「医療ロボットにはどのような種類があるの?」
「医療ロボットを導入することでどんなメリットを受けられるの?」
医療現場に医療ロボットの導入を検討している人の中には、どんなロボットを導入すればよいのか迷っている人も多いのではないでしょうか。
医療ロボットには5つの種類があるため、導入目的に合わせて使い分ける必要があります。
本記事では、医療ロボットの種類や導入するメリット、導入事例などを紹介します。
おすすめの医療ロボットも3つピックアップして紹介するので、医療ロボット選びの参考にしてみてください。
医療ロボットとは
医療ロボットとは、医療現場で使われるロボットのことで、手術など処置を行うロボットもいれば、医療薬品を製造するのに役立つロボットもいます。日本は少子高齢化によって、2025年には3人に1人が65歳以上で、5人に1人が75歳以上になるといわれており、今後医療を必要とする可能性が高い人が増えるのは確実です。
一方、少子化で労働人口の減少により、医師や看護師など医療現場の労働者も減り、医療現場にかかる負担が増加することが予想されるでしょう。そのような医療現場の問題を解消するために、医療ロボットの開発が進められ、現在は医療業界におけるロボットの市場が拡大傾向にあります。
医療ロボットの5つの種類
医療ロボットにはどんな種類があるのか紹介します。医療ロボットの種類は、大きく分けて以下の5つです。
- 手術ロボット
- リハビリロボット
- 診療ロボット
- 調剤ロボット
- 補綴ロボット
順に紹介するので、どのタイプの医療ロボットが自身の医療現場に対応しているのか確かめましょう。
(1)手術ロボット
手術ロボットは、手術を補助するロボットのことです。医師が患者から少し離れた位置でカメラを見ながら操作を行い、操作通りに正確に手術を行うことができます。
手術ロボットを活用することで、人間に見えない範囲までカメラを通してチェックすることができ、損傷箇所を少なくし出血量を減らすことが可能です。人間が直接行うよりも医師のスキルに影響されないため、手術の成功率が高まるだけでなく、患者に与える負担も減らすことができるでしょう。
(2)リハビリロボット
リハビリロボットは、身体の麻痺から回復するためのリハビリをサポートしてくれるロボットです。リハビリロボットには、直接装着して身体を動かすサポートをしてくれるものもあれば、多方面からカメラでリハビリ者の身体の状態を分析し、どこを鍛えれば自然と身体が動くようになるのか助言をくれるものなどがあります。
事故や病気、身体の衰えにより歩行が困難になった人が、もう一度自分の力で歩けるようになる生活支援ロボットの開発も進んでいるので、特に注目を集めている医療ロボットの1つといえるでしょう。
(3)診療ロボット
診療ロボットは、診療の補助をしてくれるロボットです。情報通信技術の発展により、デジタル画像分析機能やセンシング(センサーでデータを収集すること)機能が登場し、医師が患者から遠く離れた場所にいてもロボットを介して診察できるようになりました。
病院が近くにない地域でもわざわざ病院を訪れ気軽に診察できるようになるため、今後、過疎地域など医師不足が深刻な地域を中心に拡大されることが予想されます。
(4)調剤ロボット
調剤ロボットは、薬剤師の業務を担うロボットです。主に、処方箋のデータに基づいて、薬品の選択や秤量、配分、分包を行います。特に、計量は手間のかかる作業なので、業務時間の短縮や薬剤師の負担の軽減につながるでしょう。
調剤ロボットの導入により、薬品の入れ間違いなどの人為的なミスを減らせるだけでなく、薬剤師を対人業務に充てられるので、患者と接する時間が増え、質の高い接客が可能になります。
(5)補綴(ほてつ)ロボット
補綴(ほてつ)ロボットとは、ロボット義手やロボット義足のことです。事故や病気などで腕や脚を失った人でも、自分の手脚のような感覚で物を掴んだり歩いたりできるようになります。
神経を通る微弱な電気信号を読み込み、身体の動きを促してくれるロボットの登場など、補綴ロボットの開発は進んでいるので、今後注目の医療ロボットの1つです。
医療ロボットの3つのメリット
医療ロボットを導入するメリットを紹介します。主なメリットは以下の3つです。
- 労働力不足の解消ができる
- 高精度な手術ができる
- 人為的ミスを防げる
順に紹介するので、どのようなメリットがあるのか頭に入れておきましょう。
(1)労働力不足の解消ができる
医療ロボットを導入することで、労働力不足の解消ができます。手術ロボットや診察ロボットなどを導入すれば、現場に必ずしも人員は必要ではありません。
特に地方の医療現場では、医師や看護師不足が蔓延しているので、医療を充実させるためのポイントになるでしょう。
(2)高精度な手術ができる
高精度な手術ができる点も大きなメリットです。医師のスキルに左右されずに、常に安定した技術で手術ができます。
患者の身体への負担が少ない手術が可能になるので、患者も安心して医療を受けることができるでしょう。
(3)人為的ミスを防げる
医療ロボットは精密に作業するため、人為的ミスを防ぐことも可能です。人間であれば、いくら細心の注意をしていても、ミスは生じる可能性があります。
特に医療のミスは命に直結するため、薬剤の量など100%ミスをしてはならない作業にロボットは最適でしょう。
医療ロボットの3つの課題
医療ロボットが抱える課題を紹介します。医療ロボットを導入する上で、避けては通れない問題は以下の3つです。
- 多額な初期投資の必要がある
- 現場で使いこなす必要がある
- 社会的イメージが低い
順に紹介するので、どのような問題があるのかチェックしておきましょう。
(1)多額な初期投資の必要がある
医療ロボットを導入するには、多額の初期投資が必要です。たとえば、手術ロボットを導入するためには、億単位のコストがかかります。
また、初期費用だけでなく、年間の維持コストも数千万円かかるので、導入後に正常に運営できるか計算しておく必要があるでしょう。
(2)現場で使いこなす必要がある
医療ロボットは導入したら終わりではなく、医師や看護師が使いこなす必要があります。医療ロボットは精密に稼働する分、操作方法が複雑なことがあるため、使いこなせるようになるまで時間がかかるものです。
使い方だけでなく、トラブル時の対応などマニュアルを覚えなければならない点が課題の1つといえるでしょう。
(3)社会的イメージが低い
医療ロボットの市場は拡大しつつありますが、まだ社会的に安心安全なイメージは薄いです。特に医療ロボットによる手術となると、社会的に浸透していないため、本当に安全なのか懐疑的な人も多いでしょう。
患者から信用を得られるように、医療ロボットの社会的地位を底上げする必要があります。
医療ロボットの導入事例
医療ロボットの導入事例を紹介します。今回紹介する導入事例は以下の2つです。
- 藤田医科大学
- 聖路加国際病院
順に紹介するので、どのように医療ロボットを導入したのかチェックしてみてください。
(1)藤田医科大学
藤田医科大学は、株式会社メディカロイドが開発したhinotori™のトレーニング施設「MIL™名古屋」を開所しました。hinotori™は、手術支援ロボットで、手術器具や内視鏡を取り付けた4本のアームが特徴で、コックピットから内視鏡の立体画像を確認して、アームを操作する仕組みです。
2022年の5月には30km離れた場所から操作して臓器手術をする実証実験が行われました。操作のラグがわずか0.025mm/秒だったことから、今後遠隔操作でもスムーズな手術が行われることが期待されます。
(2)聖路加国際病院
聖路加国際病院は、2011年から米国インテュイティヴ・サージカル社が開発したda Vinciを導入しました。当院にはロボット手術センターがあり、泌尿器科や外科、女性総合診療科(婦人科)において、1,000症例以上のロボット手術を行っています。
さまざまな症例でロボットによる手術が可能であることが証明されたので、医療の発展を望む病院は医療ロボットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
おすすめの医療ロボット3選
おすすめの医療ロボットを紹介します。今回紹介する医療ロボットは以下の3つです。
- hinotori™(株式会社メディカロイド)
- ウェルウォーク WW-2000(株式会社グッドライフデザイン)
- DimeRoⅡ(株式会社湯山製作所)
順に紹介するので、どのような医療ロボットがあるのかチェックして、ロボット選びの参考にしてみてください。
DimeRoⅡ【株式会社湯山製作所】
DimeRoⅡ(株式会社湯山製作所)は、フルオートの調剤ロボットです。薬品の選択から秤量、配分、分割、分包までの一連の散薬秤量調剤作業をしてくれるので、薬剤師が調剤業務に手間を割く必要はなくなります。
プログラミングに従って秤量や配分を行うため、人為的ミスを防ぐことができるだけでなく、少量分包にも対応しているので、どの患者のニーズにも沿うことが可能です。患者との時間を多くとって、接客の質を高めたい薬局におすすめのロボットです。
ウェルウォーク WW-2000【株式会社グッドライフデザイン】
ウェルウォーク WW-2000(株式会社グッドライフデザイン)は、歩行能力を上げるためのリハビリロボットです。入院から退院まで患者の状態に応じて、リハビリレベルを調整することができ、重度の麻痺患者でもリハビリが可能になります。
体幹支持ハーネスによって体重による負荷を軽減し、転倒防止ハーネスによって安全性も確保されているので安心です。自分の歩行状況をモニターで確認したり、収集したデータを参照したりしながらリハビリできるため、モチベーションを維持することもできます。患者が楽しくリハビリできる環境を整えたい施設は、導入を検討してみてください。
hinotori™【株式会社メディカロイド】
hinotori™(株式会社メディカロイド)は、藤田医科大学の導入事例でも紹介した手術支援ロボットです。手術に求められる術者の繊細な手の動きを実現できるロボットで、人の腕のようになめらかな動きをすることができます。
アームをコンパクトにセッティングできるため、医師の操作スペースを広くとることが可能で、ストレスなく作業に集中できるでしょう。高精細画像で細部まで精密に把握できるため、正確な手術をアシストしてくれます。
まとめ
医療ロボットの市場は拡大傾向にあります。初期費用がかかったり使いこなすまで時間がかかったりと課題はありますが、医療ロボットを導入することで、労働力不足の解消や人為的なミスの防止などさまざまな効果が期待できるでしょう。
医療ロボットの導入を検討している企業や施設は、今回紹介した3つの医療ロボットを参考にニーズにマッチしたロボットを選んでみてください。