企業の運営者自らが、自社の商品やサービス、また特徴、魅力、事業のコンセプトなどを紹介しているのがオウンドメディアの魅力です。しかし自社が全て運営するとなると、費用やスキルなどが心配になるのではないでしょうか。
この記事では、オウンドメディアのメリットやデメリット、さらにそれぞれの工程また種類の費用相場を解説していきます。オウンドメディア作成をお考えの場合はぜひ参考にしてください。
1.オウンドメディアとは
オウンドメディアは、運営者が自ら、商品やサービス、コンセプトなどを紹介していくマーケティング手法に用いられます。
近年ではオウンドメディアを運営する企業が増えており、オウンドメディアの概要や注目されている理由、また他のマーケティング方法との違いを詳しく説明していきます。
(1)オウンドメディアの概要
オウンドメディアの運営は、ユーザーに気に入られるような情報を発信し、企業や企業のサービスに興味を持ってもらうことからのスタートとなります。その為時間はかかりますが、一度興味を持ってもらうと長期間利益をもたらす可能性が高くなります。
また現在ではSNSで拡散機能を活用できるため、積極的に企業側から活動する必要はありません。
オウンドメディアの大きな特徴として、ストック型であることが挙げられます。発信した情報は一時的なものではなく、蓄積をしていくことができるためそのまま企業にとっては資産価値が出てきます。
そのため、これらの情報はユーザーとの接点として、何度でも利用することが可能です。
(2)オウンドメディアが注目される理由
オウンドメディアの運営では、広告宣伝はせずにユーザーからのアクセスを待ちます。
これまでは即効性のある広告を利用していた企業も、広告の効果が落ちたことから、一度優良な顧客をつかむと長期間にわたって利益をもたらすことができるオウンドメディアに注目をし始めるようになりました。
広告の効果が落ちた理由の一つが、 ユーザーにとってどんな広告であっても不快感を感じるケースが増えていることです。特にスマートフォンのような小さな画面で広告が入ってくると、イライラするユーザーも少なくありません。
なかには、そういった不快感を防ぐために広告ブロック機能を搭載しているスマートフォンもあるほどです。
また、オウンドメディアが注目された理由として、 Google による検索アルゴリズムが変化したことが挙げられます。今までは被リンクの数が重要視されており、中には有料のリンクを購入してまで順位を上げるサイトも少なくありませんでした。
しかし、いくらリンクが多くても閲覧者にとって重要な情報が提供されているとは限りません。そこで、 Googleではユーザーにとって有益な情報をもたらすことが高い評価を得られるように、アルゴリズムが変化していきました。
そのため、一時的な Web広告をするよりも、ユーザーにとって有益な情報を提供することが必要なオウンドメディアを利用する企業が増えていったのです。
(3)他のマーケティング方法とオウンドメディアの違い
オウンドメディアは、広告を積極的にするわけではありません。少しでもユーザーに有益なコンテンツを提供することにより、 ユーザーからのアクセスを待っているスタイルです。
そのため、マーケティング戦略としてはこれまではあまり積極的に導入する企業は多くありませんでした。しかし Google の評価がユーザーファーストに変わり、スマートフォンやインターネットの普及が高まったことからユーザーは自分で情報を集められる時代となっています。
また、ユーザーが気に入った情報は SNS で拡散することが多いため、企業が発信していくのではなくユーザーに企業や企業の商品を気に入ってもらうことにより、自分からアクセスや拡散をしてもらうことが大きな目的です。
オウンドメディアは他のマーケティング方法と比べて効果が出るまで時間がかかりますが、一度効果が出ると企業にとっての資産価値となり、長期間にわたり利益をもたらす可能性が出てきます。
オウンドメディアは自社で運営していることにより、せっかく載せた情報をサイトから消す必要はありません。
2.オウンドメディアを構築するメリット
オウンドメディアを構築するメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 広告宣伝費を節約できる
- 新規顧客とリピーターが獲得できる
- コンテンツを資産化できる
- ブランディングの向上に繋がる
- 認知拡大・ビジネス拡大が見込める
(1)広告宣伝費を節約できる
自社で自ら宣伝をするのではなくユーザーが検索してホームページを探すことになるため、広告宣伝費は基本的にかかりません。広告宣伝費をかけずに新規顧客を獲得し、さらに優良顧客に育てられるため、営業が楽になります。
また、営業が楽になることで売り上げが上がることが期待できます。広告の効果によって売上を上げることはできますが、あくまで一時的なものであり広告を止めてしまうと売上が下がってきてしまいます。
さらに、広告を継続しているとその分の費用がかかるため、売上が上がったとしても決して費用対効果が上がったとは言えません。
そこでオウンドメディアを活用することで、一度優良顧客をつかむと長期間に渡り利益が出やすくなるでしょう。
(2)新規顧客とリピーターが獲得できる
自社のコンセプト、サービス、商品などの魅力が顧客に伝わりやすいマーケティング方法であるため、新規顧客を獲得しやすくなるでしょう。
さらに、ただ一方的に顧客に対して宣伝をしているわけではなく、顧客のニーズに合った記事を重点的に書いていることから、新規顧客だけではなくリピーターを獲得しやすいメリットがあります。
オウンドメディアのマーケティング方法は、一時的なものではなくストックされるため、長期間にわたり新規顧客やリピーターを生み出せる可能性が高いといえます。
(3)コンテンツを資産化できる
自社でコンテンツを保管することができるため、資産化できるメリットがあります。
外部サイトだと掲載期間が決まっているために資産化することはできませんが、自社のサイトであることから、掲載期間がなく長期間にわたって利益をもたらしてくれる資産となる可能性があります。
さらに、企業を気に入ってもらうことで、営業がしやすい他新事業をした場合でもいいイメージを持たれることになるでしょう。
(4)ブランディングの向上に繋がる
自社でコンテンツ運用をすることによって、ブランディングを基にしたユーザー教育につながりやすくなるでしょう。
オウンドメディアの目的は、ユーザーが持っているニーズに合うような記事を発信していき、企業や商品に興味を持ってもらい長期間にわたって優良顧客になってもらうことです。
インターネットやスマートフォンが普及した昨今において、ユーザーに対して有益な情報を提供しているサイトには繰り返し訪問してくれるユーザーが多い傾向にあります。
また、複数の記事を読むことにより、「役に立つ情報だからまた読みにきたい」「ユーザーのことを考えてくれている」と会社に対して認識を持つようになります。
(5)認知拡大・ビジネス拡大が見込める
オウンドメディアにより企業や企業の商品を好きになるユーザーが増えることで、認知拡大やビジネス拡大が見込めます。
ユーザーが好印象を持っている時点で、製品やサービスを販売する時に営業しやすいことは言うまでもないでしょう。また、好印象を持ってくれたユーザーは SNS などを使って拡散してくれるため、 ユーザーがさらにユーザーを呼ぶ好循環になるのです。
企業の好感度が高まると、ユーザーの獲得以外に就職を希望する求職者が増えることも期待できます。高齢化社会や少子化が進む日本において、採用が楽になるのは大きなメリットです。
また、企業のイメージを求職者が始めから持つことにより、ミスマッチングを減らせる効果もあります。有能な人材が入社してくれることにより、さらにビジネス拡大をする可能性を秘めているといえます。
商品やサービスだけでなく企業に対して良いイメージがあるため、たとえ新しい事業であっても、その企業が認められておりいい印象を持ってもらえていると、新事業が成功する可能性をグッと高められるでしょう。
3.オウンドメディアを構築するデメリット
オウンドメディアは以下のようなデメリットもあります。
- 時間がかかる
- コストがかかる
(1)時間がかかる
オウンドメディアは自社で運用するため、構築するまでに時間がかかります。また、構築だけでなく、実際にマーケティング効果として発揮されるようになるまではさらに長時間かかることがあります。
広告メディアを利用するとすぐにアクセス数が増えるといった即効性は期待できますが、自社で運用する場合は、即効性はまずないといって良いでしょう。
オウンドメディアにおいて、アクセスを増やすためにはGoogleからサイト自体が高評価をされることにより、検索順位を上げる必要があります。しかし近年この評価をするのに時間が必要になっており、長期間対応をしていくことになるでしょう。
またユーザーの声や、経済状況の変化、社内での新商品、新サービスの発表などについて、その都度内容を新しくしていく必要があります。
(2)コストがかかる
オウンドメディアを作成するためには、以下の費用がかかります。
オウンドメディアであっても、基本的な費用の項目に関しては他のホームページと大差ありません。
費用の項目 | 一般的な相場 |
企画やディレクション | 約5万円~15万円 |
運用費 | 月額2万円~5万円 |
デザイン・コーディング費用 | 約15万円~30万円 |
コンテンツの制作費用 | 約5万円~25万円 |
企画やディレクションについて、テンプレートやCMSを利用すると費用を抑えることができますが、オリジナルデザインを構築したり依頼ペースが増えたりすると、必然的に費用が高くなります。
デザイン・コーディング費用も同じように、CMSやテンプレートを使うと費用を抑えることができますが、オリジナルにした場合は費用が高くなります。さらに問い合わせフォームなどの機能を設置すると、費用が高くなる場合もあります。
運用費には、サーバーの保守、問い合わせ対応、SEO対策、アクセス解析などが含まれます。月額費用で支払うケースが基本のため、突然料金が高くなることはなくランニングコストとして計算しやすくなっているのが特徴です。
最後にコンテンツ制作費ですが、ブログのような内容から、インタビュー記事、動画コンテンツなど内容によって料金が大幅に変わります。
また内容が専門的な分野であれば、上記の料金よりも高くなる可能性があります。自社のノウハウがないと書けないような内容は、結果的に自社で書く必要がある場合もあります。
そのため、コンテンツの制作において、可能であれば社内にスタッフを配置することが理想的です。
4.オウンドメディア構築にかかる費用はどのくらい?
オウンドメディア構築をするうえで、最も気になるのは費用ではないでしょうか。
一般的なホームページ制作会社に依頼するのと同じように、製作スタッフの人件費、企画関連の費用、デザイン料、コーティング料などさまざまな費用が必要になります。
ここでは企画、コーディング、コンテンツ制作、運用にわけてそれぞれの相場をご紹介していきます。
(1)企画費用
オウンドメディアに関わる企画費用ですが、10万円〜30万円が相場です。企画内容として自社のブランディング設計からコンセプト設計まで、オウンドメディアのメインとなる部分の設計となります。
この企画で、ターゲットが提供する情報の内容などといった土台作りをしていきます。 またこの時点で全体的な目標や設計なども必要になります。この時点でオウンドメディアが成功するかどうかが決まるといっても過言ではありません。
(2)コーディング費用
コーディング費用はデザイン費用と含めて、30万円〜80万円となります。コーディングテストにおいては、プログラミング言語を使うことにより、ソースコードを作っていきます。コーディングがあって、はじめてサイトで実装することができます。
専門的な分野であるため費用が高くなりがちですが、近年では CMS ツールを使うことによって費用を抑えることができます。
CMSのカスタマイズは専門的であり自社で行うことは難しいですが、それでもプログラミング言語を使うよりも費用は一般的に安く設定しています。
(3)コンテンツ制作費用
コンテンツ制作費用は、1記事で2万円~10万円と幅が広くなっており、記事の内容や種類によって費用が異なります。特に専門的な内容が多く含まれると、その分費用は高くなる傾向にあります。
ホワイトペーパーやメールマガジンのような文章を作成する場合は、価格相場が高くなることが多いでしょう。また、コンテンツに動画を含める場合はその分の制作費用や運用が必要になるため、費用は高くなります。
(4)運用費用
運用費用に関しても料金体系が業者によって大幅に変わりますが、一般的に月額制で2万〜3万円が相場となります。運用費に含まれているのはサーバー代やドメイン代、保守作業などが一般的です。
この運用費用に関しては、オウンドメディアと一般のサイトでほとんど変わりはありません。
ここまでの費用を全て合計して、それぞれのオウンドメディアにおいての相場は以下のようになります。
種類 | 相場 |
CMSを利用したオンディメディア | 15万円~25万円 |
オリジナルデザインを使ったオウンドメディア | 30万円~50万円 |
オリジナルデザイン+コンテンツ制作をした場合の温度メディア | 50万円~80万円 |
それぞれについてデザイン案やレイアウト案があれば、さらにコストを抑えられる可能性があることも押さえておきましょう。
5.オウンドメディアの構築方法
オウンドメディアは、以下の手順で構築をしていきます。
【オウンドメディア構築手順】
- 目標とターゲットを明確にする
- サイトコンセプトを設定する
- カスタマージャーニーの設計をする
- サイトとコンテンツを制作する
- SNSでのコンテンツ拡散
(1)目標とターゲットを明確にする
オウンドメディアを構築するうえで、まずはメディアのターゲットや目標を明確にすることが重要です。オウンドメディアはユーザーのニーズが高い文章を書くことで、ユーザーに企業や商品のよさを理解してもらい優良顧客を増やせるのが大きなメリットです。
そのため、ユーザーのニーズをつかむためには、目標やターゲットあらかじめ明確に絞っておく必要があります。
(2)サイトコンセプトを設定する
目標やターゲットの設定が終わったら、次にサイトコンセプトを設定していきます。サイトコンセプトとは、オウンドメディアに記載する内容を決定しておくことです。
あまりに多く情報を乗せすぎても、ユーザーにとって何を変えているのかが分からなくなってしまいます。また、情報量が多いとそれだけ費用が高くなります。そのため充分に吟味をしてサイトコンセプトを設定していく必要があります。
(3)カスタマージャーニーの設計をする
オウンドメディアは、ユーザーから訪問してもらう仕組みとなっており、インバウンドマーケティングとなります。インバウンドマーケティングを実践するためには、ターゲットを設定した後にカスタマージャーニーの設定をしていきます。
カスタマージャーニーとは企業と顧客の間、またサービスや商品に対する意識や感情、体験などを整理したものをいいます。
カスタマージャーニーマップを作り、わかりやすい図で表示することが一般的です。カスタマージャーニーマップは顧客本人の主観から始め、顧客の体験の全体像から整理をしていくと良いでしょう。
また、カスタマージャーニーは問い合わせをしてもらったり購入をしてもらったりすることを目的に設定ができますが、それだけではなくリピーターとなってもらうために長期的な関係構築まで含めることができます。
カスタマージャーニーは大きく分けて、認知断簡、検討段階、決定段階の3つがあります。見込みとなる顧客が商品やサービスを認知してから検討し、最終的に商品を購入するまでさらにはリピーターとなって今後さらに購入してもらうまでをステージに分けて設計していきます。
(4)サイトとコンテンツを制作する
具体的なカスタマージャーニーができた時点で、サイトとコンテンツを制作していきます。サイトとコンテンツは同時に依頼することも、また別々の企業に依頼することもできます。
特にコンテンツは自社でも作成が可能ですが、顧客のニーズにあった内容のコンテンツを作ることが求められます。オウンドメディアはコンテンツの内容が中心であり、コンテンツの内容が顧客のニーズを伴わないようであれば成果が出ることはありません。
コンテンツマーケティングを運営するうえで、ユーザーへの情報提供が最も重要であることを意識することが大切です。 他の商品やサービスの売り込みばかりになると、その時点でユーザーは離れていきます。
ユーザビリティが低い場合、一時的に購入してもらえたとしても、 長期的な優良顧客になる可能性は高くありません。なぜなら、もっと良い条件やユーザーのニーズを満たすサイトがあれば、ユーザーはそちらの企業に移ってしまうからです。
そのため、社内にコンテンツ制作のノウハウがない場合は、コンテンツの作成は実績のある業者に外注することをおすすめします。
(5)SNSでのコンテンツ拡散
オウンドメディアが完成したら、公式SNSなどでコンテンツを拡散することも欠かせません。
共感してくれたユーザーがさらに拡散してくれるため、広範囲にアピールをすることができるでしょう。
6.オウンドメディア構築のための会社選びで失敗しないためのコツ
制作会社によっても、サービスや費用、料金体系などが違うため十分に注意して会社選びをする必要があります。
会社選びで失敗をしないためにも、以下の点に注意してください。
- 構築にかかる費用を再確認
- 依頼する会社のコンテンツ制作スキルを確認
- 各会社の実績や得意ジャンルについて比較検討する
(1)構築にかかる費用を再確認
オウンドメディアは、即効性がない分費用対効果を図りにくい特徴があります。そのため他のサイトと比べて費用が高いと感じることも少なくはないでしょう。
そのため初期投資が必要であると考えても過言ではありません。あらためて構築に関わる費用を再確認するようにしてください。
(2)依頼する会社のコンテンツ制作スキルを確認
サイトの制作会社のスキルによって大幅にサイトの内容が異なってきます。そのため、依頼する会社のコンテンツ制作スキルを確認することが重要です。
スキルの確認方法については、実績や口コミなどを参考にすると良いでしょう。
(3)各会社の実績や得意ジャンルについて比較検討する
それぞれのサイト制作会社によって、得意ジャンルが異なります。オウンドメディアを作成するのにあたり、オウンドメディアが得意だったり、もしくは特化していたりする制作会社も存在します。
オウンドメディアはユーザーのニーズが高い文章を書き続けることが重要です。 そのため、コンテンツ制作に特化している業者を選ぶことも考えてみてください。
また、得意ジャンルだけではなく実績をみることも大切です。多くの実績があるということはそれだけ信頼されていると考えてよいでしょう。
7.最後に
オウンドメディアは自社で運営するため、効果が出るまでに手間や費用がかかります。しかし、他のサイトの形態とは異なり記載期間が限られていないためそのまま資産となり、一度効果がでると、長期間利益をもたらすことが多いといえます。
また、オウンドメディアはただ売り上げを狙うのではなく、ユーザーのニーズにあった記事を配信して自社やサービスに興味をもってもらい、優良顧客につなげていくことが目的です。目的を見失わないように、運営方針を固めていきましょう。
最後になりますが、オウンドメディアはPVやコンバージョン率の増加に直結するわけではありません。あくまで企業が設定した目的を達成するためのひとつの手段に過ぎないため、オウンドメディアは、コンテンツマーケティング戦略における一つの手法として考えてみてください。
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