発起人とは、会社設立の手続きを行う人の事を指します。定款作成をはじめとする設立手続きと出資を行い、様々な義務と責任を負います。
本記事では、発起人になる資格や要件は何か、設立に際して行うべき役割はどのようなものかについて詳しく紹介します。
発起人とは?
発起人は会社設立に不可欠な存在です。会社設立に必要な手続きや出資を行います。
資格や人数に制限はない
発起人になるために特別な資格は必要ありません。国籍や年齢の制限もなく、未成年でも親権者の同意があれば発起人になれます。ただし、発起人は印鑑証明書が必要なため、印鑑登録が認められない15歳未満の場合は事実上発起人にはなれません。
個人に限らず、法人が発起人になることも可能です。ただし、法人の場合は設立する会社の定款に記載されている目的の範囲でしか権利能力を持たないという点に注意が必要です。
定款に記載されている目的とは事業内容のことで、事業内容がまったく異なる法人は発起人になれないのです。例えば、日用品の製造会社を設立する際にシステム会社が発起人になろうとする場合、両社の定款に記載する事業内容に関連性がない以上、発起人になれません。
このような場合に発起人となるためには、設立する会社の目的に「コンピュータの周辺機器の製造・販売」など、システム会社の事業に関わる内容を記載して関連性を持たせるという方法があります。
複数人にする場合の注意点
発起人の人数にも制限はなく、1人でも複数でもかまいません。1人会社の設立であれば、発起人と取締役、株主を1人で行います。
複数人の場合は出資金を多く集められるのがメリットです。ただし、複数人の場合、必要になる書類が増えて手続きが煩雑になるというデメリットも。重要事項を決める際も話がまとまらない可能性があります。
また、発起人は会社成立後に株主の立場になるため、複数人が発起人になる場合は株式の所有割合にも注意したいところです。所有割合は会社の意思決定に関わり、割合によっては経営権を左右することにもつながります。
この点も踏まえながら発起人を決めると良いでしょう。
会社法が規定する発起人の義務と責任
発起人は設立手続きにおいて、次のような義務と責任を負います。
- 現物出資の場合、その価額が定款に記載した額より著しく不足する場合に、不足額を支払う義務
- 設立に際し任務を怠り、会社に損害を与えた場合の責任
- 会社が不成立になった場合、後始末を行う責任
- 設立に際し第三者に対して損害を与えた場合の責任
発起人に責任が生じるのは会社設立までの行為です。発起人が複数人の場合は全員が連帯責任を負うため、手続きは慎重に行わなければなりません。
発起人の主な3つの役割
会社設立で行う発起人の仕事は、大きく次の3つに分けて行われます。
1.定款の作成など会社設立手続きを行う
初めに行うことは定款の作成です。定款とは、会社を運営するための根本規則で、必ず作成しなければなりません。定款には会社の目的や社名、事業内容、本店所在地など会社の基本的事項を記載しますが、それを決めるのも発起人の仕事です。
その後、発起人全員が定款に署名または記名押印(電子定款の場合は電子署名)します。株式会社の場合は公証人役場で定款の認証を受けなければなりません。その際は、発起人それぞれの印鑑証明書が必要です。
定款作成後は会社の資本金を発起人の個人口座に振込み、「払込を証する証明書」を作成します。
2.出資する
発起人は設立時に最低1株以上の株式を引き受ける義務があり、株式と引き換えに出資を行います。
発起人がすべての株式を引き受けて代表取締役に就任する場合が多いでしょう。第三者から出資を募集して出資金を集めることも可能で、集めた出資金は会社の資本金になります。
発起人は出資することで株主の立場になりますが、株主と同じではありません。株主は出資の額に応じて株式が発行され、持株数に応じた権利を持ちます。会社に対し義務を持つものではありません。
これに対し、発起人は全員株主になることが予定され、会社設立に対して義務を負います。
3.取締役を選任する
出資のあとは取締役を選任します。設立時には取締役を必ず選任しなければならず、取締役会を設置する会社は3名以上の選任が必要です。
監査役を設置する会社の場合は、監査役も決めます。1人会社の場合は発起人自身が取締役となるため、そのまま取締役の登記の手続きを行いましょう。
1人会社ではなくても、発起人自身が取締役になることは可能です。発起人としての仕事はこの選任で終了し、会社成立後の運営は選任された役員が行います。
最後に
発起人は会社設立の手続きを行い、必ず1株引き受けて出資しなければなりません。発起人の資格に制限はなく、事業の目的が共通すれば法人でもなれます。発起人は会社成立までの行為に義務と責任を負う点を理解し、慎重に手続きを進めましょう。