働き方改革や新型コロナウイルス感染症の流行による自宅待機などで、社内勤務からテレワークを中心とした在宅勤務や社外勤務へシフトする企業が増えている傾向にあります。とはいえ、社内と同じあるいはそれに近いかたちで作業を行う環境をテレワークで実現するためには、それ相応の準備が必要です。
では、テレワークで必要なものとして何が挙げられるでしょうか。今回は、テレワークに必要な環境やあれば便利なグッズについて紹介していきます。
会社勤務と在宅勤務で作業環境は大きく異なる
テレワークとは「tele(離れた場所)」と「work(働く)」を組み合わせた言葉であることからもわかるように、会社から離れた場所で働くことを意味しているのです。具体的には、コワーキングスペースやサテライトオフィスなどレンタルした場所で仕事を行う「社外勤務」と、自宅で作業する環境を作って仕事を行う「在宅勤務」とがあります。
社外勤務、在宅勤務のどちらも会社から離れた場所で仕事が行われるので、テレワークだといえるでしょう。会社勤務と在宅勤務とでは作業環境が異なります。自宅はあくまでも生活するスペースです。
会社での業務を行えるような環境はもともと備わっていないため、テレワークを行うためにはその環境づくりが必要といえます。
在宅勤務に戸惑う会社員
こうした会社勤務と在宅勤務での作業環境が大きく異なるにも関わらず、その差に気づきにくいため在宅勤務に戸惑う会社員もいるかもしれません。働き方改革によって徐々に会社勤務から在宅でのテレワークへ移行した場合であれば、戸惑いは少ないでしょう。
ところが、新型コロナウイルス感染症の流行によりテレワークを余儀なくされる場合であれば、早急に作業環境を整えることが迫られます。PCを使ったデスクワークが中心となった現在、似ているようで大きく異なる自宅でのテレワークに迫られ、戸惑うのは致し方ないでしょう。
デスクワークの場合、環境さえ整えれば会社員が作業に慣れるのは時間の問題です。しかし会社と違って、自宅では顔を合わせたコミュニケーションができません。電話などのリモートでの連絡に頼るほかなく、コミュニケーションの取りづらさに戸惑うケースも見受けられます。
KDDIによる調査では、テレワークのデメリットの1位が「同僚との何気ないコミュニケーションがとりづらい」となっているのです。いずれにせよ、テレワークによるデメリットを理解したうえで、会社の業務が行える環境を整えることが求められます。
テレワークに必要なものと環境とは
では快適にテレワークを行うためには、どんな環境や備品が必要でしょうか。テレワークに必要不可欠なものから、あれば便利なものまで、考え出せばキリがありません。そこで、優先度の高いものから順番に説明していきましょう。
インターネット環境
テレワークで最低限必要なのが、デスクワークのためのパソコンとインターネット環境です。後でも述べるように、ウェブ会議やコミュニケーションツールなどを快適に行うためには、高速かつ安定したネット回線の準備が必要でしょう。マンションやアパートなど、高速なインターネット環境が備わっている場合には問題はありません。
しかし、スマートフォンのみでインターネットへとアクセスする機会が多い現在、マンションや一軒家に十分なインターネット環境が整っていないケースもあるでしょう。その場合には、通信速度の速い光回線の契約をプロバイダと行う必要があります。ただし、光通信の開通までに工事に要する時間が長いこともありますので、注意しましょう。
場合によっては、モバイルWi-Fiを使ってインターネット環境を素早く手に入れることも可能です。開通まで時間がかからないなど導入が容易である反面、セキュリティの問題からテレワークでの使用を禁じる会社もあります。
在宅勤務ではなく社外勤務を選ぶのでしたら、サテライトオフィスやコワーキングスペースでWi-Fiを利用することも可能です。しかし、どんなサービスを提供するのかは各所で異なりますので、事前に調査する必要があります。
後でもで述べるように、リモートデスクトップで社内のPCにアクセスしてテレワークを行う方もいるでしょう。リモートデスクトップでも安全なインターネット環境が提供されているかの確認は必要です。
パソコン周辺機器
会社が、テレワーク用のノートパソコンを支給するケースもあります。しかし自宅で一からテレワーク環境を作るためには、パソコンのほかにマウスやキーボード、ディスプレイなどパソコン周辺機器が必要です。
必要最低限を揃える場合には、これらのパソコン周辺機器の質を追い求める必要はありません。しかし作業効率を考えた場合、質の高いパソコン周辺機器を準備する必要も出てくるでしょう。たとえばキーボードの場合だと、タイピングしても疲れにくいものや打ち間違いの少ないものなど、高性能な製品が多く販売されています。
こうした高性能なパソコン周辺機器は必須ではありませんが、テレワークへ完全移行する場合には作業の効率や快適さを考えたうえで、徐々に高品質な機器を取り揃えるといいでしょう。
もちろん、購入したばかりのパソコン周辺機器だと使い勝手が悪いため、本来備わっている性能を十分に発揮させられません。使い慣れるまでの準備期間を設けるか、使い慣れた機器をテレワークでも使用するといいでしょう。
ウェブ会議で必要なカメラなどの周辺機器
テレワークを行うためには、パソコンにウェブ会議のできるソフトウェアやツールが必要です。そのため、会社の同僚に自分の顔を見せるカメラを用意しましょう。カメラの性能もピンからキリまでありますが、オンライン会議をするのに必要十分なカメラを用意することが重要です。
各種ソフトウェア・ツールを導入しよう
支給されるノートパソコンを除き、テレワークで必要なソフトウェアやツールを各自でインストールしなければなりません。
セキュリティ対策ソフトウェア
テレワークでもっとも重要なのがセキュリティです。社内勤務の場合には社内ネットワーク内での作業になりますので、重要な情報は外部に漏れ出ないように設定されています。
ところがテレワークの場合には、自宅や「サテライトオフィス」と呼ばれる勤務地以外に設置されたオフィススペースなどパソコンがインターネットと接続した状態で会社のファイルの操作が必要です。
つまり、インターネットを通じて重要な会社情報が漏れ出る可能性があります。会社の秘密情報が外部に流出すると、会社の信用問題にも関わるでしょう。
そこで必要なのがセキュリティ対応ソフトウェアです。マルウェアや外部からの侵入などを防ぎ、会社の重要な情報を外部に流出するのが食い止められます。
社内用のパソコンにリモートデスクトップで接続する方もいるので、セキュリティには万全の注意が必要です。最近ではサーバー上に仮想的にデスクトップ環境を作り機能を集約させた「VDI(仮想デスクトップ)環境」がテレワークで注目されています。
仮想デスクトップ上で会社の情報は留まり、テレワークを行う自宅やサテライトオフィスなど外部へは情報が保持されません。こうしたVDI環境を社内に準備するのも、重要なセキュリティ対策になります。
業務効率化におすすめのツール
社員を監視する管理職の立場ですと、テレワークによる生産性向上のために業務効率化が可能な環境を整える必要があります。
そこで、社員の勤怠状況を見える化する「勤怠管理ツール」や労働時間や在席状況を確認する「在席管理システム」、社員とのコミュニケーションを円滑にする「ビジネスチャットツール」や、チームでのタスクの進捗状況を「見える化」し管理する「タスク管理ツール」などを準備しましょう。
また、ファイルを保存する「ストレージサービス」や文章や表計算を共有するビジネスソフトなどで、クラウド上のファイルを共有すればチームの作業の効率化が望めます。
他にもタスク管理ツールや情報共有ツールなどがあれば、より効率的なテレワークを実現できるでしょう。
さらにはオンラン上での名刺交換ツールが活用されることもあります。
とにかくテレワークで役立つツールは、さまざま存在します。
具体的には以下のようなツールは、テレワークにおける業務効率化の一助となるでしょう。
勤怠管理ツール | ジョブカン レコル |
チャットツール | Slack LINE WORKS Chat Work |
クラウドサービス | Dropbox OneDrive AWS |
WEBミーティングツール | Zoom Skype Google Meet |
タスク管理ツール | Tollero Evernote Business Redmine |
情報共有ツール | Lucidspark Conflueence NotePM |
オンライン名刺交換ツール | Sansan ホットプロファイル Eight |
というようにテレワークを支えるツールは、さまざま存在します。
そしてツールによって、使い勝手や操作性、機能も異なるものです。
自社にフィットするツールを選択し、テレワーク全体の効率や正確性を高めていきましょう。
上記のツールに関して、さらに詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
デスク周りの作業環境を整えよう
パソコンやインターネット環境、社員たちと円滑に作業を行うソフトウェアやツールを整えたとしても、肝心の作業スペースが仕事に向いていなければ、社内と同じような生産性の高い仕事は行えません。仕事に必要不可欠ではありませんが、あれば便利なグッズばかりですので、ぜひ導入を検討してみましょう。
昇降式デスクなど高機能の机を検討しよう
一般的なデスクの高さは70cmほどです。パソコンの普及していなかった時代の規格であるため、現在のデスクワークに適していません。また身長差もあり、一般的なデスクが自分に最適とも限らないでしょう。
そこで便利なのが昇降式デスクです。自分の身長やデスクワークを行いやすい高さに変えることで、肩や腰への負担を軽くできます。
必要ならば、セカンドディスプレイや資料、お菓子やドリンクを置けるサイドテーブルがあると便利でしょう。
椅子はゲーミングチェアがおすすめ
デスクと同様に、作業を行いやすい椅子を準備しましょう。おすすめはゲーミングチェアです。高反発のウレタン製であったりヘッドレストやアームレストが付属していたりするなど、プロゲーマーが10時間連続でモニターに向かえように設計されています。そのため、長時間のデスクワークには最適のグッズです。
ただし、腰の負担を軽くするために通常のクッションをゲーミングチェアのうえに敷くと、型崩れが起きます。ゲーミングチェア用のクッションもありますので確認しましょう。
テレワークの便利・快適グッズリスト15選
比較的優先度の高いグッズを紹介しましたが、テレワーク環境を極めたい方もいるでしょう。そこで、より便利で快適なグッズを紹介します。
モニター
社内用パソコンのように、大画面でデスクワークをするためにモニターを用意しましょう。ノートパソコンのほかにセカンドディスプレイがあれば画面を大きく使えるため、作業効率も上がります。
モニターの性能もピンからキリまであり、画面が明るくて見やすいのはIPS液晶タイプのモニターです。ゲーミングモニターのように周波数の高いモニターは動画やゲームのような早い動きには対応しますが、デスクワークであればIPS液晶で十分ともいえます。
モニターアーム
モニターアームとは、パソコンのディスプレイの高さを調整するグッズです。
テレワークにおける首や背中の痛みを感じたことがある人は多いでしょう。
その原因は、ディスプレイの位置が低いからかもしれません。
ディスプレイの位置が低いと、どうしても前かがみで、首がやや下方向にむきます。
すると背筋が曲がって、首や腰に負担がかかるわけです。
しかしモニターアームを設置することで、ディスプレイの高さを調整できます。
高さを「目線から10cmほど下」にすることで、無理のない姿勢で作業することが可能です。
WEBカメラ
WEBカメラも、テレワークでは必要となるでしょう。
WEBカメラはミーティングツールなどで、こちらの映像を発信するために利用します。
パソコンにインカメラが備えられている場合もありますが、画質はさほどではありません。
しかしWEBカメラであれば、かなり優れた画質で、こちらの映像を発信することが可能です。
チェアマット
キャスター付きのチェアを使う際に必要なのがチェアマットです。フローリングが傷つくのを防ぎます。またデスクの重みで床が傷つかないよう、デスクとチェアの両方に対応したチェアマットを購入するのもいいでしょう。
フットレスト
デスクとチェアの高さが合わない場合には、フットレストを下に敷くと便利です。足やお尻への負担が軽くなります。
スタンディングデスク
スタンディングデスクとは、立った状態で作業することを前提としたグッズです。
テレワークでは、同じ姿勢で座り続けることが、心身の負担とストレスになります。
しかしスタンディングデスクで立ち仕事を取り入れることが可能です。
スタンディングデスクがあれば、座り仕事による心身の負担とストレスを和らげられます。
ちなみに「立ち仕事と座り仕事の組み合わせで作業効率が高まる」という研究結果も出ています。
玉川大学の研究では、「立ち仕事と座り仕事を繰り返せば、座り続ける場合と比べて作業効率が向上する」ということがわかりました。
ぜひともスタンディングデスクで、作業効率の向上を図りましょう。
【参考文献:座位・立位可変型作業の作業特性と有効性に関する研究(1)】
サイドテーブル
サイドテーブルがあれば、テレワークでの作業もより便利になるでしょう。
サイドテーブルとは、デスクの近辺に設置する、やや背丈が低い机のことです。
自宅のデスクが小さすぎて、作業しづらいと悩んでいる人も多いでしょう。
しかしサイドテーブルにデスク用品を移すことで、作業スペースが大きく広がります。
またサブのパソコンを置くなどして、より作業しやすい環境を整えることも可能です。
さらにサイドテーブルがあれば、ドリンクなども安心して置いておけます。
ネックピロー
ネックピローは、首元に巻きつけるクッションのようなものです。
テレワークでは座位での作業が多く、首の痛みや肩こりに悩まされます。
しかしネックピローがあれば、首から上を支え、体にかかる負担を軽減できます。
つまり首の痛みや肩こりを改善することが可能です。
また仮眠や休憩時にネックピローを使う、という方法もあります。
ネックピローに重心を預けることで、リラックスした瞬間を過ごすことが可能です。
集中ブース
本格的にテレワークの環境を整えるなら、「集中ブース」がおすすめです。
集中ブースは、デスク全体を覆うテントのようなもの。
「自宅では作業に集中できない」という悩みを抱く人も多いはずです。
たとえば漫画やゲーム機が目に入ってしまい、つい作業を中断してしまった、ということはないでしょうか?
しかし集中ブースがあれば、外部の情報を遮断して、作業に打ち込めるようになります。
注意して欲しいのは、集中ブースはそれなりに大型である、ということです。
集中ブースを設置するなら、おおむね1畳から1.5畳程度のスペースが必要となるでしょう。
ブルーライト眼鏡
モニターを長時間眺め続けるテレワークは目への負担が大きくなるため、睡眠の障害にもなります。パソコン専用メガネもありますが、透明に近いレンズを使ったブルーライト眼鏡がおすすめです。
ヘッドセットマイク
テレワークで欠かせないのが、同僚とのコミュニケーションでしょう。これを可能にするのが先に述べたようにウェブ会議ツールですが、音声を届けるためのヘッドセットマイクが必要です。
ノイズキャンセリング機能を搭載した、高性能なヘッドセットマイクも販売されています。どの程度の性能をもったヘッドセットマイクがテレワークで必要なのかを確認しましょう。
ドキュメントスキャナー
マルチコピー機からのスキャンも可能ですが、効率よくスキャンするためにはドキュメントスキャナーが便利です。なかにはスキャンされた原稿の種類を判別し、ストレージサービスに転送する機能を搭載したスキャナーもあります。こうした機能は、レシートをクラウド会計ソフトに転送する際には便利です。
ワイヤースタンド
本を開いたままで立てられるワイヤースタンドを用意すれば、姿勢を変えることなく資料の確認が可能です。スマートフォンやタブレットを備え付けるスタンドもありますので、一緒に活用しましょう。
加湿器
冬になると空気が乾燥するため、ウイルスに感染するリスクを高めます。そこで感染予防に役立つのが加湿器です。超音波式などコンパクトでコスパの高い加湿器も登場していますが、菌が繁殖しやすいために毎日の手入れが欠かせません。加湿器もピンからキリまでありますので、使い勝手の良さで選びましょう。
バランスボールなどの運動器具
在宅勤務で忘れがちなのが運動です。会社勤務の場合、移動で案外運動しています。そこで在宅勤務の運動不足を解消するために、バランスボールなどを活用しエクササイズしましょう。同時に免疫力も高められます。
テレワークではルールの整備も重要となる
本記事ではテレワークに必要なグッズやツールについて解説しました。
グッズやツールが充実すれば、テレワークの業務効率や働きやすさも向上するでしょう。
企業側としてはグッズやツールを支給し、従業員のパフォーマンスを高めていきたいところです。
ただしテレワークでは、「モノ」だけでなく「ルール」を用意することも重要です。
以下のようなルール付けで、トラブルのないテレワークを実現しましょう。
就業時間をきちんと管理する
テレワークでは、就業時間をきちんと管理することが重要です。
テレワークといえど、やはり組織全体で就業時間に沿った業務を進めるのは重要でしょう。
しかし就業時間の管理がずさんだと、「連絡を取りたいのに、パソコンの前にいない」というような不都合が考えられます。
またプライベートと業務の時間を混同するリスクについても考えておかなければいけません。
自宅だと監督する上司がいないので、業務が後回しになり、本来の就業時間を超過してダラダラと働き続ける社員も出てくるでしょう。
そうなると書類や成果物などの提出・納品期限超過などが懸念されます。
テレワークでもオフィスワーク同様、企業全体が足並みを揃えられるよう、就業時間をきちんと管理することが重要です。
進捗報告を義務付ける
テレワークでは進捗報告を義務付けることが重要です。
なぜならテレワークでは、報告がなければ進捗を把握しづらいから。
いくらコミュニケーションツールなどが充実してきたとはいえ、やはり「離れた場所で働いている」という以上、管理や監督が行き届かない部分もあります。
よって作業の進捗は、オフィスワークと比較して把握づらいはずです。
把握を怠っていると、後からまったく作業が進んでいないことが発覚する、といったことも考えられるでしょう。
だからこそテレワークでは、従業員に進捗報告を適切に義務付けましょう。
報告を受けていれば、遅滞のある業務があっても十分に対処することが可能です。
最後に
テレワークに不可欠なものから、あれば便利というものまで多くのグッズを紹介しました。重要なことは、社内勤務と似た環境を自宅などで作れるか、そして生産性向上のための環境整備です。
社員を監視する管理職の目線に立てば、自宅環境でも社員のモチベーションを維持できるかが重要となるしょう。
そのうえでは、
- インターネット環境の整備
- 各種ツールの導入
- テレワークに役立つグッズの設置
がポイントとなります。
テレワークの環境整備は、社員それぞれの工夫や努力による部分もあるでしょう。
しかし企業側でも各種ツールを導入するなどして、テレワークをサポートすることは可能です。
環境を整え、テレワークでも不自由なく働けるように工夫しましょう。