ホームページを制作するにあたり、IT導入補助金を活用できないか検討しはじめている方もいるでしょう。
しかし、2024年度版の制度の適用を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。
そこで本記事では、「IT導入補助金2024」の対象となるホームページ制作の内容や、申請の流れについて説明します。
なお、同制度の対象外となってしまった場合でも、ホームページ制作に活用できる補助金は複数あります。これらについても紹介するので、併せて参考にしてください。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業や、個人事業主を含む小規模事業者を支援する制度の一つです。
業務効率化やDXに向けたソフトウェアやサービスなど、生産性を向上するITツールを導入する際に、その経費の一部が補助されます。
制度の適用を受けるには、資本金や従業員数について業種ごとの要件を満たさなければなりません。
詳細な条件や補助内容は年度によって異なるため、これから申請する場合は最新の情報を確認しましょう。
IT導入補助金2024の募集類型と補助額
2024年度のIT導入補助金には、次の4つの「枠」があります。2023年度と比較すると、「デジタル化基盤導入枠」が廃止され、代わりに「インボイス枠」が新設[作成者5]
されました。
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通常枠:業務効率化などに向けたITツールの導入
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インボイス枠:インボイス制度に対応するための会計ソフトや受発注システムなどの導入
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セキュリティ対策推進枠:サイバー攻撃に関するリスクの低減
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複数社連携IT導入枠:サプライチェーンなどの強化
さらに、「インボイス枠」は「インボイス対応類型」と「電子取引類型」に分かれます。これにより2024年度のIT導入補助金の募集類型は、全部で5つとなっています。
以下は、それぞれの募集類型における補助率と補助額の概要です。
枠/類型 | 補助率 | 補助額 |
通常枠 | 1/2以内 | 450万円以下 |
インボイス枠/インボイス対応類型 | ソフトは最大4/5いない(条件による)ハードは1/2以内 | ソフトは350万円以下、ハードは10万円以下または20万円以下(補助対象による) |
インボイス枠/電子取引類型 | 最大2/3以内(事業規模による) | 350万円以下 |
セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内 | 100万円以下 |
複数社連携IT導入枠 | 最大4/5以内(補助対象によって異なる) | 合計3,200万円以下 |
ホームページ制作はIT導入補助金の対象になる?
4つある「枠」のうち、ホームページ制作の経費が対象となるのは「通常枠」です。
ただし、支援を受けられる可能性があるホームページは、生産性の向上を目的としてITツールを導入したものに限られます。
そのため、企業の広報・宣伝などを目的とする、ごく一般的なホームページはIT導入補助金の対象とはなりません。
また、ECサイトについてはこれまで対象に含まれていましたが、2024年度から対象外となりました。
なお、一般的なホームページやECサイトの制作にあたっては、IT導入補助金とは別の制度を利用できる場合があります。詳しくは後述するので、併せて参考にしてください。
IT導入補助金の対象となるホームページのITツール例
どのようなホームページがIT導入補助金の対象となるのか、なかなかイメージしづらいかもしれません。例えば、以下のITツールを取り入れたホームページ制作であれば、同制度の支援を受けられる可能性があります。
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顧客対応機能
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顧客管理システム(CRM)
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マーケティングオートメーション(MA)
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予約管理システム
いずれも生産性向上を目的とし、ホームページに業務効率化のためのITツールを導入しているのが特徴です。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
顧客対応機能
ホームページに接客用のチャット機能が組み込まれているのを目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
チャット機能は、オンラインでの顧客対応を効率的に行なうために導入されたものです。
なかには、「チャットボット」と呼ばれるソフトウェアを用いたホームページもあります。
チャットボットでは、「よくある質問」に自動的に答えたり、必要に応じて人間のオペレーターに顧客を転送したりといったことが可能です。
関連記事:
チャットボットおすすめ16選!サービスを選ぶときに注目すべき5つのポイント
顧客関係管理(CRM)
CRMとは、顧客との関係性を良好に保つための管理手法や、そのために用いるITツールのことです。顧客情報や対応履歴を効率的に共有し、顧客それぞれに最適なタイミングでのアプローチをサポートすることで、顧客満足度を高めます。
CRMは基本的に社内向けツールですが、対外的なホームページに取り入れることも可能です。
例えば、カスタマーサポートのページを設ける際に、その対応履歴をCRMに取り込むケースなどが考えられます。
マーケティングオートメーション(MA)
MAとは、マーケティング活動の自動化の取り組みや、そのために用いるITツールのことです。
見込み顧客を獲得するとともに、購買意欲を高める情報を提示するなどの自動的なアプローチで、商談にいたるまでの過程を効率化します。
ホームページ制作に取り入れれば、顧客が関心を持っている情報や、関連性の高い広告などを最適なタイミングで提示できるようになるでしょう。
関連記事:
【決定版!】見込み顧客とは?潜在顧客との違いや優良顧客に育てるステップを解説
予約管理システム
予約管理システムとは、予約の受け付けや管理を行なうITツールのこと[作成者19]
です。
ホームページ制作に取り入れれば、顧客からの予約を自動的に管理できるようになります。
電話対応をしなくても、24時間365日いつでも予約を受け付けられるため、業務が効率化されるでしょう。
詳細は採用するITツールの種類によって異なりますが、予約時の決済や、リピーター獲得に欠かせないアフターフォローなどの機能を備えたものもあります。
IT導入補助金を申請する流れ
IT導入補助金を申請して交付されるまでの流れは、おおむね次のとおりです。
1. gBizIDプライムの取得
2. 「SECURITY ACTION」の宣言
3. 「みらデジ経営チェック」の実施
4. IT導入支援事業者とのマッチング・ITツールの選定
5. 交付申請・決定・交付
それぞれの段階で何をする必要があるのか、簡単に説明していきます。
gBizIDプライムの取得
IT導入補助金を申請するには、事前に「gBizIDプライム」アカウントの取得必要です。このアカウントは、さまざまな行政サービスへのログインを可能にする共通認証システムである「GビズID」が提供しています。
アカウントの発行は、オンライン申請なら最短即日発効、書類郵送申請では原則2週間以内に発行されます。書類郵送申請の場合は、念のため早めに取得しておくようにしましょう。
「SECURITY ACTION」の宣言
情報セキュリティ対策への取り組みを自己宣言する「SECURITY ACTION」制度への対応も、IT導入補助金を申請する際の要件です。
同制度には「一つ星」および「二つ星」の2段階の取り組み目標が定められており、いずれかを宣言する必要があります。
IT導入補助金の申請時には、「SECURITY ACTION」の宣言を行なう際に登録したアカウントID(自己宣言ID)の入力が求められます。
「みらデジ経営チェック」の実施
IT導入補助金の「通常枠」に申請するためには、事前に「みらデジ経営チェック」の実施が必要です。「インボイス枠」と「セキュリティ対策推進枠」については必須ではありませんが、チェックを実施すれば加点を受けられます。
同チェックは、現在の経営課題を可視化し、その解決に向けた「気付き」を得るために役立つものです。
IT導入補助金に関連する取り組みを、単なるITツールの導入で終わらせないためにも有効活用するとよいでしょう。
なお、チェックを受ける際には「gBizIDプライム」アカウントを使用します。
IT導入支援事業者とのマッチング・ITツールの選定
IT導入補助金の申請は、あらかじめ登録された「IT導入支援事業者」とのパートナーシップに基づいて行なわなければなりません。
具体的な支援事業者とITツールはIT導入補助金のホームページ上で検索できるので、自社の課題にマッチするものを選定しましょう。
選定を終えたら、支援事業者との商談を進め、申請に向けて事業計画の策定などを行ないます。
交付申請・決定・交付
IT導入支援事業者から「申請マイページ」への招待を受けると、申請が可能になります。まずは基本情報などを入力し、必要書類を添付しましょう。
次に、実際に導入するITツールの情報や、事業計画値などを支援事業者が入力します。入力内容を確認して提出すれば、申請完了です。
申請内容が採択されると、交付決定の通知が届きます。この段階で、ITツールの契約と導入を実施しましょう。
導入完了後に「申請マイページ」から事業実績報告を行なうことで、補助金が交付されます。
ホームページ制作にIT導入補助金を活用する際の注意点
IT導入補助金を利用してホームページを制作する際は、以下の点に気を付けましょう。
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必ず採択されるわけではない
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交付決定前にITツールを契約しない
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信頼できるIT支援事業者を選択する
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必要書類を漏れなく準備する
それぞれの注意点について、詳しく説明します。
必ず採択されるわけではない
IT導入補助金は、申請すれば必ず交付されるわけではありません。募集類型による差もありますが、実際の採択率は60〜80%程度となっています。
ただし、募集期間は年度内に複数設けられており、次回以降の再申請も可能です。
不採択となってしまった場合は、事業計画などを見直したうえで、もう一度挑戦するかどうか検討すればよいでしょう。
交付決定前にITツールを契約しない
ITツールの契約は、交付決定の通知を受けたあとに可能になります。交付決定前に発注や支払い、導入などを進めると、補助金の対象外となるため注意が必要です。
せっかく申請した補助金が無駄にならないように、契約のタイミングは十分に気を付けましょう。
信頼できるIT支援事業者を選択する
IT支援事業者は、補助金の採択率にも影響する大切な存在です。
また、単に補助金の申請に必要な第三者というだけでなく、自らの生産性向上を目指すためのパートナーでもあります。目的を達成するためには、信頼できる相手を選ばなければなりません。
具体的には、以下のような点に着目してIT支援事業者を選ぶとよいでしょう。
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業務効率化に適したITツールを提案してもらえるか
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IT導入補助金の申請や採択について実績が豊富か
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迅速で丁寧な対応をしてくれるか
必要書類を漏れなく準備する
IT導入補助金は「GビズID」や「SECURITY ACTION」、「みらデジ経営チェック」といった事前準備を行なったうえで、いくつかの必要書類を添付して申請する必要があります。
このとき、書類に不足があると採択されません。書類自体はそろっていても、内容に不備があれば採択される可能性は低くなってしまいます。
申請にかかった手間と時間を無駄にしないためにも、提出する書類は細部までしっかりチェックして、漏れのない状態にすることが重要です。
IT導入補助金以外にホームページ制作に利用できる補助金
制作予定のホームページが、IT導入補助金の対象にはあたらないケースもあるでしょう。その場合、利用できる可能性のある補助金制度があります。
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小規模事業者持続化補助金
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事業再構築補助金
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ものづくり補助金
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地方自治体の補助金
それぞれの概要を説明するので、活用できそうかを確認してみてください。
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、日本商工会議所が提供する補助金です。
今後も地域を支えていく小規模事業者の生産性向上と持続的な発展を目的として、その取り組みにかかる経費の一部を補助します。
補助対象には「広報費」や「ウェブサイト関連費」が含まれるため、ホームページ制作に活用しやすいでしょう。
広報・宣伝のための一般的なホームページだけでなく、ECサイトを開発するにも利用可能です。
「通常枠」で支援を受ける場合、補助率は対象となる経費の2/3、補助上限は50万円となっています。
事業再構築補助金
「事業再構築補助金」は、新型コロナウイルス感染症の流行を契機とする、事業再構築のための経費の一部を補助する制度です。
新規市場への進出や業種転換、事業再編などの思い切った施策に意欲のある中小企業を支援します。
ホームページを制作する理由が事業の再構築であれば、同制度を利用しやすいでしょう。
補助率や補助上限は、再構築の内容や従業員数によって異なります。
ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は、中小企業や小規模事業者による設備投資などの取り組みを補助する制度です。
革新的サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善などの支援を目的としています。
ホームページ制作についても、制度の目的に合う内容であれば申請可能です。
広報・宣伝のための一般的なホームページは対象外となりますが、ECサイトやマッチングプラットフォームなどの開発については支援を受けられるでしょう。
地方自治体の補助金
自治体のなかには、ホームページ制作に補助金を出すところがあります。
以下は、東京都で利用できる補助金の例です。
・中小企業ホームページ作成費補助金(中央区):ホームページの解説や変更を補助
・ホームページ作成費補助(江東区):ホームページの開設を補助(リニューアルは対象外)
・ホームページ作成・更新補助金(足立区):ホームページの開設やリニューアルを補助
このように、補助対象は自治体ごとに異なります。お住まいの地域でどのような補助金が利用できるか、一度はチェックしておくとよいでしょう。
まとめ
IT導入補助金は、生産性向上を目指す中小企業や小規模事業者を支援する制度です。業務効率化のためのITツールを活用したホームページ制作においても、条件を満たしていれば補助を受けることが可能です。申請には正しい手順が必要となるので、しっかりとチェックしながら進めましょう。
なお、ホームページ制作に利用可能な補助金制度は、ほかにもあります。本記事で紹介した内容を参考に、最適なものを選びましょう。