠かせません。本来であれば相反する商品価値の向上とコスト削減を両立させたことが、任天堂の大きな成長につながっています

サイゼリア

サイゼリアは、低価格帯のイタリアンメニューを取り揃えるレストランを全国展開している会社です。サイゼリアが行う事業戦略は、業界全体の広い顧客をターゲットにして低いコストを実現し競争に勝つという「コスト・リーダーシップ戦略」です。サイゼリヤは創業以来、若年層やファミリー層を主なターゲットに徹底した低コストの戦略をとり、多くの顧客を獲得しました。

低コストの路線を支えているのは、生産から調理の作業工程まで徹底した作業の効率化とシステムの構築です。サイゼリアは福島県に100万坪の自社農場を持ち、栽培から加工調理まで一貫して実施。

そのため、各店舗では包丁を使用することなく、少ない人数での調理が可能です。さらに、メニュー数を抑えて広告費もかけないなどの努力を行い、大幅なコスト削減を実現しています。

ローソン

全国にコンビニエンスストアを運営するローソンは、「差別化戦略」で成功を収めています。業界全体の広い顧客をターゲットにし、他の企業が持たない特徴で他社との差別化を図るという戦略です。

ローソンでは、100円均一や健康志向店舗など、従来のコンビニエンスストアにはなかった新たな形態を導入。多様化する顧客のニーズや高齢化社会に対応した独自の店舗展開を行い、他社との差別化に成功しています。

コンビニ市場が飽和状態にあるなかでは、既存顧客を開拓する余地はほとんどありません。ただ店舗拡大ではなく、新たな客層の開拓に力を入れたことが事業戦略の勝因といえるでしょう。

最後に

事業戦略とは事業の目標を設定し、計画や方針を決定することです。実現可能性がなければならず、成功のためには他社と差別化し経営資源も確保しなければなりません。

事業戦略で重要なのは現状分析であり、フレームワークを活用しながら十分な調査を行うことが必要です。会社を成長させるため、ぜひ効果的な事業戦略を策定してみてください。

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