新型コロナウイルスの影響でリモートワークが増えたこともあり、ペーパーレス化に踏み切る企業が多くなっています。実施する前に、そのメリットを改めて確認し、スムーズなペーパーレス化への移行を目指しましょう。
ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは、オフィスにある紙ベースの書類や帳票をデータ化し、パソコンなどのデバイスで管理できるようにすることです。データ化することで、オフィスにいなくても、自宅やカフェなど好きな場所から書類やデータを確認することができます。
以前から、印刷するコストを削減するためにペーパーレス化を導入する企業はありました。2020年現在は、印刷コスト削減という目的よりも、出勤せずに必要なデータを確認できるというメリットの方が大きくなっています。
セキュリティのリスクマネジメントについて、しっかりと対策しておけば、社外秘の書類でもデータで扱うことは可能です。大量の紙に印刷していた書類も、データならスッキリ管理できるようになるでしょう。
ペーパーレス化は利便性が高く、コストカットにもなる有益な方法なので、今後はより一層普及すると考えられます。
ペーパーレス化が加速する背景
ペーパーレス化が単なる印刷コストカットで終わらず、ここまで加速するようになったことには、いくつかの理由があります。国も推奨するペーパーレス化が、なぜ加速しているのかについて確認しておきましょう。
働き方改革
ペーパーレス化が進んだ1つの要因となるのが「働き方改革」です。働き方改革とは、2019年4月1日に施行された働き方改革関連法案で提案された、新しい働き方の提案全体を指します。
少子高齢化にともない労働人口が減っていくばかりの日本で、すべての労働者が自分の生き方に合わせて自由に働き方を選べるようにするのが、働き方改革の一番の目的です。「どこで」「どれくらい働くか」という選択肢に幅を持たせ、もっと多くの人が効率的に働けるようにするための法案といえるでしょう。
この働き方改革を進めるためにも有効な手段が「ペーパーレス化」です。時間や場所の制約から解放され、情報を活用する能力の向上が期待できるという理由で、2019年以降からペーパーレス化に力を入れる企業が増えています。
ペーパーレス化を実現することで、日本人がこれまで解決できなかった働き方の問題点が解決に向かうかもしれません。
コロナ禍とリモートワーク
新型コロナウイルスの影響から、2020年以降、首都圏を中心にリモートワークを導入する企業がかなり増えています。日本テレワーク協会の調査によると、従業員数30人以上の都内企業では、2020年3月時点でリモートワークを導入している企業は全体の24%でしたが、緊急事態宣言が出されると、リモートワークを導入する企業は同年4月時点で62.7%まで拡大しました。
リモートワークで働くためには、書類は紙ベースではなく、データで作成・確認・運用しなければ業務ができません。リモートワークが進んだことで、ペーパーレス化の必然性も増したと言っていいでしょう。このような背景から、ペーパーレス化はリモートワークの拡大と同じように増えているのです。
厚労省でもペーパーレス化導入の事例が
ペーパーレス化のような新しい動きは、政府が率先することでより広まって行くものです。
実は、厚生労働省では2000年の時点ですでに「厚生省行政事務のペーパーレス化(電子化)実施計画」を公表しています。この計画によれば「内部事務の一層の効率化を推進すること」を目的として、厚労省も20年前から業務効率化のためにペーパーレス化を意識し、実行に移そうとしてきたことがわかるでしょう。
コロナ禍の影響により、書類が多い官公庁もテレワークを導入するようになりました。紙ベースの仕事が多い官公庁ですらテレワークやペーパーレス化を推し進めています。民間企業もこれに追随し、今後ますますテレワークに必須であるペーパーレス化が進んでいくでしょう。
ペーパーレス化のメリットとは?
メリットが多いからこそ、ペーパーレス化が進んだといえます。ペーパーレス化で感じられる大きなメリットを確認しておきましょう。
印刷にかかるコストが大幅に削減できる
これまで印刷機やコピー機で使用していた用紙やインクにかかっていたコストを削減できます。紙での情報管理は、必要なものを増やすばかりでした。ファイル・シュレッダー・裁断機・コピー機・印刷機・用紙など、ペーパーレス化が進めばすべて不要になっていくでしょう。
書類検索しやすく業務を効率化できる
紙で管理している情報は、いちいちファイルを探し、そこからまた書類を探し……と必要な書類を探すために時間がかかります。ペーパーレス化すれば、これらの書類は検索機能で簡単に見つけることが可能です。
ただし、検索してすぐに目的の書類を見つけるためには、あらかじめデータを整理しておく必要があります。年度ごと、部署ごと、プロジェクトごとなど、データを分類するフォーマットを作成しておきましょう。
このデータ整理ができていれば、あとはどこにいても簡単に目的の書類を検索できます。書類を探す時間がカットできるため、業務は驚くほど効率化できるでしょう。
リモートワークを導入しやすくなる
ペーパーレス化が進むと、勤務場所を一カ所に限定する必要がなくなります。書類をどこでも作成・保存・閲覧できれば、もはや社内で行わなければいけない仕事はかなり減っていくでしょう。だからこそ、現在のようにリモートワークを導入しやすくなるというメリットに繋がっていると考えられます。
リモートワークでもペーパーレス化が進んでいれば、クラウドサービスを活用し、社内の書類に簡単にアクセスできます。社外への送付もデータを送ればいいだけなので、切手代や封筒代も節約できるでしょう。
オフィスがスリム化できる
書類のデータ化が進むと、紛失するというリスクを回避できます。さらに、印刷してファイリングする必要もなくなるため、バインダーやファイルなどをオフィスに置いておく必要がなくなるでしょう。
書棚設置にかかる費用も削減でき、より少ない面積で働くことが可能になるため、オフィスはかなりスリム化されます。オフィスがスリム化された結果、ワンフロア分の賃貸を解約して大幅にコストカットできる可能性もあるでしょう。
ペーパーレス化の導入方法
ペーパーレス化をスムーズに実施するためにも、導入の手順や具体的な方法を確認しましょう。
ペーパーレスにする優先順位を決める
スムーズにペーパーレス化を実施するためには、まずどのような書類からペーパーレスにしていくか、優先順位を決めましょう。
例えば、取引先の捺印が必要な書面などは、慌ててペーパーレス化すれば先方にも影響が出てしまいます。最初に手を付けるのは社内文書にして、徐々に社外文書に拡大していくのが良いでしょう。
ペーパーレス化の対象はツールで解決
議事録やメモはデータで残す
議事録や会議でとるメモは、その場で紙に書かず、直接パソコンで入力するようにしましょう。パソコンのメモ機能でも、WordやExcelに書き出しても構いません。データで議事録をとっておけば、回覧しなくても簡単に参加者に共有できます。
WordやExcelも、GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントを活用すれば、参加者全員が編集できるため、内容の修正もしやすく便利です。
社内連絡はコミュニケーションツールを活用
社内での連絡は回覧板を廃止し、Chatworkなどのコミュニケーションツールを活用しましょう。リモートワークの普及により、簡単な社内ミーティングはZOOMなどのツールでも可能です。テキストでの連絡がしたい場合は、Slackなども使いやすく、浸透しやすいでしょう。
また社内での簡単な雑談や、ちょっとした仕事の連携に会話が必要な場合も、電話ではなくコミュニケーションツールで解決できます。Dicordというツールなら、音声のみでずっと連携を取ることが可能です。マイク・スピーカーも簡単に操作できるため、スピーカーをオフにして仕事に集中することもできます。
手紙はメール・CMSに移行
取引先への連絡事項やメール内容は、CMS(顧客管理システム)を利用することをおすすめします。
CMSは、顧客の情報や営業のステータス、過去の購入履歴などを一元管理できるシステムです。広く知られているものはSalesforceやHubspotですが、自社の規模や予算に合わせたツールを選ぶようにしましょう。
また、CMSは少人数なら無料で使えるものもありますが、機能を追加・拡大すると従量課金されることが多くなっています。利用する人数や、導入する規模を考え、もっともコストパフォーマンスの良いCMSを選ぶようにしましょう。
印鑑もペーパーレス化
印鑑文化が根強い日本ですが、ついにこの印鑑もペーパーレス化に対応できる時代がきました。クラウドサインというサービスを利用すれば、インターネット上で捺印・サインできます。社外文書に応用すれば、完全フルリモートワークが実現できるでしょう。
本当に効率化できているか検証
ペーパーレス化を効率的に実施できるツールを紹介してきましたが、これらを本当に社員が活用できているか、またどれだけの効果があるのかを検証しましょう。
ある部署では業務効率化できているのに、他の部署では良い結果が出ていないのであれば、実施方法やツールを見直す必要があります。部署によっては使用すべきツールが違っていて、そこを見直すだけでペーパーレス化が効率的に実施できることもあるでしょう。
ペーパーレス化の注意点
ペーパーレス化を実現するために、2つの注意点を確認しておきましょう。
個人情報管理に細心の注意が必要
ペーパーレス化が進むことで、従業員の給与明細などの個人情報もデータ化されます。給与明細が紙ではなく、データで共有されるということです。このような個人情報をペーパーレス化の対象にする場合、情報のセキュリティをしっかりと守り、扱う際には細心の注意を払いましょう。
全社員に一定のリテラシーが必要
インターネットを介して重要データを扱うペーパーレス化の動きには、関わる人すべてにリテラシーが求められます。クラウドサービスで全社員が見られるところに個人の給与明細を保存してしまうリテラシーの低い社員がいると、いつか会社全体の不利益へと発展する可能性が高いです。
情報を扱う際の管理方法、二重セキュリティなど、リテラシーが高くない社員に向けた教育コストも必要であると認識しておきましょう。
最後に
新型コロナウイルスやインフルエンザなど、感染症のリスクを考えると、今後ますますリモートワークを導入する企業は増えていくでしょう。
リモートワークが増えるということは、ペーパーレス化も加速度的に増えていくということです。これからの会社のあり方に順応するためにも、ペーパーレス化への移行をスムーズにしてくれるツールや実施手順を確認し、準備を整えましょう。