クライアントが求めるWebサイトを制作するためには、クライアントの要望や必須要件をまとめたヒアリングシートが大切です。
しかし、ただヒアリングシートを使えば良いというわけではありません。ヒアリングシートの効果を最大限に高めるためには、ヒアリングシートの項目や記入方法が重要です。
本記事では、ヒアリングシートの設問項目や記入時の注意点などを解説します。
Web制作におけるヒアリングシートの目的とは
Web制作でヒアリングシートを活用する目的は、大きく3つに分けられます。
-
課題を把握するため
-
求められている内容を把握するため
-
制作物のイメージを共有するため
それぞれのポイントについて解説をします。
課題を把握するため
Web制作では、「売上アップ」や「新規顧客の獲得」といったクライアントの課題を解決するWebサイトにすることが求められます。
そのため、クライアントがどのような課題を抱いているかを正確に把握するために、ヒアリングシートを使用したヒアリングが必要です。
さらに「なぜその課題を抱えているのか」「どのような解決策を期待しているのか」といった質問項目を設けることにより、クライアント自身も気付いていなかった潜在的なニーズを引き出せることもあります。
ヒアリングシートの設問に沿って、クライアントの課題を細かくヒアリングしていくことが、より満足度の高いWeb制作につながります。
求められている内容を把握するため
Web制作と一言でいっても、既存サイトへの新機能の追加、全体リニューアルなどさまざまな種類があります。
しかし、制作して欲しいWebサイトのイメージが漠然としており、どのような内容にするのか的確に伝えられないことも少なくありません。
漠然としたままWeb制作を行なうと、満足度の低いWebサイトになる可能性があります。
ヒアリングシートは、細かな質問を通してクライアントが抱くイメージを具体化するためにも有効です。
クライアントが求めるイメージが明確になれば、的確な提案を行なうことも可能です。結果としてお互いの認識のズレが少なくなり、よりニーズに合ったWebサイトを制作できるでしょう。
【決定版】ホームページ制作の依頼の工程とは?相場~準備物、注意点も解説
制作物のイメージを共有するため
Web制作には、ディレクター、Webデザイナー、エンジニアなど、複数の担当者が携わります。
そのため、担当者同士で情報共有ができていないと、クライアントの要望が正しく伝わらず認識がズレたまま制作が進むことがあります。
ヒアリングシートにクライアントからの回答を細かく記載することで、どの工程でもクライアントの意向やイメージを確認できます。
その結果、クライアントと各担当者との認識のズレを防ぎやすくなります。
また、ヒアリング担当者などに確認する機会が減るため、作業効率の向上といったメリットもあります。
Web制作のヒアリングシートで聞くべきポイント
ここでは、Web制作で使用するヒアリングシート内で、クライアントに聞くべき事柄を10個のポイントから解説します。
- 基本情報
- プロジェクトの概要
- ターゲット
- デザイン用兼の定義
- コンテンツ要件
- サイト機能要件
- サイトの管理状況
- スケジュールと予算
- 競合分析
- Webサイト完成後のメンテナンス・サポートについて
基本情報
ヒアリングシートで尋ねる基本情報とは、クライアントの会社名や担当者の氏名、連絡先といった情報です。
既存サイトのリニューアルの要望がある場合には、対象となるWebサイトのURLもきちんとヒアリングする必要があります。
また、基本情報のなかで特にヒアリングしておきたいことが、最終決定を下す決裁者が誰かということです。
担当者と決裁者が異なる場合、担当者がOKを出しても決裁者の判断で制作内容が大きく変わることがあります。
そのため、必ず決裁者についてもヒアリングし、役職名や氏名などを確認しておきましょう。
プロジェクトの概要
プロジェクトの概要とは、Web制作を依頼するに至った経緯、クライアントの目的や課題を把握するための情報です。
既存サイトや事業のなかで抱えている課題、具体的な目的や目標など、どのようなWebサイトを求めているのかをきちんとヒアリングしましょう。
ここでヒアリングした情報は、制作するWebサイトの方向性や機能に大きくかかわります。
そのため、できるだけ具体的な内容をヒアリングできるよう、回答などに応じてしっかりと深掘りしていくことが大切です。
ターゲット
ターゲットとは、Webサイトや商品・サービスなどを届けたい人物像のことです。
年齢や性別、職業など、具体的なターゲット像をクライアントからヒアリングし、認識を共有します。
もし、具体的なターゲット像をクライアントが把握していない場合は、ヒアリング担当者が主導して細かく決めていきましょう。
ターゲットへ効率よく訴求するために、どのようなデザイン・機能を求めるのかをクライアントと決めていくことが大切です。
デザイン要件の定義
クライアントのなかには、企業やブランドのイメージに強いこだわりを持つクライアントもいます。
そこで、企業のイメージカラーやブランドガイドライン、避けたいデザイン要素などを細かくヒアリングしましょう。
また、クライアントが参考にしたいWebサイトなどがあれば、URLなどを共有してもらうことも大切です。
参考となるWebサイトがわかると、イメージの認識を共有しやすくなるため、非常に重要な情報です。
コンテンツ要件
Webサイトには、ターゲットへのアプローチ方法としてブログ記事やLP(ランディングページ)などを設けることがあります。
そこで、こうしたコンテンツをどのページに設けたいか、どのような形式のコンテンツを求めているかなどをヒアリングで把握しましょう。
特に、既存のコンテンツがある場合は、それらを引き続き設置するのか、それとも新しく作り直すのかを確認しておく必要があります。
また、設置するコンテンツを誰が用意するのかなどもヒアリングしておくと、後々のトラブルを防げます。
サイト機能要件
Webサイトによっては、商品・サービスを効率よく提供するために、さまざまな機能が必要です。
例えば、ホテルや飲食店のWebサイトでは予約システムがあると、閲覧者がサービスの利用に進みやすくなるため、売上アップなどの目標につながります。
そこで、クライアントが求めるWebサイトの機能についても確認しておきましょう。
ただし、クライアントが機能の必要性を適切に判断できないことも多くあり、なかには不要な機能の搭載を求められることもあります。
このような場合は、きちんと不要な理由などを伝え、必要な機能のみを実装することも大切です。
サイトの管理状況
クライアントがWebサイトを運用している場合は、現在使用しているサーバー、ドメインなど契約状況の確認も必要です。
契約状況によってはサーバーのアップロードに対して容量制限があったり、何らかの制限がある可能性があるので注意しましょう。
スケジュールと予算
Webサイト制作のなかで起こるトラブルで多いのが、スケジュールや予算・制作費用に関係したことです。
スケジュール遅延や予算超過といったトラブルを避けるためにも、クライアントが想定しているWebサイトの公開日、Webサイト制作にかけられる予算を具体的にヒアリングするようにしましょう。
また、要望を聞くだけでなく、実現可能なスケジュールや予算をクライアントへ伝えることも大切です。必要であれば機能の削減などの提案も行ないましょう。
競合分析
クライアント企業と競合他社の違いや優位性などは、クライアントの魅力になります。
クライアントがベンチマークにしているWebサイトや、競合先と感じているWebサイトなどがあれば、きちんとヒアリングしましょう。
また、業界内で注目されているWebサイトのデザインやコンテンツは、クライアントの目的達成のヒントになる可能性があります。
そのため、こうしたWebサイトをヒアリングすることも大切です。
Webサイト完成後のメンテナンス・サポートについて
Webサイトは公開して終わりというものではなく、状況に合わせて定期的にメンテナンスや更新をしていくことで、より効果が高くなります。
しかし、公開後のメンテナンスやサポートには費用がかかるため、事前に話を詰めておかないと、運用費用が原因となりクライアントとトラブルになることもあります。
更新やメンテナンスの頻度、そもそもどこまでを自社が担当するのかを明確にすることが大切です。
ヒアリングシートの活用の仕方
ここでは、ヒアリングシートをどのように活用していくのか、ヒアリング全体の流れに沿って解説します。
- ヒアリングシートの用意
- ヒアリングシート送付
- 打ち合わせ
- ヒアリングシートの内容をもとに進行
ヒアリングシートの用意
まずヒアリングシートを作成します。
作成したことがなかったり、クライアントに合わせて項目を変更したりしようとすると、思いのほか手間がかかるでしょう。
そのため、ヒアリングや打ち合わせの日程に間に合うよう迅速に取りかかることが重要です。
また、クライアントの情報を細かく知ろうとすると、ヒアリングシートの質問項目が多くなってしまいます。
そのため、社名など自社で調べることができる項目や、最初の問い合わせで確認している情報などは事前に記載しておきます。
事前記入しておくことで、同じ内容の質問をすることがなくなり、効率よくヒアリングを行なえるでしょう。
ヒアリングシートの送付
クライアントと綿密な打ち合わせをするためには、事前にシートを送付して記載してもらい、その内容をもとに打ち合わせを進めることが有効です。
打ち合わせ時にクライアントからの回答が間に合うよう、早い段階でヒアリングシートを送付しましょう。
また、クライアントの回答を分析し、より具体的な提案ができるように準備しておくことも、打ち合わせのスムーズな進行には欠かせません。
そのため、打ち合わせ日の2~3日前を回答締切日とし、そこから逆算してクライアントの回答期間が長くなるようなスケジュールを組むことも大切です。
打ち合わせ
打ち合わせ当日は、回答をもらったヒアリングシートをもとにクライアントのヒアリングを実施します。
基本的にはシートの回答の深掘りや不明点の解明などを行ない、クライアントのニーズやWeb制作の目的などをお互いに理解して整理しましょう。
特に、シートへの回答だけでは不明な点、スケジュールや費用など調整が必要なことについては、この段階でしっかりと確認します。
もし具体的な回答が得られない場合は、プロジェクトを進行させず、回答を得られるまで繰り返し打ち合わせを行なうのが基本です。
ヒアリングシートの内容をもとに進行
ヒアリングシートの回答や打ち合わせを通して、制作するWebサイトの方向性や具体的なスケジュール・費用などが確定したら、Webサイト制作に移ります。
この際、ヒアリングシートや打ち合わせで決まった事項はクライアントだけでなく、自社の制作担当者などとも共有しておきましょう。
Web制作にかかわる全員がヒアリングシートや決定事項を確認することで、よりクライアントの意向に沿ったWeb制作が行なえます。
また、あとから仕様が違うといったトラブルを防ぐことにもつながるため、クライアントへの送付も忘れないことが大切です。
ヒアリングシート作成時の注意点
ここでは、クライアントのニーズをしっかり把握するために有効な、ヒアリングシート作成時の注意点について解説します。
ヒアリングシートの作成=目的ではない
ヒアリングシートは、あくまでもクライアントのニーズや目的などを明確化し、認識を共有するためのものです。
ヒアリングシートを作ること自体が目的ではないため、シートの作成だけに注力しないようにしましょう。
また、ヒアリングシートの内容だけを尋ねたり、クライアントからの要望を受け身で聞いたりするだけのヒアリングは、クライアントのニーズや目的を深掘りできません。
質問の内容を変えたり、回答に合わせて提案をしたりすることで、クライアントが満足するWebサイトの制作につながります。
専門用語を多用しない
Web業界では、一般的ではない横文字や英単語が多く使われます。「CMS」や「ドメイン」といった用語を、すべてのクライアントが理解しているとは限りません。
そのため、クライアントに回答してもらうヒアリングシートでは、なるべく専門用語を使わず、わかりやすい言葉を使うことが大切です。
また、ヒアリングシートで専門用語を多用してしまうと、クライアントとの認識がズレる原因となります。
意味を間違えていたり、わからないままクライアントがOKしていたりすると、のちのちトラブルにつながる可能性があります。
デザイン(言語化できないもの)は視覚化させる
クライアントと認識のズレが起きやすいのが、Webサイトのデザインです。
例えば、クライアントから「明るいイメージ」という希望があっても、クライアントと制作担当者が考える「明るいイメージ」は異なる可能性があります。
そのため、デザインなど言葉で伝えきれないものは、サンプルや参考Webサイト、過去の制作事例といった具体例を用いて、お互いの認識を擦り合わせることが大切です。
抽象的なイメージのままWeb制作を始めないように十分注意しましょう。
クライアントに合わせてカスタマイズをする
ヒアリングシートで質問する内容は、複数のプロジェクトで同じであることが多いため、一度作成したシートをほかのプロジェクトに使いまわすことが可能です。
しかし、深く考えずにそのまま使いまわすと、聞く必要のないことや効果の薄いことなども質問してしまいます。
そのため、クライアントの業種や事業内容などに合わせて、質問内容をカスタマイズしましょう。
また、何度もヒアリングシートを使っていくなかで、不要と感じる質問や必要性が低いと思われる項目も出てきます。そのような項目は、シートから削除しておきます。
定期的にヒアリングシートの質問をブラッシュアップし、よりWeb制作に役立つシートになるようにしていきましょう。
まとめ
ヒアリングシートは、クライアントが抱いている課題や要望を聞き出し、共有する目的で使われます。クライアントのニーズを叶えるWebサイトを制作するために、重要な資料の一つです。
しかし、ヒアリングシートの設問内容や、シートに書かれた内容をただ質問するだけでは、クライアントの要望や潜在的ニーズを理解することはできません。
回答内容をふまえたうえで、クライアントのニーズを深堀りするようなヒアリングを実施し、しっかりとWeb制作に反映させましょう。
以下の記事では、Web制作会社のなかでも特におすすめの制作会社を紹介しています。制作会社を選ぶ際の着眼点などを解説していますので、ぜひ自社のサービス体制などを見直すときの参考にしてください。