「顧客志向」とは、マーケティングにおいて顧客のためになるかどうかを重視する考え方のことです。ただし、顧客に言われるがままのマーケティングとは違います。
今回は、顧客志向の意味やマーケティングを行う上での注意点、実際の事例や企業が実践する上で重要となるポイントを説明します。
顧客志向とは?
まずは顧客志向とは何かを解説します。あわせて、それがマーケティングのために必要となる理由や、実施の際に注意すべきポイントを確認していきましょう。
マーケティングにおいて顧客のニーズを重視する考え方のこと
顧客志向とは、マーケティングを行うにあたり、「どうすれば顧客にとってのメリットに繋がるのか」という思考を重視する考え方のことです。同じ意味で、消費者志向という言葉もあります。
企業がマーケティングを行うにあたって掲げる目標や方向性を決める際に重要視するものであり、「顧客第一主義」のモットーを掲げている場合は顧客志向に当てはまるといえるでしょう。ただし、顧客のためにと目標を定めていても、実際には間違った考え方になってしまう場合もあるため、詳しくは後述します。
なぜ顧客志向が必要となるのか
顧客志向ではない企業の方向性として、顧客側ではなく会社側のメリットを重視するビジネスの場合もあるでしょう。具体的には「作ったものをとにかく売る」「どんな仕様にしたら作りやすいかを重視する」などです。
しかし、モノが余る時代となった現在においては、企業重視の方向性ではモノが売れにくくなっています。多様化している消費者のニーズに応えるためには、たくさんある商品の中から顧客に選ばれる必要があり、このときに顧客志向の考え方が役立つのです。
顧客志向を目指して行動する際の注意点
企業がマーケティングを行うにあたり顧客志向を目指す際には、注意するべきポイントがあります。それは、顧客のためだからといって、何でも希望を叶えるものではないということです。たとえば全てを顧客の要望通りにしていては、一部の声が大きい顧客の主張にばかり合わせなくてはならなくなる恐れがあります。
また、顧客第一で採算度外視して何でもするようになるなど、行き過ぎたサービスになってしまう場合もあるでしょう。顧客志向を目指すにあたっては、自社のビジョンに合っていて、なおかつ企業と顧客の双方にとってメリットとなるようなビジネスとすることが重要です。
ほかにも顧客志向を目指すにあたっては、顧客満足度ばかりを重視して失敗するケースもよくあります。顧客満足度は以前の商品・サービスに対する指標であり、これが高くても今後他社よりも選ばれるといえる根拠にはなりません。過去にばかりこだわるのではなく、どうやったらより顧客のためになるのか、未来のことを考えましょう。
顧客志向のマーケティング事例
顧客志向のマーケティングとしては、ティファールの事例が理解しやすいでしょう。
顧客に選ばれる商品を考える際、どんどんニーズを取り入れようと多機能な製品になることがよくあります。しかし、高機能になるとその分価格も上げなければなりません。
ティファールの電気ケトルは、取っ手が取れる利便性で有名ですが、機能面は至ってシンプル。あえて湯沸かしのみに限定することで低価格を実現しており、これにより累計販売台数が2,000万台を突破するヒット商品になったのです。
これは「こうしたニーズもあるのではないか」という視点で、顧客志向の手法を実現し成功した例と言えるでしょう。このように、「〇〇の機能が欲しい」という顧客からの要望にそのまま応えるのではなく、さらに顧客が思いついていない深い部分のニーズまで想像することが重要です。
顧客志向の企業になるため重要な3つのポイント
それでは顧客志向の企業になるために重要な、3つのポイントを確認していきましょう。
1.顧客との時間を共有すること
顧客志向を取り入れる際には、顧客に寄り添う姿勢が重要です。そのためには顧客と交わす時間を大事にすることで、自社の顧客像をはっきりと認識できるようになります。
日立製作所の創業者である小平浪平や、GEの最高経営責任者であったジャック・ウエルチも、顧客とのコミュニケーションを重要視していました。両人とも、遠方の顧客のもとにも出向くなど、できる限りの時間を顧客と接した顧客志向の実例としてよく紹介されています。
このように、ゴルフや食事を共にしたり、サポーターとしてアンケートやインタビュー、試食などに協力してもらうなど、顧客と接する時間を持つようにしましょう。
2.顧客の様々なニーズを把握すること
顧客のニーズを深い部分まで把握できるかどうかも、重要なポイントです。顧客自身が自覚している口コミなどで確認可能なニーズや、またその顧客の語る内容によって推測できるニーズなど、ニーズには様々あります。そして、新しい商品・サービスの登場によって知る、顧客自身が自覚していなかったニーズも。
アンケートやインタビューなどの調査項目の見直しや質問の仕方の変更などの工夫をすることで、より深い部分まで把握しやすくなります。「購入を検討したブランドは?」「自社製品を選択することになったポイントは?」など、調査項目を前の質問との連想ができるようにすると顧客も応えやすく、アンケートからの深読みも可能になるのです。
より深い部分のニーズまでくみ取り、マーケティングに活かせるようにしましょう。
3.非効率さを排除した購買プロセスを実現すること
ネットで購入したものが何週間も届かなかった場合、商品自体に満足していても不満が残ってしまうものです。このように、顧客が商品やサービスの購入・契約に至る際、非効率的なプロセスがあることでも全体の満足度が下がってしまいます。
顧客にとって常に最適で効率的な購入プロセスとなっていることが重要です。非効率な部分を排除し、購入プロセスに関しても一貫して顧客志向であるようにしましょう。
最後に
今回は、顧客のメリットに繋げるためのマーケティング手法である、顧客志向について解説しました。正しい顧客志向を知らないと、一部の顧客にのみ合わせてしまったり、行き過ぎたサービスになったりと、間違ったものになってしまいかねません。
マーケティングで活用するための3つのポイントや、注意点などを参考にして、自社のビジョンに合った顧客志向を行ってください。