部長の役割とは、部署全体を統括し会社経営の一端も担う仕事をすることです。その存在は欠かせないものといえるでしょう。
ここでは、部長の主な仕事内容や社内での立ち位置、必要なスキルなどを解説するとともに、実際に会社に与える影響についても紹介します。
部長の役割とは?
部署のリーダーとして部下を統率する部長ですが、具体的にはどのような役割を担っているのでしょうか。主な3つの役割について見ていきましょう。
経営資源の最適化と管理
経営資源をうまく活用・管理することで、部署や会社にとって最善の結果を生み出すことが部長には求められます。経営資源とは、企業を経営していく上で役立つ様々な要素や能力のことを指します。具体的には人材や物、賃金、情報などがあげられます。
1つのプロジェクトにどれだけの人材や経費をつぎ込むのか、何を基準に人材を配置するのか、あるいはより効率よく業務をまわすために導入すべきツールやルールは無いかなど。
あらゆる視点から経営資源を活用し、部署や会社の成果を最大化する働きが部長には必要とされています。
長期的な経営戦略づくり
短期的な視点だけでなく、半年後や数年後を見越した中・長期的な経営戦略を立案し、それに基づいた施策や計画を遂行するのも部長の役目です。
長期的な視点をもつことで、新たな事業展開や業務効率化に向けての内部統制、人材の育成など「すぐに成果は出ないが、半年後や数年後に大きな効果をもたらす」施策に力を注ぐことができます。
また部署のトップである部長が将来を見据えた戦略を行うことで、その下で働く課長や現場社員たちも自然と、目先の成果にとらわれない仕事の取り組み方を身につけられるでしょう。
担当部署の最終責任を担う
部長は事業部の責任者として、部署全体の最終責任を負わなければなりません。部署内の課題やトラブルであれば、たとえ直接関与していなくても解決に向けて尽力しなくてはなりません。時には頭を下げたり外部へ足を運ぶ必要もあるでしょう。
また部署内で何らかの決断が問われる場面に遭遇したとき、最終的な意思決定は部長の判断に委ねられます。
部長はその部門において、経営者と同等の役割を担う最高責任者と言えるでしょう。
役職一覧と部長の立ち位置
会社の管理職における、部長のポジションを見ていきましょう。以下のように整理することで、数ある役職の中でも部長が非常に重要な立場に位置することがわかります。
【主な管理職一覧
/ 上位順】
- 社長
- 取締役
- 部長
- 次長
- 課長
- 係長
- 主任
- 班長
会社という1つの組織は事業ごとにいくつかの「部門」に分かれています。次長や課長といった役職は各部門に複数名存在しますが、部の最高責任者である部長は各部署に1名ずつしか配置されません。
また社長と取締役は会社の「役員」であり「会社員」という雇用形態には該当しません。部長はすべての会社員のうち、もっとも上位の役職にあたる存在です。
この並びからも、役員と現場社員とを繋ぐ架け橋として部長が重要な役割を担っていることがわかるでしょう。ときには社長や取締役と経営者的な視点から意見を交わし、彼らの意図を咀嚼して現場にわかりやすい言葉で伝える役目を担います。
部長と課長の違いとは?
同じ管理職である部長と課長ですが、それぞれの役職に求められる立ち回りや考え方には大きな差異があります。両者の違いについて見ていきましょう。
現場視点か経営者視点か
部長と課長の違いとして、業務に取り組む「視点の差」があげられます。
同じ管理職でありながらプレイヤーとして働く機会の多い課長は、実際に戦略を形にするための「現場的な視点」が必要不可欠。また業務上、一般社員と直接関わる機会も部長より多いため、社員の意図を汲みとり最適な指示や教育を行うことが求められます。
一方の部長は現場で実際に手を動かす機会は少なく、課長に比べると管理職的な役回りを多く担います。部署全体の成長や業績拡大を見通し、計画的に戦略を立てる「経営者的な視点」が必要なポジションです。
中・短期的な視点か長期視点か
中・短期的な視点で業務に取り組むか、長期的な視点で取り組むかも部長と課長の大きな違いでしょう。
先述したとおり現場で実務を遂行する立場の課長は、目の前の課題を瞬発的に解決する、または現場のトラブルに迅速に対応する能力が求められます。
対する部長は最終的な部門の成長や成果を最優先に考えるため、直近の数字にはそれほど固執しません。むしろ長期的な目線で戦略を練り、必要な人材や経費を投資するのが部長の仕事です。
自分が手本となるか部下に任せるか
人材マネジメントにおける両者の違いは、自身が現場の手本となって部下に直接教育をするか、現場のマネジメントをすべて部下に一任するかです。
課長がプレイングマネージャーとして部下一人ひとりに関わりを持つのに対し、部長が直接手掛けるのは主に課長の育成のみです。部署の管理業務に集中するためにも、部長は信頼して部下のマネジメントを任せられる、優秀な課長の教育が必要でしょう。
このように課長など管理職の育成に力を注ぐことで、部長は戦略立案や内部統制、労働環境の整備などその他の業務へ時間を割くことが可能です。
部長の仕事内容とは?
部署の統括を手掛けているイメージはあるものの、実際に部長がどのような仕事に取り組んでいるか知らない方も多いのではないでしょうか。部長の具体的な仕事内容について5つの項目をご紹介します。
1.部署の管理
部長の代表的な仕事として「部署全体の管理業務」があります。規模によっては数百名にもなる社員を統括し、会社の目標や経営戦略に基づいて業務遂行へ導きます。
一重に管理と言っても、その対象は人員配置から業務の進捗具合まで様々です。広い視野で部署全体を見渡し、マネジメントすることが求められます。
また部門の管理を部長1人で担うことは難しいため、各グループの長である課長との連携が必要不可欠です。課長経由で指示や戦略現場に落とし込むことで、間接的に現場の業績管理や人材マネジメントを行っています。
2.部下への教育と評価
信頼できる人材へと部下を教育・育成するのも部長の重要な仕事です。ここでいう部下とは主に課長など管理職を指します。課長をはじめとする管理職を育て、マネジメントスキルを身に着けさせることで部長は自身の現場業務を一任できるようになります。
膨大な業務量を抱える部長にとって、安心して仕事を任せられる部下がいることは自身の業務を適切に遂行する上で非常に重要です。
また部長が部下に適正な評価をすることは、現場の士気を上げ会社や部署全体に良い影響をもたらすことに繋がります。
3.対外的な業務遂行
部署の責任者として、取引先や他部署と交渉を行うのも部長の役目です。部門の取り組みやプロジェクトの正当性をうまくプレゼンし、対外的な協力や信頼を獲得することが求められます。ある意味、部署全体の成功は部長の外的な交渉能力にかかってると言っても良いでしょう。
また部下の起こしたトラブルや問題解決のために、社外へ足を運ぶことや頭を下げる機会も少なくありません。部長には部署の顔としての、柔軟な対応力や決断力、対人能力が必要とされています。
4.経営戦略の作成と実行
部署としてどの様に成果をあげ、どのように会社へ貢献するか。経営者的な視点から戦略を生み出し、遂行に向けて働きかけることも部長の仕事です。
成功率の高い戦略づくりのためには、部署内の課題を的確に把握する必要があります。また、会社の目標との乖離を埋めるためにどのような施策が必要になるかを冷静に判断する分析力が必要です。
戦略を実行するには、課長や管理職を通じて戦略を過不足無く現場へ落とし込まなければなりません。スムーズな連携のためには、普段からの部下との積極的なコミュニケーションや信頼づくりが重要です。
5.働きやすい環境づくり
部長は部下が生産性を最大限に発揮するために、働きやすい環境づくりにも尽力しなければなりません。
一重に働きやすい環境と言っても、人間関係から業務ルール、機器設備など快適な労働条件は社員によって多岐にわたります。現場が望む労働環境を実現するためにも、部下の声を積極的に取り入れる姿勢が重要です。
また部署として継続的に成果を出し続けるためには社員のメンタルケアや、モチベーションの維持・エンゲージメントの向上に関する施策なども必要でしょう。
部下がイキイキと安心して業務に臨むためにも、普段からコミュニケーションの機会を積極的に取り入れ、居心地の良い労働環境を整えることが求められます。
部長に求められる能力・スキルとは?
部署の管理職として欠かせない役割を担う部長ですが、一体どのような能力やスキルが求められるのでしょうか。部長を務める上で備えておきたい3つの力についてご紹介します。
1.マネジメント能力
1つ目はマネジメント能力です。マネジメントは「管理」を意味する単語ですが、部署のリーダーである部長は人材をはじめ賃金や商材など経営資源を幅広く管理する能力が必要とされます。
社長や執行役の定めた目標の実現化に向けて自部署の戦略づくりに取り組み、部下に最適な指示を出せることは、部長を務める上で必須要件でしょう。
また戦略におけるプロセスを年密に設計し、それを部署内の各チーム・各人員へ適切に割り振ることも部長の役目です。プロセスの進行状況や達成率を確認し、部署全体の士気を高めるマネジメント能力が求められます。
2.リスクヘッジ能力
2つ目はリスクヘッジ能力です。部長は部門の責任者として、どのようなトラブルにも柔軟に対応できるよう常日頃から備えておく必要があります。具体的には今後起こりうるリスクの洗い出しや、トラブルが発生した際の対応方法を明確にしておくなどです。
また自身のリスクヘッジ能力が必要なのはもちろん、部下のトラブル時の対応力やリスクへの危機意識を育てることも重要な役割です。部署全体の意識をあげることは、結果的にリスクそのものが起こりづらい環境づくりに繋がります。
3.人材の育成と適正な評価能力
3つ目は優秀な部下を育成し、能力や働きに合わせて適切な評価を下す能力です。部長の大きな役割の1つに、現場を適切に動かす優れた課長の育成があります。
課長候補者の選定や計画に基づいた教育・指導を行うことで、安心して業務を一任できる管理職を育てなければなりません。
そのためには課長に自分の力だけで課題を解決させる、あるいは管理職としての決断力を養う機会をあえて積極的に与えるなど、経験と知見に基づいた人材マネジメントを行う必要があります。
また課長やその他の管理職をはじめ、部下に適切な評価を与え個人の成長を促進する力も求められるでしょう。人材の努力値や能力を適正に把握するためには部下本人とはもちろん、その上司とも日常から密に連携を取ることが必要不可欠です。
期末の評価は彼らの昇進や昇格をも左右するため、客観的な視点から事実を冷静に判断しなければなりません。また現時点の能力値や成果だけではなく、過去の実績や数字とも比較しながら本人の努力値や成長を評価する視点も重要です。
4.経営者視点での判断能力
4つ目は経営者視点での判断能力です。人材や経費、商材など様々な資源を活用しながら、成果の最大化に向け多くの部下を統率する。規模こそ違えど、その役回りや思考は経営者と同様です。
部署の長として目先の成果のみにとらわれず、長期的な目線で会社への貢献や利益の創出を生み出す能力が求められます。
また部長は経営者や役員らの意図を適切に汲み取り、現場へ落とし込む役割を担います。そういった意味合いでも、経営者らと同等の視点から物事を見る力を養うことは重要です。
最後に
今回は「部長の役割とは」というテーマで、部長の立ち位置や仕事内容、必要なスキルなどについて解説しました。経営戦略に基づき部署の人員を適切に動かす部長は、会社にとって無くてはならない存在です。
課長や他の社員と連携しながら部署全体をうまくマネジメントできる部長は、会社を成長させる上で今後も重宝されることでしょう。
また一見すると業務内容がわかりづらく、明確な仕事の指標がない点も部長という役職の特徴です。今後部長を目指したいという方はもちろん、現場社員の方が部長の役割を理解することで、より部署内の連携やコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
本記事を読むことで、部長という役職への理解が少しでも深まったなら幸いです。