ホームページ作成費用の勘定科目は、「広告宣伝費」とするのが基本です。ただし、条件によっては「繰延資産」や「無形固定資産」、「通信費」などを用いるのが適切な場合もあります。
本記事では、ホームページ作成の何がどの勘定科目にあたるのかについて、一般的な指針となる考え方を説明します。また、活用できるかもしれない補助金も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
勘定科目とは
勘定科目とは、取引を帳簿に記録する際の分類のことです。「どのような理由で入金・出金があったのか」を表すための、見出しのようなものだと考えればよいでしょう。
帳簿の付け方は決算書類の作成や確定申告、消費税納税申告などにも影響するため、事業者にとって重要なものです。
具体的な勘定科目には、どのような名前を付けても構いません。とはいえ、一般的に用いられる勘定科目は、業種や会計ソフトにかかわらず共通です。
また、帳簿上で一貫した勘定科目を用いることで、どのような取引があったのかを把握できるようになります。
勘定科目は、大きく以下の5つに分類されます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
このうち、「資産」とは所有している財産や、将来的に収益をもたらすと見込まれるものです。これに対して、事業を行なうための経費は「費用」に分類されます。
ホームページ作成費用を「資産」と「費用」のどちらにすべきか、迷ってしまう場合も多いのではないでしょうか。
詳しくは後述しますが、実際にどちらにあたるかは状況によって異なります。
なお、青色申告や会計ソフトについて詳しく知りたい方は、下記の関連ページもご覧ください。
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ホームページ作成費用は基本的に「広告宣伝費」
ホームページ作成にかかった費用は、帳簿のうえでも「費用」に分類するのが基本です。具体的な勘定科目としては、「広告宣伝費」に該当します。
「広告宣伝費」とするのは、多くのホームページが商品やサービスを広く知ってもらうために作られるためです。
ただし、広告宣伝費とする場合は1年以内にホームページを更新しなければなりません。ここでいう更新とは、ページを追加したり、デザインを変更したりすることです。
なお、ホームページを1年以上更新せずに公開のみ行なっている場合は、勘定科目を「広告宣伝費」とすることができません。
「繰延資産」または「長期前払費用」として、資産計上する必要があります。また、ホームページの使用期間に応じて均等に償却します。
ECサイトは「固定資産」として計上する
ホームページを作成するのは、必ずしも広告・宣伝のためとは限りません。例えば、「ECサイト」の運営が目的の場合もあるでしょう。
ECサイトとは、オンラインで販売を行なうホームページのことです。
スマートフォンやパソコンからアクセスするだけで、実店舗に足を運ぶことなく商品やサービスを購入できます。「ネットショップのこと」だと言えば、イメージしやすいかもしれません。
大手ショッピングモールから小規模な直販サイトまで、ECサイトにはさまざまな形態がありますが、おおむね次のような機能が含まれています。
- 会員登録
- ログイン
- 商品検索
- ショッピングカート
- 決済
こうした機能を持つものは一般的なホームページではなく、ソフトウェアとみなされます。
10万円以上のソフトウェアは「費用」ではなく「資産」であり、具体的には「一括償却資産」または「無形固定資産」です。
また、ECサイトではなくても、例えば次のような機能があるホームページはソフトウェアとして扱います。
- サイト内検索
- 予約システム
- ゲーム
なお、ソフトウェアの耐用年数は5年または3年と定められていますが、自社利用の場合は5年です。この期間で、定額法により(毎年同じ金額で)減価償却を行ないます。
「広告宣伝費」と「固定資産」を分けて処理すことも可能
広告・宣伝とECサイトの両方を目的としてホームページを作成する場合、勘定科目はどうなるのでしょうか。
このようなケースでの対応方法は、ホームページを「広告宣伝部分」と「ソフトウェア部分」に明確に分けられるかどうかによって変わります。
見積書や請求書の記載内容から2つの部分の区別が確認できたときは、次のように処理します。
- 広告宣伝部分:「広告宣伝費」として費用計上
- ソフトウェア部分:「消耗品費」として費用計上/「一括償却資産」また「無形固定資産」として減価償却(金額による)
なお、2つの部分を明確に区別できないケースについては、全体をソフトウェアとみなして計上しなければなりません。
ホームページ作成・運用にかかわる各費用の勘定科目
ホームページの作成と運用では、以下のような運用が発生することがあります。
- サーバー費用
- ドメイン取得費用
- SSL証明書取得費用
- コンテンツ制作費用
- SEO対策費用
- 運用保守費用
- CMS費用 など
ここからは、ホームページに関連するこれらの費用の勘定科目について詳しく見ていきましょう。
なお、本記事における説明は、あくまで一般的な内容です。個別のケースについて判断する際は、必ず税理士などにご確認ください。
サーバー費用
ホームページを公開するには、一般的に「サーバー」と呼ばれる機器が必要です。
ホームページの閲覧者に対して、その内容を表示するためのコンピューターのことだとイメージすればよいでしょう。
サーバー費の勘定科目は、サーバーをどのように用意するかによって変わります。自前のサーバーを使用するのであれば、「広告宣伝費」として計上しましょう。ただし、10万円以上かかる場合は、減価償却する「固定資産」です。
一方、自前のサーバーを用意せずに、レンタルサーバーを借りる方法もあります。その場合の勘定科目は、「広告宣伝費」としても問題ありませんが、「通信費」とすることもできます。ほかの通信費と分けて処理したいときは、「レンタルサーバー代」などとしても構いません。
ドメイン取得費用
ホームページを作成するには、「ドメイン」を取得する必要があります。
ドメインとは、ホームページのアドレス(URL)に含まれる「example.com」や「example.co.jp」のような形をした部分のことです。
ホームページに迷わずたどり着けるようにするための、インターネット上の住所のようなものだと考えてください。
ドメイン取得費の勘定科目は、「通信費」として計上するのが一般的です。
とはいえ、ルールが明確に決められているわけではないため、「広告宣伝費」や「支払手数料」としても構いません。
なお、ドメイン取得の効果が1年以上におよぶものと考えて、勘定科目を「繰延資産」として計上するケースもあります
SSL証明書取得費用
通信を暗号化し、インターネット利用者の個人情報などを守るための仕組みの一つに、「SSL」があります。ホームページをSSLに対応させるには、「SSL証明書」と呼ばれる電子証明書の取得が必要です。
SSL証明書には無料で取得できるものもありますが、一般的には費用がかかります。
勘定科目はドメイン取得費と同様に、「通信費」か「広告宣伝費」、または「支払手数料」としましょう。
なお、ホームページの信頼性を高めるために、より厳しい認証が求められるSSL証明書を選ぶことも可能です。
その取得費用が年間10万円以上になる場合は、ソフトウェアとして「一括償却資産」または「無形固定資産」で処理します(金額による)。
コンテンツ制作費用
ホームページに掲載するコンテンツを、外注で制作するために費用がかかることもあるでしょう。具体的には、新規記事の追加や、既存記事のリライトなどを依頼するケースです。
このような費用の勘定科目は、基本的に「広告宣伝費」となります。
ただし、ログインや商品検索のような高度な機能の追加を目的とする場合、ソフトウェアを開発したとみなされることがあります。
その場合は、かかった費用に応じてソフトウェアとして処理しましょう。
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SEO対策費用
ホームページへのアクセス数を増やすには、Googleなどで検索した際に自社が上位に表示されるほど有利です。そのために実施するさまざまな対策のことを、一般的に「SEO対策」といいます。
SEO対策費の勘定科目は、基本的には「広告宣伝費」です。
ただし、SEOについて外部の専門家に相談するケースもあるでしょう。このようなコンサルティング費用の勘定科目は、「業務委託費」または「支払手数料」です。
また、SEOのための専門ツールを導入する場合は、ソフトウェアとして処理する必要があります。
運用保守費用
ホームページの運用を続けるには、一定の費用がかかります。古くなったコンテンツを新しいものに差し替えるなど、保守のための作業も発生するでしょう。
このような運用保守費用の勘定科目には、基本的に「広告宣伝費」を使用します。これは、ホームページによる広告・宣伝の効果を維持するための費用と考えられるためです。
CMS費用
CMSとは、ホームページに掲載するコンテンツを管理するシステムのことです。WordPressなどの有名なCMSには、専門的な知識がなくてもホームページを運営しやすくなるなどの特徴があります。
CMSはソフトウェアの一種ではありますが、おもな使用目的はホームページの更新です。1年を通してコンテンツをスムーズに管理するために、CMSを導入するケースは多いでしょう。
そのため、CMS費用の勘定科目には「広告宣伝費」を用いて会計処理するのが一般的です。
ただし、CMSをベースにしてECサイトを構築するなどのケースも考えられます。
その場合はソフトウェアとして処理するのが適切な可能性もあるため、実際の勘定科目については税理士などに相談して決めることをおすすめします。
ホームページ作成費用に対する節税方法
10万円以上の費用をかけて、1年以上にわたって使用する高機能なホームページ(ECサイトなど)を構築した場合は、固定資産として計上しなければなりません。
固定資産は耐用年数に応じて減価償却し、複数年に分割して経費とします。
前述したとおり、高機能なホームページはソフトウェアであり、固定資産としての耐用年数は5年です(自社利用の場合)。
ただし、中小企業などにおいては30万円未満の固定資産を一括で計上できる特例があります。
対象は令和6年3月31日までに取得したものに限られており、一定の要件を満たす必要がありますが、その年の所得税を軽減できる可能性があるので確認してみましょう。
ホームページ作成で活用できる3つの補助金
ホームページにはさまざまな費用がかかり、高額になることもあるため、積極的に補助金を活用するのがおすすめです。ここでは、ホームページ作成に活用できる3つの補助金を紹介します。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 地方自治体のホームページ制作費用補助金
条件を満たす補助金があるかどうかを知るために、専門家に相談してみるのもよいでしょう。詳しくは、下記の関連記事をご覧ください。
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小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、日本商工会議所による補助金制度です。
従業員数が以下のように限られている、小規模事業者が対象となっています。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):5人以下
- サービス業のうち、宿泊業・娯楽業:20人以下
- 製造業、そのほか:20人以下
同制度は経費の一部を補助するものであり、年に1回程度のペースで公募されています。「通常枠」または「特別枠」のいずれかへの申請が可能で、通常枠の補助率は2/3、上限は50万円です。
なお、医療法人や宗教法人、学校法人などは申請できません。
IT導入補助金
「IT導入補助金」は、経済産業省が管轄する補助金制度です。
中小企業や個人事業主などの、小規模事業者が対象となっています。業種によって資本金や従業員数に上限があるため、実際に対象となるかどうかは申請前に確認しましょう。
前述した小規模事業者持続化補助金と同様、申請の際には「枠」を選択します。
「通常枠」は業務効率化などに有用なITツールの導入を支援するもので、顧客対応や決済などの業務プロセスを保有するソフトウェアが対象です。
補助率は1/2まで、補助額は最大450万円となっており、ホームページに対象となるツールを組み込む場合は補助される可能性があります。
関連記事:IT導入補助金とは?制度の内容や対象枠、手続きの流れを詳しく解説
地方自治体のホームページ作成費用補助金
自治体によっては、ホームページの作成にかかる費用を補助しているところもあります。
小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金のような国による制度と比べると、補助額は少ない傾向があるものの、提出書類などの面で比較的利用しやすい場合もあるようです。
具体的な条件などは自治体ごとに異なるため、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。
なお、自治体による補助金は、国によるものと併用できません。
より適した制度を選択するために、申請に際しては十分に比較・検討することをおすすめします。
まとめ
一般的にホームページは広告・宣伝を目的としているため、その作成にかかる費用の勘定科目は「広告宣伝費」とするのが基本です。ただし、金額や使途によっては「繰延資産」や「無形固定資産」、「通信費」などを用います。また、高度な機能を有したソフトウェアとみなされ、固定資産として減価償却する際の耐用年数は5年です。
ホームページの作成と運用ではさまざまな費用がかかりますが、お金の出入りをわかりやすく管理するためにも、適切な勘定科目で仕訳を行なうようにしましょう。