感動する動画は記憶に残りやすく、企業のブランディングにも繋がるため多くの企業が取り入れ始めています。

実際にCMや動画サイトで思わず感動してしまう動画を見たことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ自社で取り入れようと思い立っても、感動する動画はある程度ストーリー性がないと成り立たず、長尺にもなりやすいため作成難易度が高い傾向にあります。

そこで今回は、

「人を感動させるにはどうすればいいのか」
「感動する動画を作るために重要なポイントって？」
「実際にどのようなメリットがあるのか」

このような疑問を、感動動画事例と共に解説していきます。

【参考】感動動画事例13選

まずは実際に公開された企業の感動動画を紹介していきます。秀逸な動画を選出しているので感動動画制作の参考にしてみてください。

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社は「アサヒスーパードライ」「クリアアサヒ」などを製造する大手ビールメーカーです。

新入社員の女性が仕事に葛藤しながらも、同期や上司の支えもあって前向きに仕事に取り組んでいくというストーリーになっています。新しい環境や業務に慣れずに日々苦戦する社会人であれば誰もが1度は経験したことがあるのではないでしょうか？

そのような苦しい状況の中でもかけがえのない同期と協力し、初めて仕事での成功体験を収めた後に飲むビールはとても美味しそうに見えます。共感できるストーリーで感動を生み出しながらも商品の魅力がうまく伝わる動画です。

動画の長さ：2分56秒
再生回数：2.6万回以上

日本コカ・コーラ株式会社

日本コカ・コーラ株式会社は「コカ・コーラ」で有名な大手清涼飲料水メーカーです。

本動画は同社が提供するスポーツドリンク「アクエリアス」のCMで親と子供の関係を描いています。日々スポーツに打ち込む子供とそれを陰ながら応援する親という構図が、スポーツ経験のある方やお子さんを持つ方の心を掴む動画です。

親の「頑張ってほしい」という応援の気持ちがアクエリアスに込められており印象に残ります。最後の「ありがとうのためじゃない。ただ、君のために。」というフレーズも見返りを求めない親心が端的に表現された心打つメッセージになっています。

動画の長さ：2分00秒
再生回数：18.6万回以上

True Move H

True Move Hはタイで携帯電話を提供する移動体通信事業者です。

実はタイのCMは世界でも評価される作品が多く、本動画も公開されるや否や世界中で大反響を読んだCMです。かなり有名なものなので一度は見たことがある方も多いのいらっしゃるのではないでしょうか？

母が病気のため盗みを働く少年と、その様子を見かねた食堂の店主の優しさの連鎖がストーリーの肝となっています。インパクトのあるストーリーが視聴者の心を動かし、企業が大切にしている想いや価値観が伝わる秀逸な動画です。

動画の長さ：3分2秒
再生回数：4143万回以上

佐川急便株式会社

佐川急便株式会社は宅配便など各種輸送にかかわる事業を手がける会社です。

本動画も親子の関係性を描いたストーリーとなっており、不器用ながらも娘を想う父親の愛情が涙を誘います。また父親に結婚を猛反対されており、父親は結婚式にも出席していません。

「この後どうなるのか...」と視聴者に先を読ませない構成が秀逸です。

最後に結末はまさに視聴者の予想を少し裏切る展開になっています。さらにそのストーリー中で佐川急便が登場していますが、ただ物を届けるだけでなく気持ちや想いも一緒に運ぶというメッセージ性が伝わり、愛されるブランディングに繋がっています。「親子」や「結婚」という共感しやすいテーマが感情移入を誘う動画です。

動画の長さ：2分18秒
再生回数：3万回以上

大塚製薬株式会社

大塚製薬株式会社は医薬品、食料品の製造と販売を手がける会社です。

本動画はコロナ禍で激変した社会に焦点を当てており、苦しい状況の中でも「見えないものに支えられている」というメッセージが込められています。

特にコロナが流行り始めた時期は、社会の変化に鬱憤が溜まった方も多かったのではないでしょうか？大変な時期を逆手に取っており、多くの方に共感してもらえるような内容です。

辛い時でも踏ん張れるのが底力であり、多くの方の底力を支えたいという企業の想いが伝わってきます。

動画の長さ：4分36秒
再生回数：221.3万回以上

株式会社グローアップ

株式会社グローアップは新卒採用の逆求人サイト「キミスカ」を運営する会社です。

学生時代にスポーツに限らず一つのことに打ち込んだ経験のある方は多いと思いますが、秀でた実績を残せるのは一握りの方のみです。ほとんどの方が悔しい思いをしているからこそ、「その経験は無駄ではない」というストレートなメッセージが心に響きます。

本動画を制作した株式会社グローアップは新卒採用サイトを運営しているので、今就活を頑張っている学生への応援動画にもなっています。

ありのままの自分を発揮できる就活を掲げる企業の世界観が伝わってくる秀逸な動画です。

動画の長さ：5分06秒
再生回数：4000回以上

東京地下鉄株式会社

東京地下鉄株式会社は「東京メトロ」で知られる東京周辺の地下鉄道事業者です。

本動画は作り込まれたストーリーではなく、一人の社員の退職をドキュメンタリー形式にした動画です。大勢の方が利用する電車を長年陰ながら支えてきた社員に対して、電子看板に同僚や家族からのメッセージが表示されます。

大げさなリアクションを取るわけではなく、一つひとつ感慨深くメッセージを読んでいく駅員さんの後ろ姿に心打たれます。ドキュメンタリーや予想を裏切るサプライズも感動動画には効果的だと言うことがわかる事例です。

動画の長さ：2分46秒
再生回数：78.7万回以上

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社は東京周辺を営業区域とする日本最大手のガス会社です。

本動画も「家族」がテーマではありますが、中でも祖母と孫の関係性を描いた動画です。

昨今両親が共働きの家庭が増えているので、祖母や祖父に可愛がってもらったという方も多いのではないでしょうか？

思春期に古い物を恥ずかしいと思う気持ちと、成長してひどい事を言ってしまったという反省、そして祖母の温かく広い心が感動を誘います。

動画の長さ：1分30秒
再生回数：45.1万回以上

アマゾンジャパン合同会社

アマゾンジャパン合同会社はネットショッピングの最大手「Amazon」を運営する日本法人です。本動画はペットである犬に焦点を当てており、台詞は一切ありません。家族とペットの絆がほっこりする動画です。

また犬が何とも言えない表情をしていて、感動の中にクスッと笑えるユニークさも取り入れています。さらに感動動画の中では短い時間ながらも、Amazonの届けるまでの早さと品揃えの良さも伝わるような構成になっています。

涙を誘うような動画ではないかもしれませんが、視聴者の心を温める秀逸な動画です。

動画の長さ：1分15秒
再生回数：7000回以上

マルコメ株式会社

マルコメ株式会社は主に味噌を製造している食品メーカーです。

本動画はアニメで制作されており、他の動画とは一味違った印象を与えるものになっています。思春期の娘は母親のような人間になりたくないと思っていましたが、自分が母親になることで家庭を一番に考えている母親の偉大さに気づくというストーリーです。

特に子供がいて日々料理をするお母さんに訴求できる内容となっており、日本の家庭に欠かせない味噌とのシナジーも抜群です。母親の手料理が食べたくなるような暖かく懐かしい気持ちにさせてくれます。

動画の長さ：1分30秒
再生回数：178.1万回以上

KDDI株式会社

KDDI株式会社は主に携帯電話事業などを手掛ける電気通信事業者です。

少し古い動画ではありますが、ある男性と耳が聞こえない女性との恋愛を携帯電話が繋ぐというストーリーの感動動画です。

出会いから結末までの組み立てが秀逸で、内容がわかりやすい構成になっています。

メールでやり取りするメリットが動画の中にうまく組み込まれており、かつ短い時間の中で視聴者の心を掴む感動的なストーリーがとても参考になる動画です。

動画の長さ：1分00秒
再生回数：4000回以上

LINE株式会社

LINE株式会社はチャットアプリ「LINE」を提供している企業です。

本動画は学生の甘酸っぱい恋愛模様を描いた作品で、現代の日本人には欠かせないツールになったLINEが鍵となっています。好きな人とのLINEを読み返したり、メッセージを送りたいのに送る勇気が出なかったりした経験がある方も多いのではないでしょうか？

楽曲にはback numberの「クリスマスソング」が起用されており、切ないクリスマスのストーリーを際立たせています。感動動画における音楽の重要性が目立った作品です。

動画の長さ：2分55秒
再生回数：251.8万回以上

ジェットスター・ジャパン株式会社

ジェットスター・ジャパン株式会社は日本で低価格な航空輸送サービスを提供する航空会社です。

登場する女の子はお手伝いをして何やら必死にお金を貯めているところから動画が始まります。もしかするとこの時点で勘の良い方なら、父親が登場していないことに気が付いたかもしれません。

実は女の子は単身赴任で離れた場所に住んでいる父親に会いに行くためにお金を貯めていました。

女の子のお小遣い程度の金額で飛行機が安く乗れるというサービスと、ただの交通手段以上の価値を提供したいという企業の想いが込められた感動動画です。

動画の長さ：3分49秒
再生回数：115万回以上

感動を呼ぶ動画を制作するメリット

ここからは感動動画を制作するメリットについて解説していきます。感動動画は多くの企業で取り入れられるほど大きなメリットが期待できます。動画の制作を考えている場合はぜひチェックしてください。

愛されるブランディングに繋がる

感動する動画を制作することで単なる宣伝ではなく、愛されるブランディングに繋がります。

世の中には数多くの企業が存在し、日々良い商品・サービスを生み出そうと切磋琢磨しています。しかし昨今ではプロダクトの品質が全体的に底上げされており、品質だけで勝負するのは難しい時代になりました。

そこで今求められているのは企業やプロダクトが消費者から「愛されること」です。この愛されるブランディングを上手く使っている代表例が「Apple」です。

Apple商品は機能もさることながらデザインや世界観が秀逸であり、「Apple製品だから買う」というファンが世界中に存在します。このように企業やプロダクトのファンを生み出すことでビジネスを有利に進めることができ、そのブランディングに感動動画は非常に有効です。

世界観が伝わりやすい

感動動画を制作することで、企業として目指している世界観を共有できることもメリットの一つです。

感動動画はストーリー仕立てになることが多いため、動画の中のストーリーを通じて企業の世界観やコンセプトを視聴者に届けることができます。

また感動動画は共感を呼びやすく、さらに動画を見て感動した方が他人に共有したくなるという性質を持っています。

そのためSNSや口コミからの拡散も期待でき、企業の世界観を多くの方に届けることが可能です。感動動画は自社が目指したい世界や届けたい想いを広げるのに非常に有効になります。

単なる広告よりも記憶に残る

感動動画は通常の広告に比べて記憶に残りやすいというメリットもあります。

皆さんも常日頃テレビや街中では多くの広告を目にすると思いますが、その中で記憶に残っているものは一体どのくらいあるでしょうか？

広告は一方的に情報を伝えるものなので、そう簡単に人の記憶には残りません。ただ記憶は感情の働きに強く影響されると言われています。感動動画のように感情を揺さぶり、共感を呼ぶ映像は視聴者に強いインパクトを与え、印象に残りやすくなります。

記憶に残る感動動画を制作することで認知度が上がり、視聴者への訴求力も増します。「人の記憶に残る動画を作りたい」と考えている場合、感動動画はかなり効果的です。

感動する動画に必要な4つのポイント

感動動画がもたらすメリットについて理解したところで、ここからは感動動画制作に重要な4つのポイントについて解説していきます。

感動動画の制作を検討している場合は以下の4点を意識しながら取り組むようにしてください。

ペルソナを設定する

ペルソナとはマーケティング用語でサービス・商品の具体的な利用者イメージのことを指します。

感動動画においてのペルソナとは「感動させたい視聴者像」に置き換えることができます。感動には共感が必要だと上述しましたが、共感させるためには幅広い層を狙ったアプローチではなく、ピンポイントで刺さる訴求が重要です。

万人受けする動画ではなく「どのような人に見てほしいのか」「どのような人に感動を与えたいのか」を意識しましょう。ペルソナとターゲットは似たような言葉ですが意味が少し異なります。

ターゲットは「年齢」「性別」「職業」など大まかな層を設定するのに対し、ペルソナは本当に実在するかのような具体的な人物イメージを作り上げます。

細かな人物像を作り上げることでより強い訴求ができる感動動画を目指しましょう。

訴求したい内容を明確化する

「誰に伝えたいのか」というペルソナが設定出来たら、次にその人に向かって訴求したい内容を明確にします。

アプローチする層が決まっているにもかかわらず、訴求したい内容があやふやだったり、情報量が多すぎたりすると視聴者に刺さりにくい動画になります。何を伝えないのかわからない動画だと人の心を揺さ振ることはできないので注意してください。

ペルソナと同様ですが、多くの人を狙うのではなく特定の誰かをイメージして訴求したい内容を明確にしましょう。

視聴者が共感できるストーリー

感動動画には視聴者を惹きつけるストーリー性が重要です。

心を掴む感動的な動画にするために視聴者が共感できるストーリー作りを意識しましょう。企業の感動動画事例を見てみると、「家族」や「仕事」などがストーリーの動画が多いことがわかります。これは視聴者が共感しやすいストーリーのテーマを選ぶことで、感動を生み出し印象に残る動画にする狙いがあります。

ただしこれらがテーマの動画は多く作成されているため、実際に制作に取り掛かる際は似たような動画にならないよう注意しましょう。

予想を少しだけ裏切る結末

感動動画には共感のほかに、予想を少しだけ裏切る結末が大切です。

結末が視聴者が予想できるようなものだと、ありきたりな動画として捉えられてしまいます。感動動画には驚きがないとなかなか感動を生み出すことができません。

ただし、あまりにも突飛な結末だと視聴者は置いてけぼりになってしまいます。そうするともう一つの重要な要素である共感が欠けてしまい、感情移入しにくい動画になりがちです。

つまり視聴者が想定していた結末を少しだけ裏切るようなストーリーを取り入れることで、感動に繋がる動画に仕上がります。

そもそも感動とは？

「感動」という言葉は日常的に使われていますが、いざ感動とはどのような心情なのかと聞かれると言葉にしづらいですよね。

辞書で「感動」の意味を調べてみると「強い感銘を受けて深く心を動かすこと」とされています。では人が強い感銘を受けるにはどのような要素が必要なのでしょうか？

ここでは感動する条件や、なぜ人は感動したいのかについて詳しく見ていきます。条件やポイントを抑えてスムーズに動画制作に取り掛かりましょう。

人が感動する条件

人が何らかの経験や作品を経て感動するには、まず「共通の知識」が必要になります。

例えば音楽や美術といったアートを思い浮かべてください。アートに対する知識がある方とない方では作品を鑑賞した時に感じる心情が全く異なるはずです。アートに対する豊富な知識を持っているからこそ、作り手や作品の背景に思いを馳せて強い感銘を受けます。

つまり人が動画を見て感動するためには、作り手と受け手に共通する知識が必要です。

また「共感」も感動に必要不可欠な要素になります。全く共感できないストーリーを見ても感動することはありません。

例を挙げると、完全無欠のヒーローが最初から最後まで活躍しつづける映画を見て感動することはあるでしょうか？恐らく「完全無欠のヒーロー」に共感できないので感情移入することが難しくなります。

そのため感動動画では「家族」「友人」「恋愛」など多くの人が共感しやすいようなテーマを取り入れていることが多いです。共感できるストーリーや登場人物だからこそ、鑑賞者は感情移入し感動することができます。

人は感動したい生き物

なぜ感動を呼ぶ作品は人気を博すのでしょうか？

理由は「人は感動したい生き物」だからです。人は感動すると嫌な気持ちや悲しい気持ちがスッキリして清々しい気分になります。この現象を演劇用語で「カタルシス」と呼びます。カタルシスは古代ギリシャで「浄化」や「排泄」を意味する言葉でしたが、哲学者アリストテレスの著書の中で「魂の浄化」という意味で使われました。感動して涙を流す、感情が突き動かされる、といった現象には心が解放される効果があります。

人はこのスッキリして癒される効果を日々求めているからこそ感動動画は人気があるのです。

最後に

本記事では参考にしたい企業の感動動画事例と感動する動画を制作するメリットやポイントをご紹介しました。

改めてにはなりますが、感動動画において大切なポイントは「共感」と「驚き」です。参考動画を見てみても「家族」「恋愛」「仕事」など多くの人が共感できるテーマで制作されていることがわかります。

また視聴者の想像を少しだけ上回るような展開を用意できると、より人の心を動かし記憶に残るような動画になります。感動動画を作成しようと思い立った際にはぜひ参考にしてみてください。また自社だけで作成するのが難しいと感じた場合には動画制作会社に依頼するという方法もあります。

涙無しでは見れないような印象に強く残る動画をに挑戦してみましょう。

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